ユーサの王
ユーサ民主主義国。世界で最も進んだ国であり、世界で最も強いとされ、恐れられている国。
今、この国と対等に背することができる国は、世界でも2カ国だけ。
そんなユーサでも、魔王の復活は恐れていた事態だった。
いや、ユーサだからと行った方がいいかもしれない。
ユーサは、どこよりも強いからこそ、魔王の恐ろしさをよくわかっているのだ。
ユーサは、自国に少しの被害も与えたくない。
もしも魔王を、勇者がいないかそれぞれの国で協力して討伐しよう。
なんてことになったら、困るのだ。
それに、他国が無駄な情報を得たがために、国力を伸ばしてくる可能性があることも、視野に入れなければならなかった。
だからユーサは、常に握っている世界の指揮棒を利用し、すべての国に休符の合図を出した。
待っていろ。調査は我々がする。と。
もちろん調査はする。が、その調査を他の国に報告する気などさらさらない。
いざとなったら商売道具にでもしてやろうとさえ思っているほどだ。
調査した結果は、絶対口外しない、させない。
ユーサだけが知る情報としておけばいい。
他国が力をつけるなど必要のないことだ。
常にトップにいる国だからこそ、その座を離れるわけにはいかない。そういった考えから、ユーサは情報をどこにも譲らなかった。
魔王の情報は、我々の国だけの最高機密だ。
ユーサの立場上は王にあたる男は、偵察隊が見つけた、9割がた魔王であると判断された少年のデータを手に取り、静かに笑った。
「……しかし、なぜこいつがやつと関わりを持っているんだ?このことをやつは知っているのか?まあ、こいつがどうこうしたところで、我が国に被害は及ばんか」
笑っていた表情が一変。一瞬で暗い表情に。だがすぐに男は顔に微笑みを呼び戻した。
まさか今後、列強国の中で最も、いや、下手をすれば準列強国と比べても見劣りするような弱小的軍事力しか持たないあの国の豚王が、自分たちの立場を揺るがすなんてことは万が一にも起きない。それは仮に魔王が完全に復活していたとしても、していなかったとしてもだ。
今重要なのは、我々が無傷で生き残る道を模索することのみ。
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時は流れ、ついに最下級生から、二年生になる日がやってきた。
もう調味料研究室では、新たな調味料『ソース』の熟成工程に入っている。
もうそろそろ、おいしくなっている頃だ。
味噌も、追加で第二陣を作り始めたところだ。
今回は、前回のような超特級作業でなく、しっかりと熟成させようと思っている。
どちらも完成が楽しみだ。
魔法に関しての研究は、しょっぱなからバレたので、もう開き直って堂々と森の奥を占拠した。
さまざまな魔術を作り出すことに成功した。
その中でも、最も俺の中で出来がいい(汎用性に優れ、コスパがいい)魔術は、数多くの中から絞られたが、単純に強い魔術だけで行くと、相当な数の魔術ができた。
今更だが、日本の漫画アニメ文化って素晴らしい。
魔術が全部想像なこの世界で、日本の漫画アニメにすごいヒントをもらった。
某海賊漫画や、野菜の国の超人たちの漫画は、特に参考になった。
海賊漫画を参考に編み出したのは、青い鳥さんの如く周囲を一面銀世界に変える魔術など、黄色いお猿さんからは光魔法の応用系派生魔術のレーザービーム、赤い犬から火の魔法の最上位級魔術に当たるマグマの生成。
などなど。特にマグマに関しては、単純な火魔法だけでなく、岩、風などの魔法を組み合わせて編み出したもので、異常に難しかった。
野菜の国の超人たちからは、元気や亀の力の代わりに魔力を一点に集中させてはなつ、波動砲のようないわゆる、無属性的な魔法の開発ができた。
まずいと言われる果実を食べたり、金槌になったり、野菜の国の王様に命狙われたりすることなくこんな素晴らしい魔術が開発できたことはとても嬉しい限りだ。
ただ、油断ならないのは、野菜の国ではなく、もっと他の国からの目線だ。
アザゼルの問題もあって、やはりどこかからか監視されていると感じる時がある。
やはりいつもそばにいるんだろうか?
それ以上に、アザゼル自身に腑抜けた感じがあって、本当にこのだらけた和食好き精霊が魔王なのかというところからすでに疑わしい。
(おい。何だその言い方は)
間違ってないじゃないか。
だいたい、最近思うんだが、そういう奴がいそうなところを片っ端から魔術で吹き飛ばすのはダメなのかな?
(お前の魔力が高すぎて、学校ごとぶっ壊したりしないんだったら、いいんじゃないか?)
誰が学校ぶっ壊すんだよ。
そもそも、アザゼルは俺の所有物なんだから、部外者はほっといてほしいよ。魔王だろうがなんだろうがさ。そういうの知らないよ俺。
(誰がいつお前の所有物になったんだよ)
逆にお前俺の所有物じゃないのかよ。俺の中にずっとこもって出てこれないくせに。
なんてことを考えながら、俺は今日も自分の部屋へ戻る。もう今日は新入生を迎え入れる準備で、午後は学校の授業がない。
そして、全寮制であるこの学校の生徒である俺は、やることがない。
今日もまた、魔法の研究に森へ向かうか。
と、荷物をまとめる。
始めた当時のように雪が降っているわけでもなく、ぽかぽかと暖かい日が続いている。
そうか......もう学校に入学してから一年か。
父さん(こっちの)、どうしてるだろうか?
まああの人のことだから、自由に冒険者生活送ってるんだろうな。
俺はちょうど一年前、父さんに言われた言葉を思い出した。
「絶対に帰ってくるんじゃないぞ」
この言葉が、頭から離れない。
少なくとも、帰らずに済んだ。とだけは報告したい。今更感あるけど。
帰らずにこうして学園生活を送れていること、新たに作れた友達や、謎の精霊も付いてきて、楽しい生活を送っている。
いずれかは父さんの仕事の手伝いをするんだろうか?
それともなくば、自分で好きなように生きるのだろうか?
俺は何のために魔術の研究なんてしてるんだろうか?
強くなりたいから?
何に対して?
お金を稼ぎたいから?
それも違う気がする。
何のためにこの世界で生きるのか、何を目標にするのか?
いずれは考えなくちゃならないことになるだろうな。
と、俺は思った。
まあ今は関係ないか。細かいことは気にしない。
今は目先の問題からかた付けよう。
俺は、そう思って、森へ向けて出発した。
まあ気がついた方もいるかとは思いますが、まあそこらへんは気長に待ってください。(気がついていない人には意味深な発言となりますが)
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