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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
12/48

魔力結晶

入学できるのか?


といった回です。ここからが前座、学校編です。


1幕までのキャラ紹介も兼ねて、ご覧ください。

「ンノッ!」


 馬車が停止し、その揺れでぐっすり眠っていた俺は座席から転げ落ちた。


「痛い…」


 それが目覚まし代わりとなって、俺は立ち上がる。

 外を見ると、この世界に来て見てきた建物の中で、最も大きい建物がそこにあった。


 階数はそれほどでもなさそうだが、横幅がでかい。

 

「着いたので降りてください」


 俺が久々の巨大な建物に目を奪われていたその時、馭者(馬車の運転手)さんに声をかけられた。

 他の子供達も寝ていたようで、馭者さんが一人一人を起こしていく。


 俺は荷物を持って馬車を降りた。馬車の中から前方は見えなかったが、馬車から降りて前、後ろを見ると、同じように、数人の子供を乗せた馬車が、たくさん来ていた。

 こんなにも多くの人が集まるところを見るのは久しぶりだ。


 ちょっと子供率が高すぎるのは違和感があるが。だってなんか、スクランブル交差点が子供だらけだと気持ち悪くない?


 そんなことを考えていると、馭者さんが寝ていた子供達全員を馬車から降ろし、ついてくるように、と、行って、建物の方へと歩いて行った。

 俺も急いでその後を追っていく。

 そのうち、子供達が超行列を作っている広場のようなところへやってきた。


「ここに並んで。列はみ出さないように」


 馭者さんの言う通りに、その列に並ぶ、ものすごい列だ。

 先が見えない。


 と、思ったが、比較的速いペースで列は縮んでいる。

 何に並んでいるかは不明だが、思っているほど時間はかからなさそうだ。



♢♢♢♢♢



 十数分待つと、列の先に何があるのかが見え始めた。

 大きな石だ、透明な、横が相撲取り、縦がキリンくらいのサイズの大きな石だ。

 列に並んでいる一人一人が、その石に触れていく。


 すると、触る人ごとに石の色が変わって、その石の色を、周りにいる大人たちがチェックしている。

 ひょっとすると、いや、ほぼ間違いなくあれが例の魔力結晶だな。


 と、なるとあの結晶の色は、それぞれの魔力の濃度や、量を示している、と考えるのが妥当だろう。

 ちなみに、魔力の量、質、回復速度などを、ある程度まとめてランク分けした等級がある。


 資格無し、初心者級、初級、15級、14級、、、(略)1級、特級、王級、神級というように21段階で分けられる。資格なしというのは、いわゆる魔無しのことだ。初心者級と初級はほぼほぼかぶってる気がするが、あえてつっこまないでおこう。


 細かいが、正確である。因みにこの区分けは剣術、格闘術、弓道、槍術、等の戦闘関係から、学力、や料理、絵画や陶芸なんかもここまで細かく区切られているらしい。

 細すぎて意味不明になりつつあるものの、細かな階級わけは、この世界でも重宝されているようで、どういうシステムか知らないが、詐称も不可能なので、完全に相手の実力を知ることが出来る。それによって詐欺が起こらないのはいいことだと思う。


 この等級分けから考えるに、例えば赤なら15級、色が青に近づいていくほどに級があがるとか、そんな感じなんじゃないだろうか。


 その後も、前に並んでいる子供達はどんどん結晶に触れていく。中には、結晶が無色透明になる人もいた。

 基本的には赤っぽい色が多いので、平均は赤なんだろう。

 まあ色関係ない可能性もあるけど。


 そうこうしているうちに自分の番になった。

 

「それでは結晶に触れてください」


 結晶の横に立っていた女の人に言われ、その通りに結晶に触れる。


「ンな…?」


 貧血の時のように、くらっときた。視界は一瞬真っ暗になり、崩れ落ちそうな脱力感が全身を襲った。

 何かが俺の中に一気に入ってきた。そんな感じだ。おそらくこれが魔力。ということなんだろう。


 倒れかけた体制を立て直す。

 しかし残念だ。一瞬視界がブラックアウトしたせいで、自分の結晶の色が何色かを見ることができなかった。


 ただ、何かが流れ込んだ感じはしたので、魔無しではないと思う。

 少しほっとしたな。

 何て思っていたら、さっきの女の人が、目を見開いて俺を見てた。

 

