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322/357

322話

 お互いに遠慮してなのか、予選会の会話を避けていた。

 そうしている間に闘技大会の優勝者が決まり、闘技会場での表彰式が終わる。

 皇城での表彰式が行われていた。


「あの人が優勝したんだ」


 後衛職(回復職)の優勝者ケアリーラを見てシャルルが呟く。


「凄かったの?」

「うん。一番早く予選会を通過した人だよ」


 予選会で通過している人が出るたびに、シャルルは通過者を横目で見ていた。

 その遅れが魔法にも影響して、予選会を通過できなかった。

 過剰に周囲を気にしていたことが、シャルルの敗因の一つだった。


「全然、喜んでいるように見えないね」

「うん。緊張しているのかな」


 レティオールとシャルルが推測で話をしていた。

 その後、後衛職(攻撃職)と前衛職の表彰へと移る。

 前衛職の優勝者がロッソリーニだと知ると、リゼの表情が曇る。


「もしかして、あの人ってリゼと同じ予選グループだった?」


 リゼの表情の変化に気付いたレティオールが、気まずいと思いながらも訊ねる。


「うん。最後にあの人と戦って負けた」


 悔しそうに語るリゼは、負けた瞬間のことを思い出していた。

 閉会を告げる皇太子の挨拶なども、リゼにとっては上の空だった――。


 アルブレストでの目的は終わった。

 今夜がアルブレストで過ごす最後の夜になる。

 闘技大会のことを考えずに楽しめると、気持ちを切り替えているシャルルがいた。

 落ち込んでいるリゼを元気づけようとしている。

 心のケアも治癒師の仕事だとシャルルは考えていた。

 自分も本戦に進めず落ち込んでいるのに、他人に気を使っている。

 励ましてもらっているリゼも、シャルルの心遣いに気付いていた。

 心配かけないように出来るだけ普通を装う。


 アルブレストでの観光を終えてから、予約しておいた美味しいと評判の店で夕食を取る。

 本来であれば、リゼの祝賀会としてシャルルとレティオールが用意した席だった。

 レティオールは自分たちの思いが、リゼの重みになっているのではないかと感じていたが、確認する勇気はなかった。

 今の目標がリゼなのには変わりないからだ。


「その……私の予選会の話を聞いてくれる」


 リゼは自戒の念も込めて、二人に話を聞いてもらうことにした。

 時間が経ち、冷静になると誰かに聞いてもらいたいという気持ちが大きくなった。


「うん、いいよ」

「後で僕の無様は話も聞いてね」


 二人は快く話を聞いてくれた。

 言葉を一言一言口にするたび、悔しさが込み上げる。

 魔法を一切使わなかったことを不思議そうにシャルルが質問をする。


「前衛戦だったから、使用禁止だったの」

「そんなことないよ。僕たちのグループでも使っていた人いたし」

「あっ‼」


 リゼは驚く。

 戦闘を思い返せば、たしかに使用していた参加者がいたことを思い出す。

 自分の思い込みの酷さに落ち込むリゼだったが正直、ロッソリーニとの戦いのなかで、そこまでの余裕がなかった。

 それを知らないレティオールとシャルルが慰める。


「リゼの糸とかで相手を拘束すれば、もう少し楽に戦えたかもしれないね」

「確かにリゼのクナイって、いろいろと使えそうだよね」


 二人はリゼのことで真剣に話し始めた。

 自分では考えつかないようなことを話す。

 クナイの扱いを上手くならなければ、自在に扱えるようになれば、と無意識に握った左手を見る。

 以前に見たサイゾウやチクマールのように――。


 話は次第にシャルルに移り、レティオールへ。

 序盤で敗退したレティオールは恥ずかしそうに話す。

 闘技場に上がると、他の参加者と同じように中央で戦いを待つ。

 その中で異様な装備に身を包む参加者がいた。

 闘技場の端で、リゼのような少し湾曲した剣を持っていたので印象に残っていた。

 何よりも開始の合図と同時に「我が名はミコト。いざ、尋常に勝負なり!」と大声で叫んだそうだ。


(ミコト⁈)


