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350話

 ここはリアムの部屋なのだろうか?

 連れてこられた城の一室。

 目の前にはリアムとクリスパーが座り、部屋の扉横にはジョエリオが立っている。

 しばらくすると、リアムの仲間のビスマルクとエミリネット、ユーリが部屋に入ってきた。


「急用ってなによ。私たちも忙しいのよ」


 入室早々、リアムに文句を言うエミリネットだったが、部屋にリゼがいることや、リアムたちからの重々しい雰囲気を感じ取る。


「全員揃ったな。悪いが、ジョエリオとビスマルクは扉横で聞いててくれ。外の者には聞こえない声量で話すので、聞こえなかった内容は、後から話すから勘弁してくれ」

「別に構わない」

「そうだ。外の警戒を強めておくので、詳しいことは後で頼む」


 リアムの口調から、自分が知らぬ間にリアムの逆鱗に触れてしまったのではないかと、リゼは自分の行動を思い出す。


「……リゼ」

「はい」

「正直に言え、インペリアルガードのことは誰から聞いた?」


 誰からも聞いていない。

 自分のスキルで知った言葉だ……が、重要な言葉だったのだ! と、今になって知り、軽々しく口にしたことを後悔する。

 国王の殺害阻止協力が最重要事項だ……であれば、エルガレム王国に仇なす相手ではないと判断する。


「私のスキルで、その人たちに国王様の殺害阻止協力を頼むようにと――」


 ここでスキルのことを聞かれれば、素直に話すしかないという覚悟はあった。

 もしも、この場でリアムたちに話をしなければ、国王が殺害される可能性が高くなる。

 そうなれば、殺害した者たちが暗躍して、エルガレム王国自体が大きな渦に巻き込まれる。

 何も知らずに平和に暮らしている人たちが被害にあうのは、リゼ自身が許せなかった。


「どういうことだ?」


 実の父親であるエルガレム国王の殺害と聞けば、リアムとて正気ではいられない。

 隣のクリスパーがリアムを落ち着かせると、再度リゼに言葉の真意を問う。

 リゼに悪意がないことは、この部屋にいる全員が分かっていることだったが、簡単に聞き流せる話でもない。


「スキルが関係しているってことなのかい?」

「はい」

「それは未来を予測できるようなスキル……なのか?」

「違います。でも……」


 メインスキルで表示された内容は、近い将来に起こりうる出来事なのは間違いない。

 そういう意味では、クリスパーの言っていることは合っている。


「私のスキルは“クエスト”です」

「クエスト?」

「はい」


 インペリアルガードとかは既にどうでもよく、父親を守りたいリアムに協力したいという気持ちが大きかった。

 肉親を失う辛さを知っていたから――。

 リゼは包み隠さずに全てを話した。

 クエストが表示されて達成されれば報酬を受け取り、未達成であれば罰則を受ける。

 ただ、今までクエスト内容に間違いはなかったこと。

 バビロニアのスタンピードも、クエストから事前に情報を得ていたことを伝える。


「報酬目当てだと罵ってもらっても構いません。ですが、国王様が亡くなり、国の人たちが不幸になるのは嫌です……ですから、インペリアルガードについて教えてください。お願いします」


 リゼは立ち上がり、リアムに頭を下げる。

 自分が頭を下げたところで、一国の王子であるリアムにとっては意味のないことだと分かっている。

 だが、この場で今の自分に出来ることはこれくらいだった。


「分かったよ」


 リアムがリゼの申し出を了承してくれた。


「俺たちがインペリアルガードだ。と言っても、世間には明日発表する極秘事項だ」


 まさか、リアムたちがインペリアルガードだったとは予想外だった。

 リゼを連れ出したのは、建国祭の式典前に情報が漏れるのを防ぐためと、ごく一部のものしか知らない情報をリゼが知っていたことで、内通者の可能性などを考えていたそうだ。


「ありがとうございます」

「礼を言うのはこっちだ。絶対に国王を殺させはしない」


 リアムが力強く拳を握り、リゼに向かい笑顔を見せる。

 その瞬間に『クエスト達成』の表示が現れると、リゼはひとまず安心する。

 ひとまずというのは、メインクエストの……国王を守らなければ意味がない。


「今の話は疑う余地がないので、城内の警備を増やす必要がありますね」

「いいや。警備を増やせば、かえって敵を迎え入れる可能性もある。ここは信頼できる奴で固めるのが正解だろう」

「信頼できると言っても……誰が」

「銀翼だよ」


 リゼを見て口角を上げるが、「銀翼」の名前が出たことに、リゼは驚き戸惑う。

 二代目銀翼として初めての指名クエストになる。

 しかも国からのクエスト……指名クエストとしては最高のクエストだが、同時に不安が頭をよぎる。

 フィーネやレティオールとシャルルの三人は銀翼ではないので、アンジュとジェイドを含めた三人で対応する必要がある。

 力不足だと三人とも分かっている状態で、クエストを達成することができるのか。

 リゼの不安をよそに事態は刻一刻と変わっていく。


「ジョエリオ! いますぐ、冒険者ギルドに俺の名で銀翼に指名クエストを出す手続きをしてくれ」

「任せろ! 報酬はどうする」

「お前に任せる」

「えっ!」


 勢いよく部屋を出ようとしたジョエリオの動きが止まり、不安な表情でリアムの顔を見る。


「リアム。これ」


 こうなることを予測していたのか、エミリネットがアイテムバッグから紙を取り出す。

 それはクエスト発注用紙だった。

 すぐに依頼するクランに“銀翼”、クエスト内容に“建国祭中の王都警護”と記入する。

 未記入は依頼者名と、報酬の欄だけだ。


「さすがだな」

「当たり前よ。毎回毎回、用意するのも大変だから」

「……悪いな」

「もう慣れたわ。それよりも一刻を争うんだから、さっさと記入してよ」


 ばつの悪そうなリアムだったが、そんな状況ではないとエミリネットがまくし立てる。


「そうだな」


 自慢気なエミリネットからクエスト発注用紙を奪うように取り、机の上に置くと、すぐに自分の名前と、報酬として“白金貨二十枚”と記入したクエスト発注用紙をジョエリオに向かって投げる。

 存外の扱いをするリアムに、エミリネットは怒るが書類を受け取ったジョエリオは颯爽と部屋を出て行こうとする。


「ジョエリオ、待って!」


 エミリネットの声で、またしても足を止める。


「外にいるジェイドを連れて行きなさい。そして、そのまま銀翼には至急こちらに来るようにと」

「任せろ‼」


 今度こそ勢いよく部屋を飛び出していった。



――――――――――――――――――――



■リゼの能力値

 『体力:四十八』 

 『魔力:三十三』

 『力:三十三』 

 『防御:二十一』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百四十三』

 『回避:五十六』

 『魅力:三十三』(二増加)

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・エルガレム王国国王の殺害阻止。期限:建国祭終了

 ・報酬:魅力(五増加)


■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト

 

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― 新着の感想 ―
うーん。スキルが「クエスト」だと言ってしまったのはかなり不味い気がする。前に罰として喰らった恋愛出来ないってのがこれから効果を出してくるんだろうけど、どう足掻いたってリゼが使いやすい「駒」という立ち位…
最新話辺りで忘れられてるっぽいリゼの各種ステータス半減を戻したらどうでしょう 少なくともあの時半減したステータスは最低でも各種5はあったはず
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