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356話

 民衆の声に応える国王。

 今年の国内の情勢と、これからのことを嘘偽りなく演説をする。

 自身の言葉で伝え終えると、マルコムを呼ぶ。

 マルコムも国王に劣らない演説で、民衆の心を掴む。

 続けてリアムを呼び、王子自ら発案のインペリアルガードのお披露目もする。

 今まで以上に国内の不正に厳しく立ち向かうこと。

 そして今、王都内で暴れている者の制圧を約束する。


「国王。失礼します」


 国王と王子二人をインペリアルガードが取り囲む。

 何事かと感じていると、遠くから火炎球が向かってきている。


「ナナオ!」

「分かっている」


 コウガがナナオに向かって叫ぶが、すでにナナオは最前に立ち、戦斧を構えていた。


「ちょっと、騒がしくなるけど御免なさい」


 ナナオの体と戦斧が光ると、勢いよく戦斧を振り抜く。

 斬撃が飛び、火炎球と衝突する。

 天空で爆音とともに、昼間でも分かるくらいの閃光が広がる。


「相殺された……一筋縄ではいかないな」


 一番近い建物の屋根でベニバナが呟く。


「悪いけど、何発も撃てないわよ」

「大丈夫です。次は私が対応します」


 ナナオの隣にエミリネットが立つ。

 国王たちの護衛は仲間に任せた。


「あいつが、王都を暴れ回っているベニバナか」


 オルビスも隣に立ち、攻撃してきたベニバナを見ていた。

 騎士団長は、すぐに騎士たちにベニバナ討伐の指示を出す。

 だが、指示を終えたころにはベニバナの姿は消えていた。



 国王たちが、無事に式典を終えて戻ってきた。

 シャジクの攻撃は一発だけだった。

 通用しないと思い、追撃を止めたのだとリアムやコウガたちは思っていた。

 だが、脅威は去っていないと警戒を強める。

 華々しい表舞台とは逆に、廊下での戦闘の跡に表情が歪む。

 多くの騎士たちの血が、その場で起きた残忍さを物語っていた。

 リゼたちが拘束していたシャジクを騎士団に引き渡す。


「本当にアルカントラ法国のシャジクで間違いないのだろうな?」

「はい。燃えてしまいましたが、こちらが羽織っていたマントの一部です。四葉の刺繍が分かるかと思います。それと」


 アンジュはリゼが奪った剣を国王に見せる。


「たしかに、これはアルカントラ法国の神具”十字剣”ですね」

「そうだな……」


 マルコムが国王に意見を述べると、国王が眉間に皺を寄せた。


「アルカントラ法国からの刺客ということでしょうか?」

「そう考えるのが妥当だろうが――あからさま過ぎるだろう。なによりも、どうやって城に入り込んだのだ?」


 厳重な警戒態勢が敷かれている城内に簡単に侵入することはできない。

 誰かが手引きしていた可能性が高い。


「国王様。シアトム第二王子の部屋を調べさせていただけませんでしょうか」


 リアムの言葉に、その場にいた誰もが驚く。

 実の兄であるシアトムを疑っていると言っているようなものだったからだ。

 だが、現時点で一番怪しいのはシアトムだということも間違いない。


「よかろう。マルコムも同行するように」

「分かりました」


 マルコムが了承するが、心中穏やかではなかった。

 リアムのように冷静な判断が出来なかったからだ。

 王子と兄弟の間で、気持ちが揺れ動いている自分は次期国王候補として未熟だと感じていた。


「とりあえず、状況を整理する必要がある。シアトムの部屋を調べ終わったら、一度集まるとしよう」


 式典前に街中で、もう一人の四葉の騎士であるベニバナが暴れたという報告を受けていた。

 四葉の騎士二人が王都エルドラードで暴れたことは紛れもない事実だ。

 それはアルカントラ法国の侵略だとも考えられる。

 だが、ベニバナは姿を隠したままのため、街ではベニバナの捜索を続けていた。


「どう?」


 静かに近づいてきたエミリネットがリゼに耳打ちをする。


「まだです」

「そう」


 単語での会話だが、リゼにはエミリネットの言葉の意味が分かっていた。

 それは、国王殺害のクエストが達成していないことへの確認だ。

 リゼの回答をエミリネットはインペリアルガードの仲間に視線で共有をすると、リアムだけが不快な表情をする。

 父親である国王殺害の脅威が去っていないからだろう。


 式典前にいた部屋に戻っていると、違和感を感じたインペリアルガードとオルビスが国王の前に出る。

 部屋の扉がゆっくりと開くと、シアトムが現れた。

 手には騎士から奪ったであろう剣を握っている。


