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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
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決め球って大事

まあいろいろあって、うるさいパシリも加わったりしたが、二年生になって初めての休みの日がやってきた。

 この学校の休みは、七日に二回。日本と何ら変わらない。

 なのでちょうど、二年生が始まって一週間ということになる。


 授業の束縛から解放され、思う存分に魔術の研究ができる。


「開ッ放感!研究日和ッ!」


(ヨッ!待ってました!)


 学校敷地内。迷いの森。

 ここには、うるさいパシリがいない。

 平和。この森によく似合う言葉だ。


(何が平和だ。ここら一帯はお前のせいで地獄絵図じゃねえか)


 そういう意味じゃあねえよ。

 単純に、アッシュがいないってだけで……。


「何か必要なものはないかい?」


「ないない。必要なものは全部この中に入ってるから」


 俺は横にいたアッシュに持ってきていたカバンを見せる。

 ん?


「はあ!?何でお前がいるんだよ!」


「まあまあ。いいじゃないの。何でも手伝うからさ」


「そういう問題じゃねえっ!」


 やっと自由になったかと思ったその時だった。そこにいるのは、俺をしつこく追いかける、ハンター。追跡者。

 しつこく、そりゃあもん半端なくしつこく追いかけてくるアッシュの姿。


 こいつは何なんだ?

 俺がこいつから逃げるためには、どうすればいいんだ?

 足に全力の魔力をつぎ込み、全力ダッシュしてここにきて、絶対まいたと思ったのに。


「何をするんだい?」


 アッシュはニコニコ絵笑顔でこっちを向いた。

 額から汗が流れている。


 あ。こいつ走ったな。絶対俺探して走ったな。

 と、思いながらも、来てしまったものは仕方がないと、説明をする。


 できることなら、今すぐにでも場所を変えたいのだが、あいにく、ここら一帯の地面をボコボコにし、有機物という有機物を灰に変えてしまったがために、ここを研究場所として使わざるをえない。

 これ以上被害拡大すると、学校の森がすぐになくなってしまう。迷いの森が恐怖の荒れ地に変わってしまうのだ。


「魔術の研究をしたいんだけども」


「ちょうどいい!僕の知識をフルに使ってくれ!」


 こうして俺のプライベートは、アッシュとかいう残念な勇者末裔の手によって潰されていくのだろうか?

 俺になんか恨みでもあるの?それとも俺の中にアザゼルいるからなの?それならすぐにでもアザゼル消し飛ばすから許して!


(おい……)



 と、まあ心の中ではつぶやくが、さすがに本人には言えない。

 こられてしまった。もう仲間にするしかないようだ。


 俺は、アッシュに一から説明をした。


 俺がこれまでやってきたこと、これからやりたいこと。をだ。


 これから俺が実験したいのは、これまでやってきた、周囲を燃やす、凍らせる、濡らす、などの範囲攻撃魔術で無く、物質を飛ばす、単体用の火力特化魔術の生成だ。

 だがしかし。普段授業でやるような、ファイアボールでは、相手を燃やす程度、普通に土の塊を飛ばしたって、精精あざが残る程度。

 この世界では、この手の魔術はあまり使われていない、いや、授業でしか使われていないんだろう。


 初歩的なものであるがゆえに、この世界ではその重要性をあまり理解されていない。

 弱い魔術ばかり好んで使うような魔術師もいないので、弱い魔術はあまり発展しにくいのだ。


 言ってみれば、世間一般的な魔法は、火炎放射器である。しかし、物質を飛ばす魔術は、それこそドッヂボールのようなもの。

 投げたって相手に届く前にこんがり焼けてしまう。


 当たるわけないし、仮に当たっても「イテッ」くらいだろう。


 そんな魔術に可能性を感じるのは、俺の経験からだった。

 ものが飛んで、標的に当たる際にダメージになりうるのは、飛ぶ際の速さと、飛んでいる物体の重さにある。いわゆる、運動エネルギーというものだ。

 物体が重く、速いほど、ダメージは大きい。さらに言うと、先端が尖った、槍のようなものであると、貫通力も上がる。


 これらのことから考えるに、ジェット機なみの速さに、それなりの重さを持った、槍型の土や氷を作れば、恐ろしい力を持った兵器になりうるのではないかということだ。


 では、ジェット機なみの速さを出すには、どういった工夫が必要なのか?

