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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
23/48

鯛のカルパッチョ

みなさん、カルパッチョは好きですか?

私はお酢が好きなので、酢漬け系のものは大好きです!

「鯛のカルパッチョです」


「はあ?鯛のかるぱっちょ?」


 なにそれおいしいの?を、顔で表すとそういうふうな顔なんだろうな。

 という顔を浮かべる王様。

 料理を提供させていただく側として、非常に面白い顔が見えたとすごく満足した。


ーーー三分前ーーー


「失礼します。料理をお持ちしました」


 俺が少し他の部屋と比べて大きい扉をゆっくりと押していく。


「遅い!遅い遅い遅い!遅すぎる!今日は学校の視察のために来たというのに、どうしてこう待たされなければならないのだ!?」


 若干一名、軽く踏ん反り返って座る人物がいた。

 王様。キャビアン王とはこの人のことか。

 美食家っていうくらいだから、すっごい太った中年おっさんかと思っていたが、いうほど太っているわけでもない。


「それよりなんだ?この学校では、王の接待も生徒がやるっていう方針なのか!?人の一人二人も雇えないほどに金がないということなのか!?」


 その場には俺とキャビアン王しかいないというのに、学校の愚痴ばかりを延々と聞かせられそうだ。

 これが何分も続かないように祈ろう。

 

 なんて思っていると、


「何を固まっているのだ!料理の一つや二つ、さっさと出せばいいだろう!」

 

 と、動かなかった俺に対してキャビアン王は言ったのだ。

 俺は、すぐに料理を出した。


「鯛のカルパッチョです」


「はあ?鯛のかるぱっちょ?なんだその奇天烈極まりない名前の料理は?」


 と、キャビアン王は俺の置いた皿に興味津々だ。


「この酸味を感じさせる香りは、酢か?魚の薄い切り身だが、生?生の魚なのか?......まあいい。それよりも!こんなに少ないようでは、私の腹を満たし切ることなんてできないぞ!まさかこのかるぱっちょなるものだけで終わりというわけではないな?」


「ご安心ください。そちらは前菜と言い、食欲を駆り立てるための食事の飾りに過ぎません。そちらを食べ終わったあとに新たに料理をお持ちします」


「そ、そうなのか?確かに言われてみると、色合いが鮮やか、仮に酢が効いているのであれば、食欲は増進される。理屈が到底いるので良しとしよう」


 随分と理論的な人なんだろうか?地味に頭もいいようだ。

 だいたい言っていたことが当たっていてすごいと思う。


 キャビアン王ももう食べ始めるようなので、俺は部屋を後にする。


「では、失礼します」


 今回のコースはあくまでもナンチャッテコース料理だ。地球の時と全く同じように料理を出す必要は無い。今回はスープを抜くので、次に出すのは魚料理。

 ソースはないが、ソースの代わりに、日本人が編み出した肉にも魚にも使える秘伝のタレを、俺は使おうと考えている。


 魚は、もう先生に頼んで焼いてもらっているので、あとはタレを作るだけだ。

 ちなみに、人参、きのこ、ゴボウなどを敷き詰め、魚には酒、塩、胡椒を軽く振った状態で焼いてもらっている。

 焼いてもらっている魚は、サバだ。


 俺は厨房に戻り、ストッカーから大根を取り出す。

 大根をある程度小さくカットし、すり鉢を使ってする。大根おろし器のようなものは残念ながら見つからなかった。

 

 ある程度おろされた大根に、酢、レモン果汁、あらかじめ取っていた昆布の出汁を加えたなんちゃってポン酢を添える。

 そう。これは、ハンバーグにも焼き魚にも、畑の肉である大豆で作られた、豆腐などにもよく合う日本の秘伝タレ。大根おろしだ。まあちょっとタレかどうか微妙だが、そこらへんで言い争う時間はない。


