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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
21/48

眠りの森の医務室送り

(魂の流れってもんから抜け出せないんだろうか。死んで、精霊になって、精霊として今を生きる生物に奉仕し、そしてその奉仕した生物が死んだ時、代わりに精霊が自らの記憶を全て抹消して新たに世界で生を受ける。そんな流れから抜け出せる二つの力のうちの一つを、持っているというのに、こんな魂のループに巻き込まれるなんて。


 散々な目にあったもんだ。

 やっとあの野郎に追いつく力を手に入れたっていうのに、最後にはこれかよ。

 魔力のたまりが遅すぎる。

 せめてもっと魔力があれば。

 このペースだとあと数年はかかる。


 完全解放まで。

 抑えて解放して、こいつを制御するか?

 否。そんなことに魔力を使ってしまうと、また魔力の充填に時間がかかってしまう。

 ではどうする?

 たまるのは遅いくせに、もうすでにある程度の魔力が漏れ始めてきている。

 俺の考えがもうこいつにぼんやりと伝わってきているようだ。

 漏れた魔力のせいで、こいつの周囲で恐ろしいことが起き始めているし…。


 抑えたいが、これ以上は抑えられない。

 かといって一気に解放するわけにも…。

 

 こいつとまずは話をしてみるか。

 一瞬だけ解放すればいい。

 あとは細かくセーブすれば。

 そして、うまく言葉で操れれば、あるいは……)



ーーーーーーーーーー



 学校に入学して四ヶ月が経とうとしていた。


 最近、ちょっとした悩み事がある。

 それもわりと深刻だ。


 ちょいと前から魔法の制御がダメになった。


 ファイヤードラゴンがどうのってレベルじゃあない。

 魔術だけでなく、魔法でも制御できないことがしばしば…。


 と、いうのも、魔術の授業が本格的に始まってきた頃から、俺の魔力制御がうまくいかなくなってきてしまい、なぜか知らないが、大爆発やらなんやらが多発。

 うまいこと制御できないもんだから、周りの生徒を巻き込んで医務室へと送り込む。

 送り込むだけでなく、もちろん俺も吹き飛んだりなんだりってあって同じく医務室へ。


 昨日も、学校の小さな池を凍らせようとして、周囲二百平方メートルほどが氷結した。

 当然範囲内にいた生徒も無事ではなく、多少(だったかどうかはみなさんの想像に任せる)のしもやけ、ひどい人だと片腕が凍りつくなどといった大事件が発生した。

 まるで某人気漫画の軍の大将の必殺技みたいな光景が広がった。

 あれは有効活用すればすごいんだよな。海凍らせて海の上自転車で走ったりしてたしな。


 閑話休題。

 

 まあ、はっきり言えば異常。

 先生にそう言われた。

 制御不能で暴発することが多いといっても、回数が回数だ。

 三回に一度くらいのペースで暴発するなんて、明らかにおかしいのだ。


 俺自身の技術力不足なんだろうか?


 いつの日かを境に、魔術の授業では皆からちょっと距離を置かれるようになった。

 もちろん物理的にの話だ。

 まあ近寄りたくはないだろう。毎授業毎授業で俺の近くではなんらかの魔法トラブルが発生するんだ。

 負けるとわかっていて戦いに挑むのと同じだ。


 ついたあだ名は、『医務室送りの天才』。

 たまに天才を通り越して奇才とまで言われた。


 不名誉極まりないあだ名だ。

 誰も好き好んで皆を医務室に送りこもうだなんて思っちゃいねえよ。


 挙げ句の果てには、噂を耳にした上級生からもチラチラと見られる始末。

 授業中は先生が常に目を光らせている。


 俺は今、かなり危ない、いわば『危険因子』なのだ。

 

 しかし問題はそれだけにとどまらない。

 最近は眠っても疲れがあまり取れないし、幻聴もたまに聞こえる。

 わざわざ説明する必要なんてないと思うが、もちろん危険な薬に手を出したりなんてしてない。


 だからこそ、原因がわからないからこそ、怖い。

 何かそういう病気なんじゃないかと、自分自身が医務室に行ったりもしたが、結局原因はわからない。


 そういった理由から、今日も、あくびが止まらない。

 廊下を歩いている今でも、外からの日の光のまぶしさに目を細めながら、思い切りあくびをする。


「ふぁああわああ…」


ーーードンッ


 ん?

 あくびをしていたその時、誰かとぶつかった。

 

ーーーガシャン


 その直後、何かが割れる音がした。

 何か嫌な予感がして、目を開けると、皿が割れていた。どうやらぶつかったのは他のクラスの先生のようだ。

 上に乗っていたのだと思われる、決して学食レベルではない豪勢な料理も床に散乱している。


「あ…あ…」


「す….すみません!ぶつかってしまって!」


「そ、そんな、まさかそんな、こんな時に限って…!?」


 先生の顔が文字どおり青くなっていくのが見えた。

 相当状況はまずそうである。


「あ、あの…。そんなにまずい状況なんでしょうか?」


「まずいなんて問題じゃあないですよ!王にして美食家、食に貪欲なエルドラドの舌と呼ばれるキャビアン王が今日、この学校の視察をしに来ているんです。 ですが彼は食にうるさいあまり、出された料理が気に入らないと、どんな店や施設も、本気で潰しにかかって来るのです」


 な…?

 そんなの聞いていないぞ?

 じゃあ俺は、王様に出す予定だった料理を台無しにしたというわけか!?


 一瞬で背筋が凍る。冷や汗が背中を伝った。


「もう料理人の人たちは帰ってしまったし、予備の料理もなし、あるのは買いすぎた食材だけ、時間は三十分しかない…。一体どうすれば?」


「食材はあるんですか!?」


「ええ。有り余っていますが…」


 俺は厨房に向かって走り出した。

 俺がしてしまったことだ。

 俺が責任取って作り直す。


 久しぶりの料理だけど、きっと大丈夫。

 いろいろ権力使われて、学校つぶれる方が大丈夫じゃない。

 しかもそれも9割がた俺の責任だ。

 そんなのいい訳がない。


 食材と三十分。それだけあればいけるはず!


 

 


 




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