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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
18/48

回復魔法

「えーっと…まあ、皆さんは身を以て体験したので、魔術を暴発させると、もしくは、魔術を使われてしまうと、大変危険であるということをよーく、わかってると思います」


 先生の言葉が俺の胸に突き刺さる。 

 完全にファイヤドラゴンのことを言っている。先生もちらちらとこちらを見ていて、言葉も視線も突き刺さる。


「どんなに障壁を張っていても、障壁が使い物にならなくなった時、自身が怪我をしてしまうことになるでしょう。また、例の爆発のように、唐突のことだと、対応しきれずに怪我をしてしまうことも、あると思います。では、怪我をしてしまったら、一体どうすればいいのか。それが今日の授業の内容です」


 この話を聞いてピンときた。

 あれだ。回復魔法か。


「怪我をしてしまうと、術式に集中できない上、素早い動きなどもし辛くなり、悪いことばかりです。では、そんな時どうするか。そう。回復魔法を使うのです」


 先生は自分の指を軽く噛んで、血を出した。


「見ていてください」


 先生は噛んだ方とは逆の手を、患部に近づけ、呪文を唱え始めた。


「精霊よ。我の手に聖なる光を。緊急治療ヒール!」


 先生の手から緑色の光のようなものが見えた。

 かと思うと、たちまち傷は消え、先生の指は何もなかったかのように綺麗になっている。


「オォ。すごい」


 思わず声が出る。

 これを学会に出せば、ノーベル医学賞間違いなしだ。

 一瞬で怪我や病気を治すことのできる術式。まさに医学者にとって夢のようなものだろう。

 まあ病気治せるのかは知らないけど。


「と、まあ、こういった感じです。これを今日はみなさんに習得してもらいたいのですが、幾つか先に話しておかないといけないことがあります。一つは、今のように、自分を傷つけてまで魔法を使う必要はないので、傷がない状態で、魔法を使うということ、二つ目は、この回復魔法には、魔力を使わないということをわかってもらいたいということです」


 ん?

 魔力を使わない魔法?

 そんなものがあるのか?

 頭の中で首をかしげる。


「このような、回復魔法などは、魔力ではなく、全く別の力、精霊力ホーリースピリッツ、通称HSP (ホーリー スピリット パワー)を、使います。これも魔力と同じように、人によって質や容量が変わるものです。このHSPは、それぞれの人に宿る、精霊の強さによって変化するとも言われていますが、今のところよくわかっていません」


 人一人ひとりに宿る精霊?

 守護霊的なものだろうか?いや、守護する、霊だし、まんま守護霊か。

 というかあれか?精霊の力の、12歳になったら、力の解放がどうたらこうたらっていうアレと連動しているのか?


「魔力が高いからといって、精霊力も高いとは限りません。魔力が低くても、精霊力が高いという人もいるので、そういった人が、お医者様のサポートに回ったりする、看護師になることが多いです。精霊力が高いと、白魔導師なんかにも向いていますね」


 白魔導師か。なんかいいよね。仲間を助けて回る魔法使い。

 まさにヒロインポジション。まああんま配役関係ないけどさ。


「精霊力は、見ただけでその人がどれだけの力を保有しているかがわかります。回復魔法などを使った時に出る光の色でです。私の場合、緑色なので、まあ中の中と言ったところです。より濃い緑だと、精霊力が高いと言われています。逆に、色が薄いと薄いほど、黄色に近いほど、力が弱いと言えます。それぞれ、魔力と同じように階級わけされていますが、その話は長くなるので今はやめておきましょう」


 先生はもう一度呪文を唱えて、自身の手からもう一度光を作り出した。

 よくよく見てみると、緑は緑でも、黄緑色っぽい色だ。

 これが中の中、つまり、平均の色ってことか。


「なので、皆さんが回復魔法を使ってくれれば、皆さんがどれだけの精霊力を持っているかが大体わかるというわけなのです。さらに、回復魔法に関しては、イメージはほとんどいらず、呪文を唱えるだけで使うことができるので、呪文さえ覚えていれば、あらゆる状況で使用することが可能です。使いやすいので、もう今すぐにみんなで一斉に、一人ひとりの色を見ていきましょう」


