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349話

 ライオットの見学は満場一致で了承される。

 断る理由がないだけの話だったが、形式上は仕方がないとリゼも思っていた。

 ジェイドとフィーネには、その前に金狼のリーダーたちが立ち会うことは伝えている。

 食事をしながら親交を深めるつもりだったが、案の定というか話の中心はライオットだった。

 一気に距離を詰めてくる感じがリゼを含めて女性陣からは警戒されるが、男性陣は好意的に話をしていた。

 自然と男性陣と女性陣で席移動をして固まる。

 女性陣は、この二年間の話を中心に盛り上がった。

 男性陣はライオットの馬鹿話に、ジェイドとレティオールが笑っていた。

 だが、話が再度バニロニアのスタンピードになると、男性陣が合流してくる。

 とくにリゼに敗北したライオットは真剣に話を聞き、レティオールとシャルルに詳しく質問をしていた。

 スタンピード前のミノタウロスとの戦いについても興味を示していた。

 その流れで、アンジュとライオットのドラゴン討伐の話になると、アンジュがライオットを睨んでいたが、気にすることなくライオットは面白可笑しく話を進める。

 話術に長けていると思いながら、クランやパーティーにはライオットのように場を和ませるメンバーも必要なのだろうと思い、ふと初代銀翼のことを思い出し、その役割が裏切ったオプティミスだと気づくと険しい表情を浮かべる。

 リゼの変化に気づいたアンジュが「どうかした?」と心配してくれるが、「ううん、なんでもない」と笑顔で返す。

 アンジュはライオットの話のせいだと勘違いする。

 この先、初代銀翼を思い出すたびに、この感情が湧き出ることにリゼは気づいていた。

 そしてこの感情は決して忘れてはいけないものだと。

 負の感情……闇属性魔法に魅入られているという自覚がリゼにはない。


 楽しい宴が終わりと告げようとしている。

 リゼは聞かなければいけないことがあったことを思い出して、全員に“インペリアルガード”について聞いてみた。

 しかし、誰も耳にしたことがない言葉だったのか首を傾げていた。


「ギルマスなら、なにか知っているかもしれないけど、今は忙しいし」

「それなら明日、ジョエリオさんに聞くといいっス」

「そうですね。ジョエリオさんなら何か知っていると思います」


 二日後の建国祭に向けて、不備がないかを各所回りながら確認しているため、ジェイドとフィーネが手伝っている場所にも顔を出すそうだ。

 リゼは有難くジェイドの提案を受け入れた。



 ――翌日。


 ジェイドとフィーネの仲間ということや、王都で活動するクランに所属していることもあり、城内に入ることが出来た。

 二人が担当していたのは、城壁を補修していた生産者ギルドの職人たちが使う資材の運搬だった。

 フィーネは職人たちから人気があり、可愛がられているのか冗談を言われて笑っている。


(よかった)


