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異世界最強の魔術師は包丁を手に (旧作 世界一の魔術師 大幅リメイク版)  作者: クリップキラー
少年期 前座 学校に行こう
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ガリュー狩りへ行く 其の2

ーーーーーーーーーー




 馬車に揺られて数十分。


 大した距離じゃないだろうが、こんなに遠出したのは初めてかもしれない。

 いつも近所の辺りまでしか外出てないからな。


 そもそも街の外に出ること自体ほぼないし。


 ちょっと新鮮だと感じながら、ガタガタと日本製の車では考えられないほどにものすごい勢いで揺れる馬車に完全に物理的に長いこと揺られていた。もはや揺さぶられていた。


 そろそろ頭が痛くなってきたところで、


「降りるぞ」


 と、父さんが言った。

 父さんの後についていくように馬車を降りた俺は、辺りを改めて見回した。

 簡単に言えば田舎のバス停みたいなところだ。


 そこには街があるわけでも、駅があるわけでも、ましてやランドマークがるわけでもない。

 道に、看板的な物が立っているっているだけだ。

 この看板、馬車の止まるスポットとしての目印なんだろうが、こう書いてある文字のインクは雨風にさらされ続け、何が書いてあるのか読めない。そもそも文字が書かれていたのかさえ定かではない(この世界の識字率はそこまで高くはないからだ)。


「ここが、ここら辺の冒険者が最初にお世話になる狩場だ。弱い獣が少しいるくらいで、魔獣もなかなか出ない、初心者用の狩場ってことになる」


「へえ。じゃあこの看板は、その狩場のことを示しているのかな?」


「多分そうだろ?悪いけどこれは流石に俺でも読めねえな。でも少なくとも、ここがその狩場を利用する人たち用の馬車の停車地点の目印ではあると思うぞ」


 看板を目を細めながら見た父さんはそういった。


「まあそんなことはどうでもいいんだ。さっさと行ってさっさと帰るぞ」


 父さんは奥の方にある森の方向へと歩いて行った。


 森に入ると、細い道があった。道と言っても、獣道のようなものだ。多くの人たちが、そのルートを利用したため、そこらの植物がどんどんなくなっていって、少しづつ地面が露出していき、気がついたら道になっていた。といった感じだろう。


 とても細く、たまに両サイドの草が脚に当たる。

 一応長ズボンだが、現代の製品に比べても、圧倒的に弱い生地なので、破れないかどうかが心配だ。


 その後も父さんは歩みを進め、十分ほど経ったあたりで足を止めた。


「今日は人がすくないな。まあその方が都合はいいんだが。ひとまずなんか適当な標的見つけないと」


 小さな声でぶつぶつと独り言を言い始めた。


「ガリュー。俺から離れるな。いくら初心者用とは言っても、安全なわけではない。いつも危険と隣り合わせ。それが冒険者だ。常に注意して進め」


「了解。注意します」


 敬礼のポーズをとって返事をする。


 そしてまたしばらくすると、反対側から、人が出てきた。


「うっす。今日はなんかいたか?」


 その人に父さんは話しかけた。


「いやあ。今日はあんまりいないね。朝早くに来た人たちが全部狩りつくしちゃった感じ。俺もこれしか採れなかったよ」


 その人は袋から牙を二本とりだした。


「猪か。やっぱそういうのしかいないか。まあ今日はそれ目当てだしいいか。どこらへんならまだいそうだ?」


「…次の分かれ目を左に行った方がまだいいと思う。どうも右側はダメだ。ここ数日で緊急依頼があってから、何の獣も出てこないよ」


「そうか。ありがとう」


 そう言って父さんは先へ進む。

 

 そして分かれ目が来たところで、さっきの人が言っていた通りに左へ曲がって行った。


「いそう?」


「シッ。静かに。耳をすませ。聞こえるか?」


 俺が話しかけようとしたその時、父さんは俺の口を押さえ、そう言った。


 俺も耳を澄ませると、とても小さいが、獣が唸っているような声が聞こえた。


「いるね」


「ああ。いるな。あっち側だ」


 父さんは奥の方の茂みを指差した。

 そして、気が狂ったのか、落ちていたまあまあ大きめの石をその茂みの方へ思い切り投げた。


「キーーー!!!」


 大きい叫び声が聞こえた。

 猪だ。


「何してんの!?わざわざ石なんて投げつけて!」


 そう言っている間にも、茂みから猪か出てきた。


 俺たちを見つけると、こちらに向かって走ってきた。突進してくるつもりか?


「避けないと!」


 俺が低い姿勢で身構えたその時。


「…….焼き尽くせ!」


 父さんの手から炎が放たれた。いつも料理に使っているようなちっちゃな灯し火レベルの炎じゃない。例えるならばそれは火炎放射。


 見事に炎は猪にあたり、猪は耳が痛くなるような叫び声を上げて倒れた。

 黒こげだ。


 周囲の草も灰と化した。


「これが魔術の力…」


 魔法と呼ばれるものとは全く異なる威力を持った魔術のダイナミックさに俺は圧倒された。


 そうこうしているうちに、叫び声を聞きつけたのか、数匹の猪がやってきた。


「貫け!フレイムスピア!」


 その猪達も、炎の槍のような間のに貫かれ、その場に倒れた。


 父さんは倒れた猪から、牙だけを採取して、残りをさらに灰になるまで炎で燃やした。


「これが魔術だ。俺は火に特化しているから、火の関係の魔術には自信がある。ちょっと初心者向けの狩場なのにやらかしすぎた感じはするけど、まあいいだろう。思ったよりも猪も倒せたし、今日は帰るか」


「え?もう?」


 戦いが始まってまだ数分も経っていない。

 歩いたり馬車乗ってたりして、もう昼ごろだろうとは思うが、まさかこう簡単に終わるとは思わなかった。


「目的は達成したしな。帰るぞ」


 そう言って父さんは来た道を引き返し始めた。


「え?もう?はっや。せっかく来たんならもうちょっとなんか他のことしないの?」


「え?いや別に。やることなんてないし。やってるだけ無駄な気するから帰るぞ。日が落ちると虫も増えるしな」


 父さんはニヤリと笑った。この男、俺が極度の虫嫌いであったことをわかっていたようだ。

 虫が増える。聞いただけで寒気がする言葉だ。


 俺は置いて行かれないように急いで父さんの後についていく。


 しかしなんだ。冒険者の仕事っていうのは、戦う時間よりも移動に時間がかかる、ちょっと思ってたのと違うな。と、思いながら俺は父さんの後についていき、特に何事もなく家に帰ったのだった。

 もちろん数十分馬車に揺られて。


 全く。馬車の時間だけで実際の狩りの時間の倍以上あるんじゃないか?

 そう思いながら帰り道の馬車に俺は揺られていった。


 








 


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今日はあと1話投稿予定です

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