「えっと、どうすればいいんですか?というよりどうかしましたか?」


 なんか固まっていたので、ひとまず声をかける。

 

「え、あ、いや。何でもありませんよ。君、名前は?」


「ガリューです」


「ガリュー君…。では、ガリュー君。向こうの方に、行ってくださいB−1の教室へ行ってください」


 指差された方向を見ると、何人かの子供達が、建物の入り口らしいところに向かって歩いているところが見えた。

 俺もあの子供達についていけばいいのか。


 俺は建物に向かって歩き始めた。B–1ということは、少なくとも追い返される心配はなさそうだな。

 心の底からホッとした。

 

 俺は建物の方へと向かう。

 

 学校の校舎なんだと思うが、日本の校舎と比べるとだいぶ違う。そもそも地球でもないので、比べる対象に日本を持ってくるのもどうかとは思うが。


 校舎に入ると、学校の先生と思われる大人から、クラスを聞かれた。

 B−1と答えると、教室の場所をおしえてくれたので、言われた場所に向かう。


 ついに俺も魔法が使えるようになったぞ!

 少し、いや、かなりウキウキしながら俺は教室へと向かった。



ーーーーーーーーーー



「それで…ヴァイア君。今年は居たかい?」


「ええ。居ましたよ。校長先生。それも二人も」


「二人も!?」


 第4大陸第2初等魔術師学校、校長室。

 女性の教師と、この学校の校長が、そこにはいた。


「今年の全体の平均は?」


「平均はだいたい10級です。例年通りと言えます。Aクラスが全ひとクラス、計30人。クラスのみの平均で、8級。Bクラスは全3クラス。計115人。平均が全体と変わらず10級前後。そしてCクラスがひとクラスで、計38人。Cの平均は12級前後です」


「そうか…まあだいたい例年通りか」


 学校でのクラス分けは基本、入学時に測定した魔力によって分けられる。

 Aクラスは平均値よりも値が高く、他の生徒に比べて優れた生徒を毎年約30人選ぶことになっている。

 それがB、Cと下がっていくほどにレベルが下がっていく。


 Cの授業についてこれなかった生徒は退学処分になる。

 そうはいっても、そんな生徒はなかなかいないが。


 だが、その枠にはまらない生徒が数年に一度のペースで現れる。


 他の生徒に比べて圧倒的に能力値の高い生徒である。


 本来、魔力の量というのは、子供のうちから鍛えることで、その量や質を高めることができる。

 子供の頃からずば抜けて高いなんてことはなかなかいない。


 だがそれでもやはり、例外というのはいるものだ。


「で、その二人は、それぞれどの程度の級なんだね?」


「一人は6級です」


「ほう。6級か。素晴らしい。もう一人は?」


「それが…4級なんです」


「はあ?それ、下手したらヴァイアくんより…」


「そうかもしれません」


 例外は毎年強い。

 では4級というのはどれくらいのランクだろうか。この世界では、ランクの高いものが良い職に就ける。

 5級以上になれば、初等中等魔術師学校教師になる(そのほかにも幾つかの資格が必要)ライセンス(のようなもの)が得られる。基本的に新米教師なら大抵は5級なので、4級というのは新米教師を大きく上回ることになる。

更に、10級,5級,1級,それ以上は一つのランクの壁が大きい。5級を超える魔術師は大魔術師とも呼ばれる。まあ勿論魔法をしっかり扱えればだが。


 ちなみにこの女性教師であるヴァイアは、新米教師。魔力を測定すれば、4級になるかどうかのライン。

 このまま成長すれば、信じられない天才になるかもしれない。


 この学校始まって以来の天才と言われた生徒も、卒業時に3級だったため、現時点、入学の時点で4級なんていうのは、正直頭がぶっ飛んでもおかしくないのだ。


「…まあ、そこらへんは仕方がない。天才が来たってこと自体は喜ばしいことだ。ただ分かってるとは思うが、対処の方は、しっかりと、な?」


「はい。もちろんです。彼にはマニュアル通りにBクラスへ入ってもらいました。6級の方の子はAですが」


「それでいい。これは私たちのためでもあり、その子のためでもある。こんなことを公に公表したら、どうなることやら。絶対にこのことはここだけの秘密だ。本人にも、卒業までは誤魔化していく感じでいくぞ」


「はい。校長先生」


 ヴァイア先生は校長室から出て行った。

 


 






 



 

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