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318話

 派手な花火が何発も打ち上がり、皇都アルブレストの上空を彩る。

 皇都の中央に権力を象徴するかのようにそびえ立つ皇城。

 その周囲に建設されている闘技場。

 かなり古いものであったが、今回の大会に合わせて改修をしていた。

 既に参加者は闘技場の控室で待機して、出番に備えている。

 皇城では開始の式典が行われていた。

 国を挙げての一大イベントに国内が盛り上がっているなか、アルブレスト皇帝が姿を現すと、国民の熱気が一気に増す。 


「今日はアルブレスト皇国の歴史に残る記念すべき日となるだろう。このような日を迎え、その場にいられたことを大変喜ばしく思う」


 皇帝の挨拶が続く。


「では、今回の闘技大会の責任者より挨拶を」


 皇帝に紹介され、皇太子が横に並び挨拶をする。


「今回の闘技大会が成功すれば、第二回、第三回と続けて開催されるでしょう。つまり闘技大会は今後、アルブレスト皇国の新たな目玉となるでしょう」


 皇太子の言葉に集まった国民は歓喜の声をあげる。

 これでアルブレスト皇国は潤うと、国民たちは皇太子に期待していた。

 国家が潤うとは、自分たちの生活も豊かになると信じていたからだ。

 今はアルドゥルフロスト連邦に名を連ねているが、自分たちの生活は何も変わっていない。

 それどころか、自国よりも貧困なエドゥルプレスト国とパマフロスト公国を救済していると思っている国民も多い。

 アルブレスト皇国だけでも立派に成り立っていると思っている国民が多数だった。

 皇帝と皇太子は、国民たちの歓喜の声を聞きながら、奥へと引っ込んで闘技場へと移動を始めた。


 闘技場に姿を現した皇帝と皇太子は、一番眺めの良い場所に座る。

 皇帝の登場に観客は、そろそろ闘技大会が開催されることだと分かっているため興奮している。

 闘技大会を見るために闘技場への入場制限があり、特等席で観戦できるのは高額なチケットを購入した富裕層だけだった。

 それ以外の者は何日も前からチケット販売所に並び、辛うじて支払うことが出来る通貨を支払いチケットを購入して、闘技大会を観戦する。

 チケットを購入していないもしくは、通貨を支払うことが出来ない者たちは闘技場外の高い建物や屋根に上り、遠くから観戦する。

 彼等は彼等なりに、戦いが始まるのが今か今かと待っていた。

 それだけ闘技大会の関心度が高いということだ。


「今より、闘技大会を開催する」


 皇帝が立ち上がり、観客の前で宣言をして闘技大会が開催される。

 まずは予定通り、後衛職(回復職)の予選会から始まった。

 派手さのない部門のため、面白みに欠ける。

 だが、一流の治癒師や回復魔術師を自分の下につけることが出来れば……と、考える者たちは真剣に競技を観戦していた。

 有名な冒険者は、枯れ木にいち早く綺麗な花を咲かせて予選を通過している。

 シャルルも善戦したが本戦には残ることが出来なかった。

 あと十数秒早ければ、予選を通過した数人を追い越して本戦に残れていたかも知れない。

 不甲斐ない結果に満足はしていない……が、それなりに手ごたえのある結果だと予選会を振り返る。

 予選会に参加しているリゼとレティオールは結果を知らない。

 分かるのは全ての予選会が終了してからになる。

 シャルルは控室に戻らず、そのまま闘技場から出される。

 敗者にいる場所など無いと言っているようだった。

 シャルルは闘技場の外で、リゼとレティオールのために祈っていた。

 本戦に進む者を大会関係者が名を呼ぶ。

 その声に従い闘技場に上がると、誇らしげな振る舞いで観客にアピールしていた。


 続けて後衛職(攻撃職)の予選会が始まる。

 四グループに分かれての戦いになる。

 一グループずつ闘技場に上がり、本戦出場者が決まるまで戦う。

 先程とは違い、派手な爆発音や多くの魔法攻撃が放たれるため観客は盛り上がる。

 広域魔法などは自分を巻き込んでしまうので、使用することが出来ない。

 相手を限定して放つことが出来る魔法を主軸にしての戦いだった。

 それでも優秀な魔術師たちは身を守りながら、的確に相手を倒していく。

 後衛職とはいえ、自分の身くらいは守れなければ一流の冒険者ではないと証明しているようだった。

 そして、本戦に進む八人が決定すると観客席から割れんばかりの歓声と拍手が参加者に送られた。

 回復職の時とは、観客の反応が全く違う。


「ここで、皆様に御連絡です。皇太子様の図らいで、本戦では賭けを行いたいと思います。本戦開始前までに、この札をつけている者に各部門毎に優勝者の名前と白金貨か金貨を御渡しください。掛け率は本戦前に御連絡いたします」


 皇太子の粋な図らいに観客たちは大騒ぎする。

 闘技大会に関心を持っているが、会場に入れなかった国民たちに向けても同様の話があった。

 賭けをする受付には、本戦参加者たちの名前が貼りだされる。

 一攫千金を狙う者たちは、早速予想を始めていた。

 予選会での戦いを仲間内で共有したりして、情報交換をする者たちもいる。

 前衛職の予選会前に発表したのには、運営側の思惑があった。

 一番盛り上がるであろうと予想される前衛職の予選会。

 予選会の戦いで、優勝者を予想しながら観戦する。

 そのことでより一層、大会が盛り上がることは間違いない。

 そして、新たに賭けが成立するのは金貨か白銀貨と発表される。

 おいそれと一般庶民が簡単に出せる通貨でもないから、必然的に金貨を簡単に掛けられる者に絞られる。

 そのことを知った闘技場外で予想をしている者たちは、発表と同時に落胆していたが、何人かで購入することも可能なので、仲間を募る動きへと変わっていく。

 もし闘技大会に賭けが出来ると開催前に知っていれば、賭け金をより多く手に入れようと、皇都内で犯罪が多発することは間違いなかった。

 犯罪を犯す時間さえ与えない……皇太子の考えを改めて説明すると、アルブレスト皇国の好感度が上がる。

 国民のことを大事に思う皇太子の優しさに感謝していた。

 本戦出場者たちは自分たちが賭けの対象になり、怒る者などいなかった。

 それよりも観客たちにとって、自分の価値がどれほどのものなのかを知るほうに興味が移っていた。

 要は優勝すればいいだけのことだから……。

 前衛職の参加者たちは控室で戦いを待っていた。

 この後に戦うことになる前衛職の参加者たちは、自分たちが賭けの対象になっていることを……まだ知らない。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十六』

 『魔力:三十三』

 『力:三十一』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百三十五』

 『回避:五十六』

 『魅力:三十』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・皇都アルブレストで闘技大会での入賞。期限:十日

 ・報酬:力(三増加)


■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加)

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