元素魔法
入学から数日が経った。
魔法のことに関しても、いろいろと学ぶことができ、元素魔法というものに関しては、ある程度の範囲までは不自由なく使えるようになった。
さすがは初歩の魔法。覚えやすかった。
唯一苦戦したのが、闇の魔法。
簡単に言うと、俺にとっては想像のしようがなかった。
光の魔法は、太陽やら電球やらを想像すれば、容易に再現できたが、闇だけは、イマイチその原理が解らず、その場で足踏みが続いた。
そこから脱出する手助けをしてくれたのは、ブラックホールだった。
以前、本か何かで見た覚えばある。
闇は、光をも吸い込む。と。
闇というものは、光を吸い込み、光というものは、闇を照らす。
どちらも同じようなもので、単純に勢いのう良かったほうが、勝つ。
そう考えると、そんなに難しいことではなかった。
光の魔法を消したり、あたりを暗くする、ようは太陽光を吸収するようなものを作り出すことができた。
だが、こんなに早く覚えたとはいえ、俺が優秀だったわけではなく、皆もだいたい全ての魔法が使えるようにはなっていた。
すると、先生はいきなり、今日は外で授業する。と言い始め、皆を校庭(?)に連れ出した。
「魔法使いにとって、最も使えなくてはならないものは、間違いなく元素魔法です。なぜならば、生活していく上で、最も需要が高いから。でしたね?」
先生は外で全員を座らせて、話をし始めた。
「ですが、それと同じくらい大切な魔法が、もう一つあります」
先生はそういうと、手を前に突き出した。
突き出した手のあたりから、光の粒子のようなものが出てきたかと思うと、それは先生の周囲を取り囲んで行った。
少しずつ形が整っていき、最終的に、ガラスの板のように半透明な板のようなものになった。
「それが、この、護身用の魔法です。これは、物理的な外部からの攻撃を防いでくれる障壁です。魔法系統の攻撃からも身を守ってくれます」
先生は、自身を取り囲むそれを指差しながら説明し始めた。
「では…そこの、寝ているソニックくん。試しにこれを軽く叩いてみてください」
「ん…ん〜?」
先生はいきなり、日向に出て気持ちが良かったのか、気分の良さそうな顔で寝ていたソニックを指名。
ゆっくりとソニックは立ち上がり、だるそうに先生の方へ歩いて行ったかとも思うと、障壁に向かって比較的強くビンタをした。
バシッと音が響いた。
「いた〜…」
音から想像できるように、かなり痛そうに叩いた手をさするソニック。さすがに目が覚めたのか、目を大きく見開いた。
が、言動と行動が一致していない。
「軽くといったのに…。まあいでしょう。このように、外部からの攻撃を、かけた魔力の分だけ守ってくれる魔法を、今日は勉強し、使えるようになりましょう」
座って。と、ソニックに言いながら、先生は障壁を解除する。
ソニックは座ると、飽きもせず、またしてもうたた寝を開始する。
あいつはマイペースというか、寝るのが仕事と勘違いをしているんじゃないだろうか?
そもそもナマケモノっていう動物自体がそういう習性なんだろうか?
まあそんなことはどうでもいい。
今は先生の話を聞かなくては。
「この障壁は、人によって様々な種類があります。色、形、大きさ、強さ、人それぞれの趣味趣向や、その場に応じた形、かけられる魔力の量によって、大きく変わってきますから。人によっては、私のように半透明なものだけでなく、完全に盾のように、色が付いていて、前方しか守れないものを使う人もいます。その人たちには失礼かもしれませんが、思考が偏っていたり、一つの考えに凝り固まっていると、そう言った盾のような障壁になることが多いですね」
先生は後ろにあった箱から普通の盾を取り出した。
鍋蓋みたいな形をしている一般的な盾。なんていうかは知らない。
「まあ、この盾を魔法で作り出しているような感じです。一方向しか守れなかったり、が見辛かったりと、あまりいいことは多くないですね。まあ他にも、色々と種類はありますが、できれば、私のように半透明で、全体を見渡せるようなものの方がより安全かつ、不安要素も少なくていいと思いますよ。実際、冒険者さんや、狩人みたいに、戦闘でお金を稼ぐ人たちはほとんどみんなこれですからね。くれぐれも、体を守るイコール盾と、結び付けないように。固定概念は魔法の最大の敵と言っても過言ではないですからね」
先生は出した盾を仕舞い、皆を立たせた。
「元素魔法ではありませんが、結局は想像がメインです。自分の周りを透明な板が取り囲んでいる、そんな状況をイメージしてください」
ふむふむなるほど。
いわゆるバリアだよね。固くて透明…ダイヤモンドか…?
