表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
19/48

学ばなくてはいけないこと

 クッソ。

 白魔法使えないからってふて寝したら、変な夢見たような気がする…。


 あ、いや、別に拗ねてたわけじゃないよ?拗ねてなんかないからね!?(デジャヴ)


 ああ。ついてないな。白魔法なかったら怪我しても直せないじゃん。

 早めに使える仲間でも作らないとダメだなこりゃ。

 いくら嘆いても、精霊力に関しては、魔力のように鍛えたからといって強くなるものではないようなので、どうにもならないということは、俺も重々承知の上ではあるのだが。


 だからと言って、使えないけど、どうにもならないから、もういいや。諦めよう。とはならない。

 もし自分の精霊(本当にいるのなら)に会ったら、一発ぶん殴ってやろうか。

 お前の力不足のせいで回復魔法使えないじゃないか!と。


 八つ当たり?

 知らんぞそんな言葉は。これは八つ当たりとは違う。断じて違うぞ!


 寝ぼけた顔に魔法で冷たい水を叩きつけ、強制的に目をさます。

 今日も授業だ。なあに。回復魔法なくっても授業ぐらい受けられる。

 

 そう思いながら、寝ているソニックを起こし、着替え、教室へと向かった。



ーーーーーーーーーー



「えー。みなさん。これまでずっと、魔法のことばかり勉強してきていましたが、私たちにはまだまだ学ばなくてはいけないことがあります。わかりますか?」


 今日はいつもと違う、魔法以外の話が出てきた。


「はい!女性の守り方です!」


 謎の言葉が紫色の植物を連想させるどっかのおナスの方から聞こえてきたが、先生、および他の生徒はガン無視である。

 ナスに関しては、いつもこんな調子で、女性第一、野郎のことは二の次三の次。いやもっと後。

 発言も、先生が綺麗だ。とか、女性を守るために生まれた。とか。

 日常生活でも、暇さえあれば、クラスの女子に、きみかわいいね。とか、美しい。とかそんな言葉を絶えずに発している。


 女子の間では変態貴族と呼ばれている。そもそものベースが貴族のボンボンなので、その名前は間違いが何一つない。

 唯一あだ名と一致していない点といえば、謎にナス本人がイケメンフェイスなことくらいだろう。


 ちなみに、他に先生の質問に答える人はいなかった。


「……はい。えーっと、学ばなければならないこと。それは、語学、算学、歴史、地理、魔法科学などです。魔法科学は、中等学校で学ぶので、それ以外のものは、初等までにある程度学んでいなければならないということなのです。なので、今日は、歴史と、語学を一緒に学べるように、こんなものを用意しました」


 先生は、クラスの人数分の羊皮紙(?)を取り出した。

 それぞれに文字が書いてある。


「これは、ある一人の、『神』と呼ばれた人間のお話です。今では神話として伝えられていますが、ほとんどが実話と言われていて、語学、歴史を学ぶのにぴったりなお話なのです」


 先生は神を配った。

 俺は字が読めるので、軽く目を通した。

 だいたいは、学校に来る前、父さんが話してくれた話の内容と同じようなものだった。

 こっちの方が、父さんの話をより詳しくしたような感じだ。

 ただ、俺が初めて聞いた話は、神が死んだ後の話だった。


『無の50年の後、世界は闇に包まれた。

 神の生まれ変わりとでも言えるような、強大な魔力、知識、経験を兼ね備えた、魔族の王が現れた。

 魔族の王は、この世界の全てを奪うため、侵略を開始した。


 人間も、魔族も、皆が彼をこう呼んだ。魔王と。


 そんな魔王とは対極の存在。世界にとって光となる存在が生まれた。

 一人の青年だ。生まれた時から秀でた才能を持ち、魔王同様に高い魔力と、磨かれた技術を持った、頭脳明晰、容姿端麗、人徳溢れる非の打ち所のない青年。人々は青年を希望の勇者と呼び、たたえた。