 心からそう思えた。

 職人たちと笑顔で会話をするフィーネ。

 初めて見る姿だったが、自分のしたことで誰かが幸せになったと思える瞬間でもあった。


「自分たちは作業をしているので、リゼは座って待ってくれっス」


 ジェイドの言葉に合わせて、フィーネもお辞儀をして職人たちと作業についての打ち合わせに向かった。

 二人はすぐに資材のある場所から、資材を運んでくる。

 その量はリゼが思っていたよりも多い……ジェイドよりもフィーネのほうが多く運んでいる姿に驚く。

 いつものことなのか、職人たちからジェイドに応援の声が飛んでいた。

 自分の知っているフィーネの姿とは違い戸惑うが、生き生きとしたフィーネの表情を見て「これが本当のフィーネなんだ」と感じていた。

 リゼも座っているだけでは申し訳ないと思い、手伝おうと立ち上がる。

だが、資材を持ち上げると一つでも、かなりの重量がある。

 フィーネは十個、ジェイドも八個運んでいる。

 自分の非力さに「能力値が低いんだ」と嘆く。

 だが、フィーネの十倍、ジェイドの八倍速く動けばいいのだと気持ちを切り替えて、一個の資材を何度も往復して運ぶ。

 その様子に職人たちは驚きながらも、楽しんで三人の様子を見ていた。


「ん、あれは?」

「懐かしい人物っぽい……ですね。活動休止前に銀翼に入ったと聞きましたが、どうやら本格的にクランとして活動再開するようですね」


 現場視察に来たリアムがリゼを発見すると、仲間のクリスパーが説明するように会話をする。

 その横には同じく仲間のジョエリオが立っていた。


「面白い勝負だな」


 ジョエリオが呟くが、資材を運んでいる三人は勝負をしているとは思っていない。

 勝手にリアムたちが勝負だと思い込んでいた。

 置き場から最後に残った資材をジェイドが持ち上げると、勝負がついたのかと思い観戦を止めて、三人の所まで移動を始める。

 リアムたちの姿を発見した職人が作業を止めて、リアムたちに挨拶をする。

 すぐに他の職人たちも失礼のないようにと、挨拶が続く。


「ご苦労様。俺の挨拶はいいから、作業を続けて」


 笑顔であいさつに応えるリアムの言葉に従い、職人たちは一礼して作業を再開した。

 リゼたちもリアムたちの存在に気づく。


(失礼な態度のないように……)


 以前はリアムを冒険者だと思っていたので、普通に会話をしていた……そのことでリゼは不安を感じていた。


「よっ、リゼ! 王都に拠点を移したそうだな」


 リアムたちは、リゼが王都に来て銀翼に入ったことを後で知った。

 王都で会うのは、これが初めてだ……というよりも王子として会うのが初めてだ。


「その……以前はリアム王子と知らずに、無礼な振る舞いを――」

「あぁ、そういうのはいいですよ。誰も気にしていませんから」


 謝罪をしようとしたリゼをクリスパーが止める。

 その様子にリアムもうなずいていた。


「銀翼……クウガのことは聞きました。私どもとしても、とても残念です」

「あの馬鹿が簡単に死ぬわけないだろう。そのうち、フラっと帰ってくるよ」


 リアムはクウガが死んだことを受け入れていない。

 実際には生きているのだが……口が裂けても言えないことだった。


「それより、誰が勝ったんだ」

「勝った?」


 言葉の意味が分からずに、ジェイドとフィーネを見るが頭を横に振るだけだった。

 三人の様子から勝負をしていなかったのだと、リアムたちは気づく。


「賭けは不成立だな」

「そうね。ジョエリオも弟子に賭けていただけに残念だったわね」

「ふん!」


 勝負だと思っていたリアムたちは、勝利者を賭けていた。

 会話を聞いていると、普段から賭けをしているのだと、リゼは思ったがフィーネは「いつものことです」と笑っていた。


「それよりも、リゼがどうして手伝っているんだ?」

「はい。ちょっと聞きたいことがありジェイドとフィーネに相談したところ、ジョエリオさんたちなら知っているんじゃないかと教えてもらいました」


 リアムたちは顔を見合わせる。


「まぁ、ジョエリオでなく、私たちにってことでしょうね」

「うるせぇよ」

「それで、聞きたいことって」


 知識ならジョエリオよりも、自分だとクリスパーがリゼの質問を聞く。


「インペリアルガードって、ご存じですか?」


 リゼの言葉にクリスパーの表情が変わる。

 リアムとジョエリオも同様だった。


「……それをどこで?」

「それは……」


 鬼気迫る表情のクリスパーにリゼは戸惑う。


「フィーネ。ちょっとリゼを借りるぞ」


 ジョエリオはフィーネの言葉を待たずに、リゼを脇に抱えるとリアムたちと共に去っていった。



――――――――――――――――――――



■リゼの能力値

 『体力:四十八』 

 『魔力:三十三』

 『力:三十三』 

 『防御:二十一』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百四十三』

 『回避:五十六』

 『魅力:三十一』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・エルガレム王国国王の殺害阻止。期限:建国祭終了

 ・報酬:魅力(五増加)


■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト

 ・インペリアルガードへエルガレム王国国王の殺害阻止協力。期限:建国祭終了

 ・報酬:魅力(二増加)


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一応荷物じゃなくてレディの扱いしてあげて?
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