列強国家会議
「どういうことなんだ。ここ何十年と復活の兆しすら見えなかったというのに、何が理由で今になって….?」
最初に口を開いたのは、準列強国の国の一つ、第二大陸の国、バーナミア国の外交官。
列強国、準列強国の外交官たちが一斉に集まって開かれた緊急会合。
召集された理由は言うまでもない。
一瞬探知機に引っかかった、魔王の魔力の件についてだ。
魔王の復活は、勇者の死と同時に起こる、自然現象のようなものだと、世間一般的には認知されていたが、ここ数十年、勇者と魔王の相打ちからというもの、魔王、勇者の両者ともに見つかっていない。
今回、何の前触れもなく、魔王の反応がしたということが、恐ろしくイレギュラーなのは、この説明でわかっていただけるだろう。
そもそも魔王そのものが、勇者でしか倒せないとされているため、勇者不在の今、どうやってこの世界を守り抜くのか。
そういった話が行われようとしていた。
「そんなこと、誰にもわかるわけないではないか!なぜ復活したのか、なぜ一瞬だったのか、そもそも復活しているかなんてものは、私たちがいくら話し合っても解決するものではない」
魔王復活のタイミングについて語ろうとしていた国の外交官に向けて罵声が飛ぶ。
「全くだ。妄想は自国で存分にやってくれ。今、こうして準列強国家以上の国が揃っているのは、対策案を出すためなのだから、そんな無駄なたられば話がしたい国は、さっさと帰れ。真面目な話し合いを今からするんだ」
こう口を開いたのは、第二大陸の列強国、ロウシーニ共生国。四天王国の一角。
世界第2位の土地の広さを誇る、こういった会合などでも発言力の高い国だ。
第二大陸だけでなく、その力は第一大陸にさえも及ぶ。
「ロウシーニ国の言う通りだ。そろそろ、話し合いを本格的に始めようじゃないか」
この度の進行役は、第一大陸の列強国、現在の世界のトップ、世界の王者、ユーサ民主主義国。
歴史が古く、かつ最強の軍事力を誇る。領土こそロウシーニに比べれば少ないものだが、圧倒的な権限を持った国である。
ユーサに逆らえば、跡形もなく国は消滅する。とも言われる。
もっとも、逆らえばどうなることかわからない現状、ユーサに対して正面から喧嘩をふっかけたバカな国などいないのだが。
そんなユーサの外交官の一声で、少しざわつき始めていた場が静まり返る。
「で?今回の議題は、先ほどから出ているように、魔王についてだが、幾つかの情報をまとめておこう。まず、数日前、魔王の魔力が複数の探知機に引っかかった」
ユーサの外交官がそのまま話を進めた。
「完全な魔王に比べると弱かったが、魔王特有の魔力だと、探知機の方が判断しているため、ほぼ間違いなく、魔王の復活が起きたと思われる。しかし、数分後にはその魔力が消え、完全に消滅した。今もなお、探知は続いているが、一切魔王の魔力らしいものは感知できていない」
ユーサの外交官は概要を簡単にまとめて話した。他の外交官たちは静かにその話を聞いている。
ちなみに、魔力探知機とは、魔力を生命に授ける石、魔力結晶の中でも特に特殊な魔力結晶の欠片から作ることのできるもので、魔王や勇者などの、特殊な魔力に反応し、光り輝く。といった代物で、より精密なものだと、その魔力の発生源まで特定できる。
製造法や、材料が特殊すぎるがゆえに、どの国も持っているというわけではないが、列強、準列強国家ともなってくると、どの国もほとんど持っている。もちろん一つの国に多くて数台あるかどうかのレベルだ。
「ちなみに、わが国の探知機によると、発生源は第四大陸の東側のどこかだ。それ以上のことはわからない。第四大陸の者たちは、国に帰ったらすぐに報告してくれ」
ユーサ外交官は最後にこう付け加えた。
この話を聞いて、苦虫を潰したような顔をしたのは、第四大陸の列強国、ジャーツ帝国の外交官だ。