 先生は、そう言って、さっきの呪文を皆に教えた。

 教えられた呪文を皆で復唱すると、みんなの手から、黄色から緑色の間のあたりの色の光がそれぞれ出た。


「じゃあ俺も…」


「おおお!すごい!カルエルさん!」


 呪文を皆から遅れる形で唱えようとしたその瞬間、先生の声が響いた」

 気になって、声のした方、カルエルの方を向いた。


 カルエルとは、人種族の女の子。

 彼女は、このBクラスの中ではなかなか優秀な生徒のようで、魔力が高い、飲み込みが早い、聞き分けがいい、の、三拍子そろった優等生だ。

 そんなカルエルの手元を見て、俺も驚いた。 

 先生のさっき言っていたことが本当なら、これはすごい。と、素直に思った。

 

 カルエルの手先から出ている光は、緑色だった。

 かなり濃い緑だ。

 先生の光より余裕で濃い色だ。


 先生が緑茶なら、カルエルは抹茶、いや、それ以上かもしれない。


「こんなに濃い色、私も数えるほどしか見たことがないですよ。カルエルさんは、白魔導師として活躍できそうですね」


「そ、そうですか!?」


 少し顔を赤らめ、照れているようだ。大声を出したのは照れ隠しのためだろうか。


 しかし、こうくると俺も負けていられないな。

 俺もあそこまではいかなくとも、先生くらい、中の中くらいはいっておきたいところだ。


「よし。精霊よ。我の手に聖なる光を。緊急治療ヒール!」


 俺の手からは緑色の光が……でない?

 少し待ってみたが、光が出ない。

 緑だ、とか、黄色い、とかじゃない。光が出ない。

 呪文間違えたか?


「精霊よ。我の手に聖なる光を。緊急治療ヒール!」


 もう一度呪文を唱えるが、光は一向に出てこない。

 何かトラブルでも発生したのだろうか?


 困っていたところに、先生が来た。 


「ガリュー君。緊急治療を使ってみてください」


 先生がそう言ったので、もう一度、呪文を唱える。


「精霊よ。我の手に聖なる光を。緊急治療ヒール!」


 が、やはり光は出ない。


「先生。なんどやっても光が出ません…。どうしてでしょうか?」


 すると先生は、俺の手を手にとって、じっと見つめた。


「……….。あ…ガリュー君。このうっすら光る薄黄色な光が見えますか?」


 先生が、俺の手の一部分を指差す。

 目を細めてよく見ると、確かに微妙に光っている。

 緑どころではない。光っているかどうかさえ判別し辛い光だ。


「つまり先生?これって…」


「……相当精霊力が弱いみたいですね。これでは、普通の緊急治療も厳しいかもしれません。良くて一回……できにと考えた方がいいかもしれませんね」


「そ…そんな」


 俺は白魔法的なものが一切使えないってこと?

 いや確かに、女性っぽい、とか、ヒロインの役目っぽい、とか思ってたけど、この対応ってひどくないですか?

 白魔法使えないって、異世界では致命的なんじゃないの!?


 今日の授業はこれで終わってしまった。

 

 帰ったらすぐ寝た。なんか嫌になって、すぐにベッドにダイブしてしまった。


 別に拗ねてるとかそういうわけじゃないんだ!......からな?

 ほ、本当だって......。


ーーーーーーーーーー



(……クククク。あと少し、あと少しだ。


 なんで俺がこんな奴の中に囚われたのか?


 そんなことはもうどうでもいいのだ……。

 

 ついに、長い眠りから復活する時が来た。

 

 霊として彷徨った分、俺は強くなっている。


 復活は近い。あと少し、そう、少しだ…..)


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