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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第七章 聖女の勇者と終わりの道化師

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どう生まれたかは問題じゃない。どう生きたかが大切なのだ

 さて、水晶玉に蓄積された魔王の力を使えるようになったことで、魔王の魂を宿す道化人形は少しだけ強くなりました。が、だからといって神の創った無限の円環、「永遠の白」をどうにかするにはほど遠い。おまけにループする度に記憶と一緒に身につけた力も失うので、結果としてそれまでとの違いはさほどありませんでした。


 ですが、そんな状態を更に何千、何万回と繰り返すことで、神の計算が再び狂います。水晶玉に蓄積されている力を魔王の魂が直接使って消費することで、本来ならば一〇〇の世界を追放された後にしか満杯にならないはずの水晶玉の力が少しだけずれて、なんと新しい周回が始まった直後にその力を発揮してしまったのです。


 今回も記憶を消され、訳のわからない世界に連れ込まれたと思っていた魔王の魂は、その存在に驚喜します。理不尽な試練を与えられたというのに、目の前にそれを全て無視できる手段がいきなり存在していたのですから当然です。結果魔王の魂は「今すぐ家に帰りたい」と望み、「その周回を終わらせる」ことで出てきたばかりの扉に入り、ほとんどない記憶や力を漂白されてすぐに新たな周回が始まりました。


 ですが、それこそが崩壊の始まり。改めて次の周に入った魔王の魂が最初の世界を「追放」されたとき、前の周で一切消費されなかったことで本来の倍の魔王の力が世界を超えて「永遠の白」に流れました。その奔流の影響で世界を繋ぐか細い道にほころびが生じ、以後周回する毎にその道がドンドン広がるようになってしまいます。


 そうなってしまえば、変化は急速でした。周回を重ねる毎に魔王の魂が得る力が大きくなり、道が広がることで世界から出る「追放」という概念すらも甘くなっていきます。記憶や意識の改ざんがあるため魔王の魂本人はずっと気づきませんでしたが、もはや神の創った時の箱庭は穴だらけです。


 そんな壊れかけの世界に、遂に魔王の魂がとどめを刺しました。三度溜まった水晶玉の力に、あろうことか「全ての記憶と力を引き継いで最初からやり直したい」と願ったのです。


 それはこの世界の根幹を支える法則を終わらせる、禁断にして致命の願い。遂に永遠の円環から螺旋を描いて飛び出した魔王の魂は、神の敷いた、神の強いた道から逸脱して好きなように生き始めるのでした…………





「とまあ、こんな感じかな?」


 長い自分語りを終えて、俺はふぅと息を吐く。普通の世界ならこれだけ喋れば喉の一つも乾くのだろうが、この場所でならばそんなものを覚える事もない。


 そしてそれはティアも同じだ。疲れる事も飢えることも、生理現象すら無いが故に俺の話を一心に聞き入り、自分の中で咀嚼しようと難しい表情で首をひねっている。


「えーっと……つまり、エドは魔王なのね?」


「おう、そうだな」


 それすら理解されていなかったら俺の方が頭を抱えたくなるところだが、流石にそれはないらしい。良かった良かった。


「で、私達の世界も含めた全部の世界に、エドの力の欠片が魔王って形で存在している?」


「うむ、合ってるぞ……申し訳ないとは思うが、俺が暴れさせてるわけじゃねーから、文句は神に言ってくれ」


「そして……エドにとっては、今は二周目なんかじゃないってこと?」


「……そうだな」


「そう……」


 それまで何故か床に座って話を聞いていたティアが立ち上がると、徐に俺の側にやってきて俺の頭をギュッとその胸に抱え込む。


「辛かったわね」


「はは、このくらい何でもねーさ」


 砂嵐の向こう側のようにかすれている俺の記憶には、しかし確かにどうしようもなく辛くて悲しかった思い出がある。だがそれを思い出してなお、俺には俺を邪険に扱った勇者達に対する恨みはわかない。


 だってそうだろ? 剣の持ち方すらよくわかってない素人が、ウダウダと理由をつけて無理矢理勇者パーティに同行するんだぜ? そんなの怒られて当然だし、追い出されて当然だ。勿論俺は俺で事情があって必死にそうしていたわけだが、そんなの勇者側からすれば知ったこっちゃねーしな。


「私が知らないだけで、ひょっとして私達もエドに酷いことを言ったことがあるの?」


「そりゃああるさ。酷いっつーか、真っ当な抗議だけどな。そんなに無理矢理付いてきたって誰もお前を勇者パーティとは認めない、だからお前が名声をかすめ取ることはできないーとか、お前を守るために本物の仲間が危険にさらされてるんだ、いい加減足手まといを自覚して消えろ! とか。