「国王……いいえ、父上。すべてはリアム第三王子の策略です。私を信じてください」


 そう言いながら近づいてくる。


「……もう、よい」


 心臓の鼓動がしていなかったシアトムが復活したことよりも、目の前にいる人物が姿形は息子であるシアトムだが、偽物だと直感的に感じた国王は目を閉じ首を左右に振った。

 それは「もう静かに休ませてくれ」という思いが込められていた。

 クリスパーが一歩足を出すと、リアムがクリスパーの肩に手を掛けて「俺の仕事だ」と、さらに前に出る。

 武器も持たずに歩くリアムに、シアトムも一歩また一歩と足を運ぶ。

 剣の届く範囲まで近づくが、リアムを無視する。

 目標は国王だということなのだろうが、リアムが許すはずもなく、シアトムの進行を妨害する。

 表情は変えないが「邪魔するな」と言わんばかりに、リアムに向かって剣を振り下ろす。

 予測していた行動だっただけに、リアムの拳がシアトムの顔面にめり込むと体勢を崩し、虚しく空を切った。

 オルビスが素早くシアトムを拘束する。


「俺の計画は完璧だったはずだ! 邪魔さえ入らなければ」


 視線の先はリゼたちだった。

 最大の目的は国王の暗殺。

 それを妨害したリゼたちを恨むのは当然のことだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 マルコムとリアム、インペリアルガード。そして銀翼の三人が、シアトムの部屋にいた。


「本当にシアトムは――」


 マルコムは今も現実を受け入れられないでいる。


「シアトム王子とリアム王子は動かないでください」


 クリスパーが王子二人に忠告をする。

 危険なことを知らせることは、二人のための配慮になる。


「部屋を見て見慣れないものがあれば、私たちに教えてください」

「見慣れない物なら、それだ」


 リアムが部屋の片隅にある木箱を指差す。


「私も同じことを思っていた。アルカントラ法国から戻ってきた際に、見た記憶がある。その時は詳しく聞かなかったが――」


 マルコムが記憶を遡り、木箱のことを全員に話す。

 一番近くにいたビスマルクが慎重に木箱の蓋を開ける。


「ビスマルク、何がある」

「空だ」


 ビスマルクの言葉を信用していないわけではないが、王子二人は自らの目で確認をしたいため、クリスパーと一緒に移動する。


「たしかに空っぽだな」


 何も入っていない……装飾もされていない木箱を自室に持ち込んだシアトム。


「戻ってきたときには――」


 リアムは最悪なことを考える。

 その考えが的中するかのように、ジョエリオがベッド下で使用人の死体を見つける。


「見たことのある使用人だな」

「私もだ」


 使用人の死体にユーリが近づき、死体に傷をつける。

 死体は固くなっておらず、傷口から血が流れだすこともなかった。


(……やっぱり)


 ユーリは目の前にある使用人の死体が、シアトムと同じ状態だということに気付く。

 それを今、言うべきか悩んでいた。

 自分なりの憶測が頭を過ぎっていたからだ。

 とりあえず、部屋の捜索を続けたうえで話すかを決めることにした。

 だが、木箱以外に怪しい物はなく、隠された死体も一体だけだった。



――――――――――――――――――――



■リゼの能力値

 『体力:四十八』 

 『魔力:三十三』

 『力:三十三』 

 『防御:二十一』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百四十三』

 『回避:五十六』

 『魅力:三十三』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・エルガレム王国国王の殺害阻止。期限:建国祭終了

 ・報酬:魅力(五増加)


■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト



■罰則

 ・身体的成長速度停止。期限:一生涯

 ・恋愛感情の欠落。期限:一生涯

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― 新着の感想 ―
94話 『罰則:特定能力値半減(半年)』 魔力、力、防御、魔法力、魔法耐性の五つの能力値が半分 122話 リゼの能力値 『体力:三十四』 『魔力:十八』 『力:二十二』 『防御:二十』 『魔法力:十…
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