なぜ我々の大陸に…?とでも言いたげな表情だ。
ジャーツは、面倒なことに巻き込まれるのが嫌いなのだ。ましてや皇帝が皇帝だ。
例の計画は既に国の上層部で最高機密扱いで秘密裏に進められている。
またこの外交官も、その計画を知っているものの一人。
こんな予想外の邪魔が入ることなど誰も予想してはいなかった。
さらに言うと、基本的に一匹狼スタイルのジャーツ帝国。最も大きい土地に、高い政治力、統率力のある、大国だ。
長いこと発見されることのなかった第四大陸で、独自の進化を遂げた国。
他国とは異なった考え方を持って第四大陸に覇を唱えたジャーツだからこそ、他国との関わりは最小限に。それに加えて計画のこともある。ジャーツそのものはもはや鎖国状態。
しかし、他国との交流は避けたいが、列強国に名前がつらなっている以上、こうして会議などに参加しなければならないのは事実。難しい立ち位置にいるのだ。
そして、この国には、ユーサの上層部も警戒している。
ジャーツの外交官はようやく口を開く。
「私たちの国は、面倒なことに巻き込まれたくはない。私たちジャーツは、第四大陸の西側。今回の件に関しては、あまり深く関わりたくない。そういうのは全部リコナの方でやってくれ」
ジャーツの外交官はそう言って、腕を組んだ。
全く。無責任な国だ。と、他の列強国の外交官たちは思った。
特に、第四大陸の東側に位置する、もう一つの列強国、リコナ王国の外交官は怒りを覚えた。
高い確率で、自国の領内で魔王が復活している。と、報告を受けた時点で感づいていた。
もし仮に、自国内で魔王が復活していたなら、それは大大大問題だ。
こんな時こそ同じ大陸のよしみとして、力を合わせていきたいというのが、リコナ王国の考えだった。
まあそもそも、ジャーツは他国との交流を避けているため、よしみと言えるほどの関係を築いてきたわけではないのだが。
「それは許さない。列強国同士が手を取り合って、この問題を解決しようと言っているのだ。多少は協力しようという考えを持たなければならないと考えるのが普通だ。それに、随分と余裕そうな顔をしているが、魔王の強さは圧倒的だ」
ユーサの外交官はジャーツの外交官を睨みつけた。
「そうだ。勇者が見つかっていない今、私たちに抵抗の術はないと言っても過言ではないのだ。いくらジャーツの技術が高かろうと、兵力が圧倒的だろうと、魔王には勝てないと思った方が賢明。弱小国家相手に戦うのとはわけが違うのだ。そのあたりを、ジャーツの上層部は理解しているのかね?」
さらに、ジャーツの自己中的発言に、第一大陸のもう一つの列強国、マキシマ自由主義国が追い打ちをかけていく。
その発言に、頷く外交官たち。
「マキシマの言っているように、皆が協力することは、大事だ。特に、四天王国の我々四カ国、それに加えて、ジャーツは、より強固な協力関係が必要になってくる。今はまだ、どこで、何が起きているのか、今後どうなるのかが全くつかめない。ひとまず、我々ユーサの部隊が、第四大陸の中でも東部を中心に、小範囲型精密探知機を用いての調査を行うようにする。ジャーツ、リコナには、全面的バックアップを頼みたい」
ユーサの外交官がそういうと、リコナの外交官は小さな声で、「わかりました」と言った。
ジャーツの外交官は、何も言わなかったが、特に否定的な意見も言わなかった。
「今回はこれにて解散としよう。何せ情報が少なすぎる。我々ユーサを中心に、探っていくことにするので、続報が入り次第、連絡を回すことにする。第四大陸は警戒を怠らず、その他大陸の国家も、十分に警戒しておくこと。不測の事態に備えられるようにしておいてほしい」
ユーサの外交官の一言で、会合は終わった。
うわぁ。なんか変な名前の国が出てきた!
あとあとでできますが覚えなくても大丈夫です!
ブックマークお願いします!