ダイヤモンド的なイメージで固めてみるか?
一瞬そんなことを考えたが、ダイヤモンドは熱に弱いし、だいたい、そう言った鉱物系はどうせすぐ砕けそうだし。
やっぱりゲームとかのバリアをイメージした方が良さそうだな。
少し黄色がかった透明。黄色のサングラスみたいなカラーリングで、薄く、丈夫な壁をイメージ、全身にまとうイメージをする。
ちょっとエフェクトにこだわりたくて、打撃を受けた時だけ、黄色くなって、あとは完全に無色にしよう。と、変なこだわりで少し設定変更をしながら、ちまちまとイメージを固めていく。
ふと思ったが、魔法って、プログラミングみたいだな。要望に対して、思考をフル活用して、あれはこうして、これはああして、っていう感じが。プログラミングなんてしたことないけど。
そう変なことを考えながら、右手を前に出し、そのイメージをしっかりと手の先に伝える。
先生と同じように、手のあたりから、魔力が放出されている感はある。
完全に無色っていう設定なので、本当に出ているかどうかは定かではない。誰かに叩いてもらわないと。
「ではできた人から手をあげてくださいね。見に行きますから。ちょっと耐久度のチェックもしてきたいですしね」
先生がそう言ったので、真っ先に手を挙げる。
「ん?あれ?ガリュー君?どうかしましたか?」
目の前に目に見える障壁らしい障壁がないため、先生も困惑する。
何かあったのかと先生が近づいてきたその時、俺自身思ってもみないことが起きた。
先生が、俺の半径1メートルより近くに行こうとすると、見えない壁によって阻まれるのだ。
これには俺も先生も驚いた。まあ、驚いた理由は違うとは思うが。
俺は、まさか攻撃だけでなく、物理的に何かが侵入することさえ許さないのか。と、驚いたが、先生は、
「な、無色透明、め、珍しいですね。なかなか具現化するのが難しく、使う人が希少な障壁ですね。これには驚きました。これに、さらに耐久度があれば、全く問題のない、いや、むしろ出来すぎている障壁です。お見事です」
先生は、俺にそう言って笑いかけた。
そうか。耐久力か。
機能性は抜群だってことは、先生の話からもわかった。
無色透明だと、敵にも障壁を張っていると悟られないしな。
具現化が難しい、という点については、俺からしてみれば理解に苦しむ(決して馬鹿にしているわけではない。ただ、簡単にできてしまったからだ)が、まあ、出来たならもうそれでいいじゃん。という気持ちでいる方が良さそうだ。
「そうしたら、ガリュー君。耐久度のチェックしましょう。試しに私のファイアボールを受けてみてください。威力は抑えるので、もし、からだに当たってしまっても、すぐに消火すれば問題ないので、安心してくださいね」
先生はそういうと、短い呪文を唱え、手の先からこぶし2個分くらいのサイズの火の玉を出した。
「障壁を出して、構えて。3、2、1」
先生のカウントに間に合うように準備。
もしものことも考え、ドッヂロールしやすいように低い姿勢で構える。
「ファイアボール!」
先生の放った火の玉は、俺の障壁にぶつかり、弾けた。
障壁がうっすら黄色に光ったが、すぐにそれは無色透明に戻った。
「まあ、少なくとも生活していく上では問題なさそうですね。何か危険が及ぶと感じた時に、使ってみるといいですよ。まあ、この学校内にいる限り、そんなことは起きないようにするのが、私たち先生の仕事なんですけどね」
そういうと、先生は他の生徒を見るために、その場から去っていった。
俺はできた障壁を見ながら(見えないが)、どれくらい耐久度があるのかまた今度調べてみよう。と、思った。
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