 実際、魔術は想像だ!というものの、想像の範囲内には限界があり、想像を忠実に再現するためには、それなりに魔力を消費する。

 速度を上げたければ、速度にもされなりの魔力を振り分けていかなければならないということだ。


 幸い、アザゼルのおかげで魔力量はけっこうある(らしい)。

 多少多めの魔力を物質発射系の魔術につぎ込んだっていいじゃないか。

 というのが俺自身の考えなのだ。


 しかも、速度を上げればそれなりにいいことも増える。

 速度が上がれば、射程も伸びる。実用性に優れる。などなど。

 つまり、物質を飛ばす魔術は、速度がキモであると言い切っていいと思っている。


「一人で考え込むより、僕たち二人で案を出そうよ。二人なら意見も二倍だし」


「いや。もう方針は決まっているからいいよ」


 素材は迷った末に氷。削りたての鉛筆のごとく先端を尖らせた氷の槍のような形。

 魔力を込めて、強度もあげる。さらに、それをドリルのように回転させ、空気抵抗をさらに落とす。

 発射タイミングで出せる範囲内で最高の魔量を爆発させるかのように集中させる。


「ハアッ!」


ーーーーーシュッ


 風を切る音が聞こえた。

 氷の塊は目で追うことのできない速度で目の前の木を貫いた。その後も勢いを殺すことなく、二本、三本、四本……と。

 その時間わずか数秒。


 貫通した木の数は実に八本。物凄い破壊威力である。


「す、すごい魔術だ。幻覚魔法がどうのって前まで言っていたけど、決闘のときにこの魔術使われてたら、今頃僕のお腹には穴が空いていたよ……。一瞬であの世へ直行してたかも……」


 アッシュのコメント。

 実際俺も、この魔術を打ってみて、想像以上の結果になったことに割と引いている。

 秒単位で木々を貫く氷の兵器。貫いた木だって、そんな柔らかいものではない。

 より柔らかい生物で実験すれば、より多くの数を貫くだろうが、それは想像しただけでグロテスクだ。

 できれば対生物兵器として使いたくないというのが本音。仮に使っても急所外して、できればかする程度にしたい。

 かすっても相当痛いだろうけど。


「それにしても、投げ魔術でこんだけの威力が出るなんて。僕は聞いたことも見たこともないよ。いや、今実際に見たんだけでも……」


 この手の魔術は、投げ魔法というのか。そのまんまだな。


 それにしても本当に恐ろしい魔術だ。使い終わったら溶けるという氷特有の性質もまたすごい。地球での殺人事件でこれが使われてみろ。証拠が何一つ残らない。凶器は溶けて、最後には蒸発するんだから。

 

 よし。この魔術の名前は、アイススピアだな。


 同じ要領で、土の槍や、風、電気といった非固形の魔術でも試してみた。


 土は氷とあまり結果が変わらなかった。

 アーススピアとでも名前をつけておこう。


 風は、かまいたちだ。完全に。

 電気は、もう完全に横向きの雷だった。恐ろしい破壊威力だ。

 これらをとばしまくれば、軍隊相手にいい勝負でいるんじゃないだろうか?


(国が一個滅びるわ!)


 さすがにそれはないでしょ。

 アザゼルの必死のツッコミに答える。


「いやあ。見ているだけですごいよ。今度僕にも是非教えて欲しい。これが使えればすごいことができそうだ」


「こんな殺戮魔術誰にも教えるわけないだろ!?絶対教えないから!」


「まあまあ、そう堅いこと言わないでよ。気が変わったら教えてよ」


 こうして、殺戮兵器、アイススピア、アーススピアが完成した。ぶっちゃけ強すぎて、使い道限られそうな感じあるけど……。

 


 

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