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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
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味噌完成

 学校入学から八ヶ月。季節は冬ど真ん中。

 冬の将軍様の軍隊が猛威をふるい、外はまさにブリザード状態、といった日がここ数日続いている。

 室外での授業はこの時期にはない。よってこの時期は結構暇だ。

 

 室内の授業では、教室の特性で、なんとか暖かさをキープしているといった感じだ。

 教室から一歩外に出れば、氷点下近い気温が、俺たちを盛大に迎え入れる。


 ただただ寒い。というのが俺の感想だ。

 エアコンもヒーターもない。そんなこの世界での暖の取り方といえば、魔法だ。

 炉の方に火をぶち込み、部屋を暖める。


 だが結局、火であっためているので、煙が出る。

 換気をしなくてはいけないため、その暖かさも長くは持たない。


 暖かい場所といえば、教室や食堂、図書室などの皆が使う場所だけだ。

 そんな中で、暖かい場所で、かつ自分の自由に使っていい部屋がある。


 調味料研究室だ。

 温度は味噌作りのために夏ど真中の気温に近い。

 だが、そんな気温のおかげか、味噌作りは、もう最終段階に差し掛かっていた。


 もう正直ほとんど完成に近い状態だ。

 ここ数日は毎日のようにこの部屋に訪れる。

 決して寒さをしのぐためではない。あくまでも味噌のためだ。


 今日は少しできた味噌を食べてみようと思っている。


 俺は、いくつかある桶の中から、最もできの良さそうなものを選び、サンプルをとった。

 味は、普通に食べる味噌に比べると、深みがないなと感じるくらいで、別に贅沢を言わなければ何の変哲もない味噌だった。


 やはり、温度調節で強制発酵させたが為に、味が落ちてしまったのだろう。

 しかし、上澄みもまあまあ採取できたし、味噌もこうして完成。

 味噌、醤油の二大大豆調味料が俺のレパートリーに加わったわけだ。


 俺は少し浮かれた気分のまま、新たに作る調味料のことを考えた。

 和食という面では、やはりだしが必須だが、これは長い期間をかけて作る必要もない。

 そうすると、あとは醤油ベースのタレばかりが頭に浮かび、完全に真新しい何かを作る、というところまで発想が至らなかった。

 

 洋食では、ケチャップや、ウスターソースなどの野菜、果物をもとに作っていくソースが頭に浮かんだ。

 ケチャップなら簡単に作れるが、ウスターソースは熟成期間が数ヶ月あったはずだ。

 それなら、ウスターソースを作るべきか。


 そう思った俺は、味噌をそれぞれカビが生えてないか確認し、軽く加工、小分けにし、ストッカー(少し改造して、冷蔵庫っぽくなった)に入れていく。


 上澄みも同様にだ。醤油の代替品として重宝するだろう。

 

 そして俺は、ウスターソースに必要な材料をリストアップしていった。



ーーーーーーーーーー



 リストアップも終わり、これを先生に頼みに行こう(キャビアン王のおかげで、こういうお願いができるようになった)と思い、職員室へ向かう。

 廊下は寒いが、今はテンションが高いのでそれほど寒いとは感じない。

 

 そのまま職員室にたどり着き、ヴァイア先生を呼んだ。


「あ。ヴァイア先生!お願いがあるんですが…」


「あ。ガリュー君。ちょうどよかった。来週、キャビアン王様がまた、学校にいらっしゃるそうで、ぜひ、食事はガリュー君に、と、頼まれているんですよ」


「そうなんですか?」


 俺から頼みごとをしようと思っていたのに、どうやら先生も頼みごとがあったようだ。


「まあ、私はあの場にいたので、ガリュー君が奇抜な料理脳を持った人だというのはわかっていますが、それでもまだ子供、断りたければ断っていいんですよ?」


 先生はそう言うと、俺にやるかやらないかを聞いた。


 もちろん俺は、


「やりますよ」


 と答える。

 ちょうど味噌醤油が使えそうな段階にまでなってきたんだ。

 どうせなら早いこと試してしまおう。

 と思い、話を受けた。


 実際、王様を実験台に使うというのは、少々気がひけるが、俺のように、元の味噌や醤油の味を知っている人間が食べれば、俺の作った味噌醤油は、何か物足りない感じになってしまう。

 やはり、何も知らない人に食べてもらい、感想をもらうのが一番だっと考えた。


「それは良かった。今回は二人分用意してくれと頼まれていて。その分だけの食材は学校で買うから、言ってくださいね」


「二人分?ということは誰かもう一人くるということですか?」


「ええ。ご友人がくるとかなんとか言っていました」


 俺の質問に、ヴァイア先生が答える。 

 二人か。こりゃあまた面白くなりそうだ。


「あと、今回の料理は、ガリュー君が好きな料理を出してくれ。というリクエストがいていますよ。特に何がいいとは言われていませんが、まあ、ガリュー君が美味しいと思ったものを作ればいいみたいですね」


 俺が好きな料理か…。

 俺はどちらかというと和食派だ。

 唐揚げとか、豚の生姜焼きとか、わりと家庭的な和食が美味しいと思っている人間。

 ちなみに、味が濃いものが好きで、未成年なのに、好きな食べ物は酒のつまみのようなものばかり。

 軟骨の唐揚げってうまいよな。


 そう考えると、やはり唐揚げ入れるべきか。醤油があれば何でもできる!

 あとは、味噌があるから味噌汁、もしくは何か味噌を使った料理がいいな。

 醤油もあるから、寿司なんかもいいかもしれない。肉寿司なんかじゃなくて、ちゃんとした正統派寿司も食べてもらいたいし。


 考えただけで、妄想が膨らみ続ける。

 醤油と味噌の恩恵は、俺が思っている以上に大きいのかもしれない。


 これから急いで何を作るか決めないと!


「それでは先生。僕は何を作るか考えておきます。明日か明後日には必要な材料を伝えますね!」


「わかりました。頑張ってくださいね」


 先生にそう伝え、俺は職員室から去っていった。


 自分の部屋に戻ってから気がついたが、ウスターソースのこと忘れてたな……。

 

いつもありがとうございます!

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