初めての授業
「ん?...朝か」
部屋の窓から差し込んできた陽の光で目が覚めた。
なんか今日は変な夢見た気がする。
まあいい。どうせ夢なんて大半覚えちゃいないんだから。
だいたい夢なんていつもいつも変なものばかりだ。
一時期はまっていたゲームの世界に入り込んだり、現実的には絶対ありえないことが起きたり。
もしかすると、転生してから今に至るまですべてが夢だったのかもしれないな。
なんていう考えも出てきた。
今こうして息をしている瞬間が、ただの、俺が見ている幻想に過ぎないものがたりの一部に過ぎないって考えると、俺の存在意義ってなんなんだろう…。
いけないいけない。話が変な哲学的方向に進んでしまう。
俺は昨日渡されたローブに着替える。
なんていうか、すごく体にフィットしている。
着ていて心地いい。
シルクみたいだ。いや、シルクなのか?
ちょっとローブの肌触りを楽しんでいると、ドアがノックされる音がした。
「ん?朝早くからなんだ?」
ドアを開ける。
その先にはヴァイア先生がいた。
「ああ、ガリュー君。起きていたんですね。あと三十分で朝食の時間です。ソニック君も起こしてあげてください。時間になったら下の階の食堂ホールへ。朝食を摂ったらすぐに教室へ向かいますよ」
「わかりました。準備しておきます」
ヴァイア先生はそれだけ言って、他の部屋へと行ってしまった。
俺は寝ていたソニックを起こし、ヴァイア先生の言っていた言葉を一言一句違わず伝えた。
ソニックもすぐに着替え始めた。
相変わらず動きはのろのろだが。
その後三十分という微妙に長い時間をベッドに座って潰し、時間になるのを待った。
ちなみにこの世界にも時間という概念や、時計なる存在はある。
一年360日、12か月、一月4週、一週間は6から7日。
1日は24時間、1時間が60分。1分が60秒。
ちょっと微妙に一箇所だけ違うが、後は基本的に太陽歴と変わらない。
時計は、魔力を動力源にして動く道具があり、仕組みはよくわからないが、俺がこの世界で唯一機械的だと思った道具だ。
ちなみにアナログ。サイズは小さくても手のひら二つ分ほどのサイズ。
大きいものだと大人よりでかい。
大きなノッポのなんとやらってやつだ。
振り子が付いている。現代日本ではある意味もうなかなか見られない時計だ。
「行こうか〜」
ソニックも完全に準備を整え終えたようで、立ち上がって歩き始めた。
俺はのそのそ歩くソニックを横から追い抜き、部屋のドアを開けて外に出る。
ソニックも部屋から出たことを確認し、鍵を閉めて一階へと向かう。
階段を下りていくと、食堂の場所がどこだかすぐにわかった。
人が全員ある場所に向かって大移動をしているのだ。
まさに蟻の行列。皆が食料もとめて群がっていく。
もう、地図は見なくてもよさそうだな。
俺はその人たちについていくように先へ進んだ。
するとじきに、通路だった道が開け、大きいホールのようなところへと出てきた。
もうすでに料理を持って座っている人もいる。
ひとまず皆が並んでいるので、その列の後ろに俺も並ぶ。
徐々に列は進んでいき、カウンターのようなものが見えてきた。
そこには、お盆の上に幾つかの料理が載ったセットが、数セット置いてあった。
「中身は同じだから、一人一個持って行きな!残したらいかんよ!新入生たち!お盆取ったら空いてる席に座って早く食べて!」
奥の方が厨房なんだろう。俗に言う給食のおばさんらしい人が大きな声で叫んでいる。
俺はその指示通りにお盆を一つ手に取った。
そのまま空いている席に座った。
隣も空いていて、そこに後ろから来たソニックが座った。
「いただきます」
料理を口に運ぶ。
いつも朝飯は俺が作っていたので、ちょっと自分んが作っていないということに違和感を感じる。
ちなみにこちらの世界では、調味料というものの発達が遅れている。
塩胡椒などの、あまり加工を必要としないスパイスなどは種類が豊富で、なんか俺も名前の聞いたことも見たこともない(おそらく、地球上に存在していなかった)スパイスも幾つかあった。
だが、醤油、味噌、出汁など、主に和食の要となってくるものが、全くないのだ。その他洋風だし、中華だしなども、もちろんあるわけがない。バターやチーズなんかも。
おそらくそれらを作る時に必要になってくる、技術、そしてレシピが足りないのだろう。
そもそも味噌、醤油に至っては、発酵した、言い方を変えれば腐った食べ物。仮に偶然味噌、醤油があったとしても、この世界の人々がそれを口まで持っていくかと言われると、それはないと思う。
本当に、味噌や納豆のような、少し食べるのに勇気がいりそうなものを世界で初めて口にした人の勇気ってすごいよね。と、前世の時から思っていたが、やはりまあ普通は腐ったものを食べようとは思わないだろう。
気分的にも、衛生的にも。
閑話休題。
とにかく、この世界の料理っていうのは、どうも味が薄い。元日本人としては、味噌のひとつまみくらいは欲しいわけだ。
だがまあ贅沢言ってられない。
もし機会があったら自分で味噌作ってみようかな。
そう思いながら朝食を食べ終えた。
ソニックも気がついたら食べ終えていた。
食べるのは早いかもしれない。
一緒にお盆を方付け、そのまま教室へ向かう。
教室には、すでに何人かの子供と、ヴァイア先生がいた。
「ガリュー君にソニック君。好きなところに座ってください」
「わかりました」
空いていた席に適当に座って、少し待つと、ぞろぞろと他の生徒たちもやってきた。
やがて、昨日この教室に揃っていた生徒全員が集まった。
「皆さんおはようございます」
「「「おはようございます」」」
先生があいさつし、それに続いて全員があいさつする。
「皆さんは昨日からこの学校に入学したわけですが、まだまだわからないことも多いと思います。ですので、今日は、二つのことを話したいと思います」
先生はそういうと、人差し指を立てた。
「一つは、学校のこと。学校で生活していく上でわかっていなければならない、ルールや、各部屋の場所などのことです」
確かに、わからないことは多い。あと、地図見た感じ、結構校舎含めて、学校全体の敷地が広い。
色々と覚えなきゃいけないことは多そうだ。
「さらにもう一つ。それは、あなたたちの中に流れる、魔力についてです。この学校のものは、ほとんど魔力によって動くものが大半です。もう昨日気付いた人もいるかもしれないですが、シャワーを浴びるには、魔力が必要ですし、部屋を掃除するにも、魔力は必要になってくるのです」
ああ。昨日のシャワー室のやつか。
「ですが、あなたたちは魔力の使い方をまだわかっていない。むやみやたらと魔法を使えば…」
先生は指から炎を出し、どんどんその炎を大きくしていった。
ものの数秒で、天井につきそうなくらいに大きくなった。
部屋全体の温度がすごく高くなる。
「もう少し火力をあげれば、間違いなくこの教室、場合によっては学校全体が火事になってしまうでしょう。魔法は便利です。なんでもできます。料理、家事、狩り、日々の生活で欠かせないものになっています。ですが、一歩間違えれば大変危険なことになりかねない、そういうものなのです」
先生は真剣な顔つきで言った。
火を消した先生はもう一度皆のほうに向き直った。
「だからこそ、安全な使い方ができるように、勉強することから始めていくのです」
魔法も科学も似たようなところがあるよな。
魔法で火を出しても、ガスコンロで火を出しても、気を抜けば行き着くところは同じってわけだ。
気をつけないとな。
まだまだ先生の話は続く…
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