 青年は大人へと成長し、やがて魔王討伐のために旅に出た。

 仲間を集め、魔族の住まう国へ向けて旅立った勇者は、見事魔王討伐を果たした。

 世界から闇は消え、勇者の光で満たされた。

 

 数十年後、勇者は笑顔でこの世を去った。


 それと同時に、再び世界は闇に包まれた。

 勇者の死と同時に、魔王が復活したのである。


 世界またしても魔王の手によって支配されようとしていた。

 そんなか、ある国で、先の戦いで魔王を倒した勇者によく似た青年が生まれた。

 似ているのは容姿や性格だけでなく、魔力や技術力、知識にわたる全てが、前勇者と全く同じだった。


 人々はその青年を勇者と呼び、前勇者の伝説をその青年に伝えた。

 青年は、次は僕の番。といって、魔王討伐の旅へ出た。


 またしても魔王は敗れ、勇者が世界に光をもたらした。

 そして勇者は、数十年後に、前勇者同様、安らかに眠った。


 そして魔王はまたしても復活を遂げた……』


 このサイクルが延々と続く。

 全部で何回このくだりがあったのかは知らないが、要約すると、魔王と勇者が生まれ、勇者が魔王を倒し、魔王は封印されたけど、勇者が死んだらその封印が解かれて、魔王が復活する。

 そうしたら、勇者によく似た青年が生まれて、その青年が勇者として魔王と戦う。


 ということのようだ。


 何度もなんどもこんな戦いが起きていたのか?

 実際、神話と言われるほどで、どこまでが現実なのかはわからんが、歴史の勉強というくらいなんだから、ある程度が史実に基づいているとは思うが。


 だがそうすると分からないことがある。


「先生?」


「はい。何ですかガリュー君?」


「今、魔王と勇者はどうしているのですか?」


 生まれてこのかた(転生後)、魔王と勇者の話なんて一切聞いた覚えがない。

 父さんも詳しい話はしていなかったし。


「…今は、魔王も勇者様もいません。どういうことかは分かりませんが、50年ほど前に、魔王と勇者が同時に息絶えたことによって、つまり相打ちとなったことによって、新たな魔王も、勇者も産まれなかったという説が一番有力だと言われています。まあ、争いのない世の中が続いていることは悪いことではないので、誰もこのことをおかしいとは思わないんですけどね」


「そうなんですか」


 同時に息絶えた、ってことは、相打ちってことだろうか?

 これまで、勇者が死んだ時、魔王が復活する。という条件だっったのに、その…50年くらい前には、たまたま相打ちになって同時に消えた。ということか。

 まあ、そもそもの魔王と勇者のサイクルの原理を理解していないから、ここで何考えたって始まらないか。


「ただ、国の上層部なんかは、今、平和ボケしたこの世界で、いきなり魔王が復活したら、世界はどうなってしまうのかと、心配している人たちも少なからずいるみたいですね。まあ、魔王なんてものは、勇者がいなければ到底倒せないとされているので、私たちがいくら対策しても、それは無駄な抵抗になるかもしれませんが…」


 確かに、いくら地球防衛軍がいても、結局怪獣は倒せないんだよな。

 巨人戦士(ここでいう勇者)が来るまで辛抱しろというわけか。


 魔王か…。

 実際本当にいたのかな?

 勇者ってのも胡散臭いな。それは俺が現代日本というファンタジーからかけ離れた世界からやってきてしまったからだろうか?


 そう言ってしまうと、魔法なんかもあれなんだけども。

 まあ、今いもしない勇者だの魔王だのの話をしたって、何の解決にもならないわけで。 

 ここ何十年復活してないんだ。どうせ俺が生きている間には、復活しないだろうよ。


 そんな考えが芽生えた状態で、授業は終わった。


 だがしかし、剣と魔法の世界というものは、そんな甘い考えが通じる世の中ではなかった。

 これまでが大丈夫たったからなんて、何の確証にもならないのだった。










 

感想評価、お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