 まさかと思いながら、 レティオールにミコトと名乗った参加者のことを聞く。

 自分と同じくらいの少女で武器は刀に似た物、聞く限り侍のような恰好。

 間違いなく、探している人物に違いない。


「そのミコトって人は、本戦に出場したの?」

「うん、したよ。入賞こそしていなかったようだけどね。もしかして、リゼの知り合いだった?」

「少し気になっただけ」

「そうなんだ。どことなくリゼに似ているようにも思えたよ」

「へぇ、そうなんだ」


 サブクエスト達成をしたい思いはあったが、既にアルブレストにいない可能性もある。

 なにより、レティオールとシャルルと過ごしている時間を割いてまでクエストを達成しようという気が起きなかった……クエスト失敗に心が折れて立ち直れず、自分のクエストに嫌気がさしていた。

 レティオールが何気なく言った「自分に似ている」という言葉が引っ掛かっていた。

 他の客たちも闘技大会の話をしているので、会話の途中でも気になる。


「あの優勝したケアリーラって、聖女候補だった人に似ていませんでしたか?」

「あなたも、そう思いましたか。たしか、不慮の事故で亡くなったと聞いていましたが、年齢からしても別人だと思いますが……それにしては似ていましたよね」


 聖女候補という言葉にシャルルとレティオールが敏感に反応する。

 自然と小声での会話になる。


「シャルル、気付いた?」

「ううん。実際にケアリーラ様を見たことは無いし、今の今まで思い出さなかったわ」


 二人の話を聞くと、ケアリーラは過去最高の聖女になるだろうと言われる逸材だったそうだ。

 その回復魔法は他の聖女候補の比ではなかったと言われている。

 人格者でもあったケアリーラだったので、誰もが聖女になると思っていた。

 だが、アルカントラ法王から、ケアリーラが不慮の事故で亡くなったと報告される。

 詳細な内容は極秘事項だからと、国民たちには教えてもらえず、ケアリーラに世話になった国民たちは、ケアリーラが聖女になることを確信していたからか、ケアリーラの死去を悲観していたそうだ。


「でも別人なんだよね?」

「うん。私より少し年上くらいだったから。年齢で言えば、もっと上のはずよ」

「亡くなったのは、それくらいだったよね」

「うん、そのはずよ。聖女に就任する少し前だったはずだから」


 シャルルとレティオールが困惑していた。

 ただ、その人物がケアリーラ本人なのか、違うのかは関係のないことだ。

 聖女候補だったシャルルは、常にケアリーラと比べられていたこともあり複雑な心境なのだろう。


「そいえば、あの侍は修行だとか言って、すぐに皇都を去ったそうですよ」

「本当に侍なのかも分かりませんけどね」

「たしかに、そうですね」


 直接会ったことがないミコトだったが、ミコトを……いいや、侍を馬鹿にされていることに立腹していた。

 食事も終わり、最後の飲み物を飲みながらリゼは二人に確認をする。


「予定通り、明日の朝にアルブレストを出立することでいい?」

「うん」

「僕も大丈夫だよ。十分に楽しんだからね。野営の準備も万全だよ」


 次の目的地はリゼの都合でエルガレム王国とアルドゥルフロスト連邦の一国パマフロスト公国の国境にあるヴェルべ村に向かう。 

 直行する馬車などは無いため、一度アバントまで戻る必要があった。

 すでに馬車は予約している。

 乗車賃はアバントまでだが、ヴェルべ村に近い場所で降ろしてくれるよう融通を利かしてくれた。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十六』

 『魔力:三十三』

 『力:三十一』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百三十五』

 『回避:五十六』

 『魅力:三十』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト




■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加) 

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― 新着の感想 ―
マイナスが死ぬほど大きいのになんでこいつ毎回迂闊なんだよ。できたはずのクエスト失敗して更になぐさめ優先で更に失敗しようとする。それがクエストスキルにとっての最善かもしれないが読んでてイライラする。
前も同じような勘違いしてたのに学習して無さすぎでは?
大会の内容も確認してないのかよ…ただのアホじゃん…
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