和食って共通認識?
キャビアン王訪問当日。
もちろん献立は決まり、冷蔵庫もどきのストッカーに材料は全部入っている。
作るのは、
カリッ、ジュワーでおなじみ、お弁当の正規選手唐揚げ!
マヨネーズとジャガイモのハーモニー、サラダのくせに痩せません!ポテトサラダ!
鶏ガラ、醤油、味醂に酒、砂糖、昆布のタレと絡んだ香ばしい焼き鳥!
の3品目をメインに、天ぷら、寿司、刺身、味噌汁などなど、まさに、ザ・居酒屋とも言えるであろう錚々たる料理たちだ。
こうしてみるとやはり、俺の好物は酒飲みが好きなものばかりだなぁ。
と、改めて感じる。
ちなみに前世では、高校生で死んでいるので、俺は酒を飲んだことはない。
(じゃあ今回のこれを機に、飲んでみるか?俺も酒の味が…)
無理に決まってるだろ。俺(の体)何歳だと思ってるんだ。
中身は二十歳すぎてても、体がまだ受け付けてないわ!そんなもん。
と、いうことで、今日は本格的に作っていく。
前もって準備が必要なもの(出汁や、焼き鳥のタレなど)は、もうすでに準備し終えていて、完全に調理するだけだ。
肉などの下ごしらえを済ませ、野菜を切ったり、魚をさばいたりと、大忙しだ。
ちなみに、ちょっと量は多めに作る。
少し自分用も欲しいので、ちょっと多めに作って自分も食べようという魂胆だ。
(お前が食べれば俺にも味覚が来るから一石二鳥だな!)
別にお前の食べに食べるわけじゃないからな?
まあいい。
予め用意が完了していた、味噌、醤油、マヨネーズが早くも輝き出す日がやってきたのだ。
素晴らしい門出になるようにいい料理に仕上げようじゃないか。
まあ門出とは言っても、俺は味噌、醤油が完成した翌日に、味噌汁とTKG(たまご かけ ごはん)を食べているので、これが初めての料理になるわけではないが(それ以前にたまごかけごはんは料理なのか?)。
まあ細かいことは気にしない。
ある程度の下ごしらえを終えて、もう後は、焼く、揚げる、蒸す、だけだ。
ーーーーージュワーッ
鍋からいい音がする。大量の油に、肉の塊がどんどん入っていく。もううまそうだ。
唐揚げはやはり素晴らしい。そう改めて思った。
以前一度だけ、フォアグラを食べたことがあるが、これの何が良くて、大金を出しているのだ?
と、思ったことがある。
やっぱり唐揚げが一番だと再確認した瞬間でもあった。
醤油(味噌の上澄み)のおかげで、唐揚げの下味も完璧だ。
醤油はすごい。すごすぎる。
ポテトサラダは、まあまあな出来だ。ついでに、揚げ油があるので、ポテトチップスも作ってみた。
寿司と刺身も、魚を裁き終わっているので、握る、もりつける、で終わりだ。
天ぷらも、エビ、ナス(ちょっとあげるときにシャープナスの顔が思い浮かんだ)、しいたけ、たらの芽、大葉やキスなどをじゃんじゃん天ぷら化させていく。
この天ぷら用に、前回キャビアン王に大絶賛された大根おろしも用意した。
焼き鳥も、先生に頼んで炭火焼だ。
先生は、こんなものに火をつけて何を?という顔をしていたが、俺にとっては超重要なのだ。
鳥を揚げるなら高温で大量の油、鳥を焼くなら炭火と相場が決まっているもんだ。
炭火特有の香りが、俺の嗅覚を目一杯くすぐる。
ああ。うまそ。
そんなこんなで、ザ・居酒屋のメニューが一通り完成したわけだ。
食事の時間まであと数分。
俺はそろそろ行くか。
と思い、皿を持っていく準備をする。
今回は、品数も人数も多いので、前回のようにぱっぱと運べない。
先に持って行ってしまおう。という考えがあった。
先に部屋に到着し、皿を並べた。
そしてそのすぐあとに、キャビアン王とそのご友人が現れた。
「久しぶりだね。ガリュー君。初めて会った時君は少しやつれていたようだったが、今はすごく元気そうじゃないか」
キャビアン王は俺の顔を見るなり、最初にそういった。
間違いなく顔色が悪かったのはアザゼルのせいだが、まあそこに関しては何も言わない。
「紹介しよう。友人のキャロルだ。この男もまた、食にはうるさくてね。ちょっと君の話をしたら食いついてきたんだよ」
「そ、そうなんですか」
俺は、キャロルと紹介された男性の方を向く。
ヒゲが綺麗に揃えられている、銀髪の細身、服装はタキシード。この人、できる執事みたいな格好だ。
「初めまして。私は、キャロルと言います。王様から話を聞いて、ぜひともガリューさんの料理を食べてみたいと思い、王様に無理言って頼んでみた結果、今に至ります」
「は、はあ」
なんというか、お堅い人って感じだ。
いや、逆にキャビアン王が貴族とか王様っぽくなさすぎるのだろうか?
