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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
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転校生はバカだってよ

「馬鹿!馬鹿馬鹿バーっかやろう!勝てるわけねえっての!相手は天下の医務室送りだぞ?アホらしい、そのおかしな頭、一回医務室で見てもらったほうがいいぞ。あ、でもどっちみち医務室には連れて行かれるだろうから、一緒に見てもらえよ」


 ナスが笑いながらそう言った。


「お前たちにはわからないだろうが、僕はこんな偽物ガリューとは違う!卑怯な手(幻覚魔法)なんて一切使わない!お前たちが見ていたのは、幻想、幻覚に過ぎない!」


 アッシュが言い放つが、周りからの目線は冷たい。

 みんながみんな、頭のおかしな奴を見ているかのような目線だ。いや、頭のおかしな奴を見ているというのはあながち間違っていないのかもしれない。


「其れだけいうなら、卑怯な手を使わず、正々堂々闘えよ。お前に其れで負ければ、お前の靴を舐めまくってやる。お前が望むだけ靴を舐めて舐めて舐めまくってやろうじゃないか。だが、仮に俺が勝ったら?その時はお前、どうしてくれるんだ?」


 俺はアッシュに聞いた。アッシュは、


「なんでも言うことを聞こうじゃないか。まああり得ない。ペテン師に負けるなど、勇者の家の恥。勇者の看板を汚す行為と捉えて間違いない」


 その上から目線によって、もはや誰からも勇者の末裔として意識されることのなくなっているこいつは、今更になって勇者末裔の面子を語り始めたが、もう面子もクソもない状況だ。

 こいつの性格そのものが、ゼノハルトの家の看板に泥を塗りたくっているということを、どうやらこいつは理解していない。


 それに、この無駄なまでに確固たる自信の塊は一体どこから来ているというのだろうか。


 本来ならば無駄な乱闘は避けたい。先生を呼んで終わりにしたいのは山々だが、あいにく、先生は軽く復習の趣旨を伝えてからいなくなってしまっていた。今は完全に自習時間だったので、先生はいない。


 仕方ない。とっとと片付けるか。

 

「カルエル。治療魔法の準備を頼む。すぐに終わらせるから。怪我させないように頑張るけどさ」


「わ、わかったわ」


 カルエルに頼むと、微妙に引きつった笑顔でカルエルは返答した。


「馬鹿め!僕のことを舐めすぎているな。僕は去年の成績、1年生ながらも上級生のひしめくランキングで上位に食い込んでいた。同じ学園の、それも庶民に負けるなど、ありない。間違いなくそんなことは起きない!」


 前の学校では上級生を凌駕する力を持っていた。ということは、相当な強さだったんだろうが、今こうしてそのセリフを聞いてても、強そうには思えない件について。


(お前が馬鹿みたいに強くなったからじゃないか?)


 そうなのか?でも結局はBクラス止まり。一体Aクラスにはどんな化け物がいるっていうんだ。って話。


(いや。お前ほどの化け物はそうそう見ないけどな)


 そうなのか?じゃあなんで俺Bクラスなんだ?

 まあそんなことはどうでもいいか。

 今はこいつを静かにさせないと、授業の邪魔だ。


「さあさあ。何突っ立ってるんだい?早く始めよう。怖気付いたんじゃないなら、さっさとかまえろ!」


 アッシュがそう言ったので、俺は構える。


「ナス。なんか合図出して」


「え?あ。わかった。3…2…1…。はじめ!」



ーーーーーシュッ


 魔術による筋肉強化。

 一気に地面を蹴る。風魔法の力で空気抵抗をなくし、かつ風魔術で追い風を作り出す。

 俺の速度は音速を超える(実際はどうだか知らない)。

 アッシュは、まだ魔術を出そうと手を前に突き出した状態。


 俺は一瞬で間合いを詰め、腕に力を込める。

 もはや肉体強化も必要ないだろう。と、ただ普通のパンチをアッシュにお見舞い。


ーーーーードフッ


 鈍い音ともに、アッシュの体が後方へ吹っ飛ぶ。

 俺自身は軽く殴ったつもりだったが、俺の走った速度がそのまま威力に反映されたようで、思っていた以上のダメージになってしまったようだ。


 やばい。校舎にぶつかる。

 とっさに風魔術で強風を作り出し、アッシュの体を受け止めようとする。

 なんとか勢いを相殺し、アッシュの体は校舎にぶつかることはなかった。


 アッシュは立ち上がらず、その場に崩れ落ちた。気絶している。

 俺の勝ちだ。

 俺の勝ちだ。俺に勝ちたいなら1級の魔術師連れてこい。


(1級でも勝てないぞ)


 そうなの?でも、あんまり自分を評価しすぎるのも良くないと思うんだ。大抵は異世界転生ってそんなもんだろ。

 調子にのるほど後が怖いもんだよ。ラノベではね。


「間違いなく、ガリューの勝ちだなこりゃあ」


 ナスがぼそっとつぶやく。


「みんなの予想通り。瞬殺、と」


 カルエルが顔をさらに引きつらせる。


「んじゃカルエル。頼むわ」


 俺はそんなカルエルに治療を頼む。


「あ、う、うん。やっておく」


 絶賛気絶中のアッシュの治療をカルエルが行う。


 そこに近づく人影。

 その人は大きな声で叫んだ。


「何やってるんですか!ガリュー君!?」


 バッと振り向くと、いなかったはずの先生の姿が。


「うわっ!先生!」

 

 いつの間にか戻ってきていた先生。

 顔は笑っている。


「ガリュー君?一体何をしたんでしょうかねぇ?」


 だが、少なくとも目は笑っていなかった。このあと俺は説教タイムだ。

 タイミングが悪いものだ。


 どうやら先生、俺が一方的に殴ったシーンしか見ていなかったようで、言い訳を言う暇さえ与えずに、すごい勢いで怒られた。

 この勝負はあいつがふっかけてきたのに。


(その勝負に乗ったお前も同罪)


 まあその考え方は間違っていないけども……。

 それでも世の中は理不尽なものだ。

 これでアッシュの野郎の態度変わんなかったらマジでイラッとくるわ。


 なんて思いながら、先生の説教を耐えた。


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