 もう一回言うけど、俺はそれを恨んでなんていないからな? 当時の俺はそう言われて当然のクズみたいな行動をしてて、でもそうする以外に世界から出る方法がなかったから、俺の都合を無理矢理に押しつけてたんだ。むしろ斬り殺されなかっただけで感謝してーところだぜ」


「エド……っ!」


 俺の頭を抱きしめる腕に、更に強く力が入る。ティアの胸部はかなり薄めなので、正直ちょっと痛いんだが……この空気でそれを指摘するほど野暮でもなければ勇者でもない。終焉の魔王は空気を読めるのだ。


「てか、そんだけか? 俺はてっきり『人類の敵のくせに、今まで騙してたのか!』とか『神に創られた操り人形が人間の振りをしてるなんて!』みたいに言われるかと思ったんだが……」


「そんなこと言わないわよ! だって、エドは私を……ううん、私だけじゃない。アレクシスだって他の世界の勇者達だって、みんなを助けてくれたじゃない! それとも自分が魔王だって思い出したら、急に世界を壊したくなったとかあるの?」


「いや、ねーな。てか元々世界なんて壊してねーし。砕かれた力の方が暴れてるっぽいから説得力は無いかもしれねーけど……」


「ううん、信じる。だって今のエドは、私の知ってるエドだもの」


 あまりにも素直なその言葉が、俺の耳を通じて心に……魂まで染みこんでくる。抱きしめられているので見えないが、きっと今のティアの瞳には、溢れんばかりの信頼が浮かんでいることだろう。


「ならその……俺が神に創られた人格だってのは? そもそもまともな人間じゃねーんだぞ?」


「そう言われても……最後に記憶を消されて今のエドになってから、エドの主観では一〇〇年以上生きてるのよね?」


「そう、だな。一周目……いや、一周前? その頃の記憶を引き継いでるから、俺の気持ち的にはそうなってるけど」


「なら何の問題もないでしょ。最初がどうあれエドが生まれてから普通の人間の一生分を生きてるんだから、それはもうエドでしょ?」


「あー……そう、か?」


 世界によって違うが、普通の人間の平均寿命はおおよそ六〇年から八〇年ほどだ。ごく一部の特別な人間が長生きすることはあるが、そういう特殊な事例を除くと、今の俺は大抵の世界でおぎゃあと生まれてから老衰で死ぬまでの期間より「俺」として過ごしている。


 なら、それは確かに「俺」という個別の人格が育っていると言っても過言ではない気がしなくもない。むしろ一〇〇年生きてて個性の一つも出ない方が不自然だしな。


「じゃ、じゃあ体は? 俺の体は普通の生まれじゃないんだぞ?」


「……今更これを言うのもどうかと思うんだけど、私達の体って異世界からここに戻ってくる度に若返るっていうか、巻き戻ってるでしょ? なら私の体はそもそも元の私の体と同じなの? 私には自分の体が普通のエルフと同じだとは口が裂けても言えないわ」


「お、おぅ……?」


 自分の体が普通かどうかも、やっぱり今まで考えたことなんてなかった。だがこれを機に考えてみれば、魔王云々を抜かしても確かに普通とは言い難い。エルフでもない俺が一〇〇年も二〇歳の肉体を維持してる時点で異常に決まってるのだ。


「そしたら……………………いいのか?」


 あえて主語を飲み込んだ俺の問いに、ティアは俺の頭を軽く撫でてから腕の中から解放し、まっすぐに俺の目を見て微笑む。


「いいに決まってるでしょ! 魔王だろうと何だろうと、エドは私の知ってるエドよ。これからもよろしくね、エド!」


「……ああ。こちらこそよろしく、ティア」


 あまりにもあっさりと、当たり前のように受け入れられ……泣きたいくらいに拍子抜けしながら、俺もティアに笑顔でそう返した。

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― 新着の感想 ―
個々の世界とエドはまた全く別の存在だと思っていたけれど、同じ存在だったのか... 師匠の世界のトワイライトを握った少女は何周目かの、300年ということだから大雑把に3週目くらいのティアで背中の剣はドー…
追放スキルが元々持ってた力が戻ってきたものだとするとティアさんの追放スキルってなんなのっていうかこの人なんでここにこれてるの? いくらほころび出来てるとはいえ多分神様の封印の最高傑作なんでしょ? これ…
ティアとラブコメにならない理由がわかって悲しい
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