魔術研究
大会前日。俺は魔術研究をしている。隣でアッシュとフランが魔術で戦っている。
今回の大会は、いくら全力で戦っても、相手が死なないようになっている。これに関しては、非常に非科学的……剣と魔法の世界で言うことではないが……いくら死ぬようなダメージを受けようと、ある場所にいさえすれば、死なずに済むという奇跡的システムがあるのだ。
簡単に言えば、HPが1未満に絶対にならない。ってこと。勿論痛みはあるし、気絶もするらしい。その場所というのが、通称聖域。例の魔力結晶中心に置いた部屋の事なんだが……。
魔力結晶ってなんでも出来る万能な石なのかもしれない。
魔力探知機にもなるし、魔力を人に与えたり、測定したり、挙げ句の果てには死まで防ぐなんて。
とにかく、この石は、近くにいる者は死ぬことがない。とか言うチート能力のある超貴重な石だ。この石の指輪を付ければ、一度だけ、死ぬ様な攻撃の身代わりになってくれるらしい。身代わりの指輪ってやつか?
ほんとすごいな魔力結晶。
そんな石の原石が中心に置かれた、聖域で戦うのが、魔道大会だ。つまり、相手は死なない。なにをしても。確かに、あの3人組のような馬鹿共に、名前知らないけど、あのAクラスのうざったい奴ら。
1発で死なれてても、仕返しのしがいが無いので、ある意味良かったとも言えなくは無い。
そんな残酷なこと言うな。と言われても、あのウザったらしい三人組もそうだし、それ以上にあのハルバードなる教師もまたうざい。
うざいやつらで一杯。と考えてもおかしくないような、そんなクラスの奴らだ(偏見)。だいたい俺たちのことをバカにしてきた分、あいつら自身もそれなりの実力があるんだろうし、まあ大丈夫だろう。
(お前の大丈夫は最低でも医務室行きなんだよなぁ)
まあそれは置いておいて。
この大会は相手が気絶した瞬間に戦闘が終了。
まあ俺なら、1発で終わってしまうだろう。ストレスの発散にもなりゃしない。をだから、せめて、相手に1発で死ぬほどの痛みを味わってもらいたいわけだ。特にAクラスの馬鹿どもに。これは決して憂さ晴らしではない。ないったら無いのだ。日頃のストレスとか関係無いし!
だから今、そのための、超強力魔法の開発中だ。
この大会は、トーナメント形式の大会で、試合は片方の3人が気絶するまで続けられる。
まず、AさんとBさんが戦い、Aさんが勝つ。次はAさんとDさんが戦い、またAさんが勝つ。最後にAさんとFさんが戦って、Aさんが勝ち、試合終了だ。ちなみにAさんは俺のことだ。BDFは敵だ。つまり、俺が気絶せずに1人ずつ倒していけばいい。アッシュとフランの出番は悪いけどナシ。あくまで人数合わせ。ってことにはなってるが、こいつらも血気盛んな戦闘狂。戦いたければ戦っていいよ。ぐらいのスタンスだ。
しかしハルバード。あいつはあれだ。子供だな。あんな歳(何歳か知らんけど)で金と名声だけを求めている。蹴落とすものは蹴落とし、利用出来るものは利用する。そんな男だということが、後々調べてわかった。あんなクズに、教師など務まるものか。陰湿ないじめに近い。
と、いうのも、他クラスの教師を踏み台とし、自らの実力と実績を上げ、ここまで上り詰めたって話だ。
あいつに恥をかかせる為にも、圧勝は最低条件だ。
さあ。単体用の超火力魔法を極めるんだ。
考えられるのは……ゆっくりゆっくり近づいて、少しずつ少しずつ大きくなって、最後に超大爆発!なんてのもいいと思う。あ。ゆっくりだと避けられちゃうな。
やっぱりスピア系の方がいいのかな?だとすると、威力底上げの方法を考えないとな。いや?待てよ……この世界はゲームじゃない。腕、足、なんかの体の端から少しずつ削っていくのもいい。一発で潰すことしか考えてなかった。
だとしたら連射だな。想像力の強化と、コントロールの強化だな。
(お前どんどんどんどん残酷になってないか(苦笑))
そうかもしれない。ここ最近おかしいかもな。多分戦闘狂二人組と長い時間を共にしてきた(不本意ながら)だろう。
で、本題だ。想像としてはガトリング。コントロールはスナイパーライフルといったところだろうか?
指先から出すのはどうだろう。指で差したところに氷の柱が超高速で飛ぶ。最高じゃないか。コントロールは想像しなくても、指差すだけでいい。作る、飛ばす、それだけだ!という簡単なお仕事。
試しに、木に向かって指を差し、放つ。いつもより細い1本を超高速で連射連射連射!氷の柱は精密に1点を集中攻撃する。
試しに指を動かしてみる。指を指した方向に、高速氷柱弾が飛んでいく。そこらの木がガンガン倒れていく。
(さすがにこれはちょっとやりすぎ……)
ああ……すまない。ちょっと派手にやりすぎた。
「………え?」
「あ?」
アッシュとフランは意味不明というような顔をこちらに向ける。
ん!何その反応。まるで魔法を初めて見ましたみたいな。アッシュは前にも見たでしょ?
「ガリュー君。それは……投げ魔法だよね?あの時の……」
「そうだけど?なに?」
「主君……あの威力にあの数……魔力切れはしないのですか?恐ろしいほどの数を打ち込んでいたように見えましたが?」
え?忘れてたわ。言われてみると、こんだけ打ち込んでしないの?アザゼル?
(しないな。お前もう1級はゆうに超えている魔力量を持っているんだから。20分は連続発射可能だろ)
マジか。無駄にハイスペックだな俺。最近になって自分のハイスペック差に驚く。
「まず……連射なんてどうやってやるんだ?僕にはそんなことできないぞ」
「え?いや普通に手から無限に出るように考えるだけだけど」
「主君すごすぎです。主君の想像力と魔力量と魔力の質の高さがなせる技。感服です」
そんなに褒められても何もあげないぞ。そもそもお前らにあげられるようのものなんて何もないがな。
「まあいい。そんなことよりも、ほらほら。2人とも。明日が本番なんだから早く練習してろよ」
俺は2人が中断させていた、練習を再開させた。
こうしてまた、2人は練習を俺は研究を再開した。正直完成形までたどり着いている気がしたが。