とにかく、話辛そうな相手であることは間違い無いだろう。
「しかしガリュー君。準備が早いな。もう皿が並んでいる。そして、その皿の上には見たことも無い料理がずらりと並んでいる。この景色は我が国の絶景と比較しても引けを取らないな」
キャビアン王はあごひげを手でのばすような仕草をしながらそういった。
「まったくです。これほどの料理はたんと…見たことがありません」
キャロルさんもそのあとに続いた。何か言いかけたようだが、何を言おうとしていたのだろうか?
まあどうでもいいか。細かいことは気にしない。
「早速頂こうではないか。もう腹が減ってしまって、いつ暴走するかわからない」
キャビアン王は自分のお腹をさすりながら、そう言った。
二人に席に座ってもらい、料理の説明をしていく。
「こちらが、唐揚げ、こちらが焼き鳥と、この二つは、鶏肉を使った料理です。そして、こちらが寿司、刺身、天ぷらと、魚をメインに使った料理です」
「ん?寿司というと、あの、前にも出してくれたものだな?」
「そうです。どうかしましたか?」
「いや、寿司は肉料理ではないのか?」
「本当は魚料理なんですよ。魚が正統派、肉は、派生したみたいな感じですね」
「そうなのか」
キャビアン王の質問にも答えながら、一品ずつ紹介していく。
「やはり素晴らしい。見たことも聞いたことも、もちろん食べたこともないものばかりがずらりと並んでいるではないか。これは、天国の食卓。半年ほど前までは、生きているうちにこんな食事にありつけるとは思いもしなかったぞ」
キャビアン王はニコニコ笑顔でそういった。
一方、キャロルさんはというと、険しい顔で料理を真剣に見つめている。
「あの、キャロルさん?どうかしましたか?」
「あ、いや、気にしないでください。見た目が美しくて、見入ってしまっただけですので」
キャロルさんはそういうと、自身の目の前の皿を指差した。
「ちなみにこの皿ですが、何も入っていませんね。そして、目の前にはそれぞれの料理が種類ごとに分けられた大きな皿がいくつもある。これは、この大きな皿から好きなものを自分で好きなように取れということですか?」
「そうですね。バイキング形式と言ったり、あるいは、〇〇人でつつく、といった言い方をしたりしますね」
実際のところ、バイキングというには品数も量も少なすぎるのだが、まあそれらしい感じがそれしか浮かばなかったので、バイキングと答えた。
おばんざいのように、大きな皿から自分の取り皿に好きな分だけよそっていくようなスタイルは、日本の独特な食事の方法であると言えるようだ。
「ば、ばいきんぐ?ですか?それは非常にいいですね。好みのものを好きなように取れる、というのは。これは新しい」
まるでキャロルさんは専門家のようだ。
いや、キャビアン王同様に、美食家というくくりに入るなら、美食家そのものが食の専門家と考えていいのかもしれない。
閑話休題。
閑話休題。とにかく食べてもらおう。
この世界では、和食がどれだけ通じるのか、味噌や醤油は万人ウケするのかが知りたい。
ついに初めて、この世界の住人が味噌、醤油を口にした瞬間がやってくるのだ。
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