 皿に焼き鯖、野菜、大根おろしに大葉、そしてポン酢もどきを添えて完成。

 めちゃくちゃ和風だけど、タレがないから仕方ない。せめてバターがあればよかったけど。

 まあそんなことはこの際大した問題じゃない。


 これで、肉、魚、サラダが完成。

 あとは果物を適当にカットして、サイダーの代わりに砂糖や幾つかの調味料を入れて作った汁に突っ込み、つける。

 なんちゃってフルーツポンチを用意。


 これで全部の料理が完成。

 すでにサラダは先生が持って行ってくれたので、次は俺が魚を持って行こう。

 

 俺は魚の皿を持ってまた厨房を後にする。

 再び俺は、キャビアン王のいる部屋の大きな扉の前へ。


「失礼します。料理をお持ちしました」


 俺はそう言ってまた、扉を開けた。

 キャビアン王は、割と興奮状態にあるようで、顔を赤らめて、大きい声で言った。


「待っていたぞ!ははははは!生の野菜さえも美味い!これなら、適当なそこらの雑草も美味くなりそうだ!」


 キャビアン王が言っているのは、おそらくフレンチドレッシングのことだろう。

 フレンチドレッシングは、油、酢、塩胡椒、ワインビネガーなどがあれば簡単に作れる。

 この世界では、生の野菜はあまり食されず、野菜炒めなどにして食べるのが一般的なため、生野菜に謎の液体のかかったサラダなるものが、よほど美味しかったようだ。


 さすがに雑草は美味しくないと思うが。


「焼きサバと野菜の焼き物と、大根おろしです」


「大根おろし……?」


 焼きサバに関しては、キャビアン王もあまり食いついてこなかったが、大根おろしについては、かなり興味津々のご様子。


「大根おろし、ということは、材料は大根?だが、ペースト状になっていて、大根の要素はもはや色だけ。そもそも大根などというのは茹でて食べるもの。美味いのか?いや、美味いんだろう。先ほどのサラダというのも美味しかったしな」


「……大根おろしは、焼き魚に乗せて、一緒に召し上がってみてください」


 ほう。と、キャビアン王は言いながら、横に置いていた大根おろしをどさりとサバの上に乗せた。


「この香り。また酢か。先ほどから酢を使ったものが多いな。まさかこんなに酢がうまいと思える日が来るとは」


 そう言いながら、サバの身をほぐし、キャビアン王は口に放り込んだ。


「これは……。サバの青臭さを大根おろしが消している。さらにそこに、酢の酸味が加わり、魚特有の生臭さが全くない。サバ自身からは、濃厚な旨味が。どういった焼き方をすればこんなにも脂と身のバランスがうまく出るのだ?」


 今回、サバを焼くにあたって、先生に頼んだことが、幾つかあった。

 できるだけ、高火力で、かつ火は直接当てない、『強火の遠火』を心がけてもらうこと(焼き魚を焼く際の火も魔法なので、調節が簡単)、魚を焼く前は、酒、塩、胡椒を振ってから焼くこと(前述)、そして、サバは海の魚なので、あまり皮の方には強く火をかけない、という三点だ。


 これらを守れば、短時間で美味しく、脂も適度に落ちたより良い焼き上がりになる。

 これらも全部ネット知識だが、本当にインターネットはすごく役に立つな。と、改めて思った。


「こんなにうまい青魚は初めてかもしれない。いつもは生臭くて、口直しが欲しくなるのだが、これなら口直しの必要はないな。脂身もさっぱりとした大根おろしがうまく働き、口にとどまらず、さっと流れていった。非常に素晴らしい。野菜にもこんな使い方があったとはな」


 俺がインターネットのことを考えている間に、キャビアン王は恐ろしい速さで皿の上のサバを平らげていた。

 俺は、ぼうっとしていて、肉料理を持ってくるのを忘れていた。


 急いで厨房に戻り、肉の料理を二品、手にとって持って行く。

 すぐに部屋に戻り、もう一度俺は、テーブルの上に料理を置いた。


 


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