357話
大広間に集められたリゼたち。
壁際には騎士たちが等間隔で立っている。
上座には国王と王子二人。
その周囲にはインペリアルガードが護衛をしていた。
続けて国の重要な役職についている者が数名。
リゼたちは入り口近くの末席にオルビスと並んで座っていた。
「では、始めるか。その前に、ここでの会話は他言無用だ。皆、分かっておるな」
国王の言葉に全員がうなずく。
視線をマルコムに向けると立ち上がり、説明を始める。
最初にシアトムが死んでいたこと。
その死体を誰かが操っていたこと。
そして、アルカントラ法国の四葉の騎士が城内に忍び込み、国王の命を狙っていたこと。
別の四葉の騎士が王都で暴れて、現在も姿を隠していること。
部屋にいる者にとって、初めて耳にする内容もある。
とりわけ、シアトム第二王子の死去には驚きを隠せない者もいた。
「一体、どういうことですか?」
大臣らしき人物がマルコムに質問をする。
「その件については、私から説明させていただきます」
マルコムに代わり、ユーリが立ち上がり説明を始めた。
「シアトム王子がアルカントラ法国に向かった時に、同行していた使用人が何者かに操られたと考えられます」
「……使用人が?」
「はい。シアトム王子の部屋のベッド下に隠されていました」
「シアトム王子の横にいる者が、その使用人なのか?」
シアトムと使用人の体は拘束された状態で椅子に座らされていた。
「はい、そうです。シアトム王子付きの使用人ということであれば、荷物検査もなく、同行していた者の検査もありませんでした。騎士たちについても、隊長からの報告にありませんでした。ですので、容易に城内へ侵入することも可能です」
「たしかに、そうだな」
ユーリの説明に国王が納得する。
「ここからは、私の推測になりますが、続けさせてよろしいでしょうか?」
「構わぬ。続けてくれ」
国王の承諾に、ユーリは一礼して説明を続けた。
「そこの使用人はシアトム王子が信頼していた人物でしたが、途中で体調不良ということで、王子の指示で同じ馬車に同乗していたと、同行していた者たちから証言がありました。大雨のなか、犯罪集団からの襲撃にも遭った際に、王子から木箱を王都に持って帰るよう指示されたそうです」
「それも証言の裏付けは取れているのか?」
「はい。こちらも同行していた他の使用人や騎士たちの証言で確かなことです」
「……そうか」
勘の良い者であれば、この時点でシアトムが操られていたのだと気付く。
その後、使用人は自室で療養するということだったが、何度か城内で歩いている姿が見られていた。
王都に戻ってきて、部屋から出なかったのも、それが理由だと推測する。
ユーリが説明を終える。
「おおむね、その推測であっているだろう」
国王が暗い表情で話す。
「これはアルカントラ法国からの侵略だと思いますか?」
「……分からぬが、現状からすれば、そう考えるのが筋だろう」
重い空気が部屋内に漂う。
誰もが「戦争」という言葉が頭に浮かぶ。
相手は宗教国家ということもあり、国内でもアルカントラ法国に味方する国民もいるに違いない。
国民同士での争いも考えられる。
頭を抱える国王たちを見ながら、リゼは別のことを考えていた。
そう……クエストが達成されていないことだ。
まだ、国王を狙う者がいる。
建国祭は、もうすぐ終了する。
つまり、国王を殺害するまでの時間が残り少ない。
この場所が最後になることは間違いない。
発動条件が不明だが、魔力を消費していることは分かっていた。
魔法でもないのに魔力が減る……無意識に発動する魔法なのかもしれないと、部屋にいる人物を注意深く見ていく。
すると、着席している人物が視線に入る範囲で体の周りが青く光り始めた。
そのまま、周囲を見渡す……。
(あの騎士‼)
国王の近くにいる騎士が赤く光っている。
(間違い。あの騎士が国王を殺害しようとしている)
犯人に気付いたリゼだったが、それを伝える術が思いつかないでいた。
国王の場所から、一番遠い場所にいるため、あの騎士が行動に移してから間に合うか? インペリアルガードが対応してくれると思いながらも、事前に伝える必要があると考えをめぐらす。
それから、今後の対応についての話し合いが続くが、冒険者である金狼の三人や、オルビスにリゼたちには関係のない話ばかりだった。
「これ以上のことは、少し休憩を挟んだ後、関係者のみで話し合うとしよう」
国王は白熱する議論に対して、一度冷静になるため休憩すると提案した。
この言葉で、大臣たちも冷静さを取り戻したのか、深く呼吸をする。
それはマルコムやリアムも同様だった。
「ぐあぁぁぁ‼」
突如、拘束されたまま椅子に座っていたシアトムが叫ぶ。
視線を移すと、叫び終わると同時に椅子から転落する。
「ジョエリオさん、後ろ‼」
リゼが叫ぶ。
部屋にいるリゼ以外の視線がシアトムに集まった瞬間、警戒していた騎士が国王に向かって剣を抜き襲いかかろうとしていた。
ジョエリオはリゼの言葉に反応して、騎士を殴り飛ばす。
インペリアルガードが国王を取り囲み、安全を確保する。
周囲にいた騎士たちが、国王に襲いかかった騎士を拘束する。
「また、お前か‼」
騎士はリゼに顔を向けて吠えた。
シャジクに続き、またしてもリゼに殺害を阻まれた恨みをぶつける。
「体を刺してください」
ユーリが取り押さえた騎士たちに指示を出すと、それに従い騎士の一人が腕を切る。
「血が出ません」
驚く騎士の言葉に「やっぱり」という表情をするユーリ。
「冒険者の方たち、扉の前に立ってください。それと、この場にいる全員、体に傷をつけて出血していることを私たちに見せてください」
「それは、どういう――」
「悪いが、ユーリの指示に従ってくれ」
意図が分からず文句を言おうとする者たちを、リアムが制する。
「俺たちから証明しよう」
オルビスが腕に傷をつける。
続けて金狼と、銀翼の冒険者たちも体に傷をつけて、出血していることを全員に見せる。
続けて、騎士たちにインペリアルガード。
「俺たちも潔白だと証明する必要があるな」
「そんな、リアム王子」
「シアトムのこともあるだろう。リアムの意見に私も賛成です」
リアムの意見にマルコムも同調して、クリスパーから短剣を借りて、自らの腕に傷をつけて皆に見せる。
「リアムよ。それを貸してくれるか」
国王がリアムに短剣を要求する。
「国王様‼」
大臣たちが止めに入るが、それを制して国王も身の潔白を証明する。
「あっ!」
リゼの目の前に『メインクエスト達成』が表示された。
リアムたちの視線がリゼに集まる。
「もう、大丈夫です」
うなずき答えると、リアムが安堵の表情を浮かべた。
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■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十八』(五増加)
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・身体的成長速度停止。期限:一生涯
・恋愛感情の欠落。期限:一生涯




