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317話

 アルブレスト皇国の皇都アルブレスト。

 多くの冒険者が集っている。

 理由は唯一つ。明後日に開かれる闘技大会に参加するためだ。

 皇太子主催ということは、皇太子の目に止まれば高待遇の誘いがあるかも知れないと期待をする者もいる。

 商品と名誉を手にしたい参加者たちは血気盛んだった。

 リゼたちは早々に闘技大会の受付をする。

 名前の記入と出場する競技に丸を付けて、番号札を貰う。

 番号札にも名前の記載をして受付の人に見せて相違ないことを確認して受付完了となる。


「午前中に予選を行い、午後より本戦となります。詳しくは奥の部屋に貼ってありますので、受付終了後に入室いただきますようお願いいたします。あと、この番号札ですが闘技大会当日まで、きちんと所持して下さい。決して奪われないようにお願い致します」


 不正が無いようにとのことだが、番号札を奪ってしまえば代わりに出場することは可能だ。

 だが奪ったということは、闘技大会で得る名誉は自分ではなく、奪われた者のものになる。

 商品目当ての者は、そんなことを気にしないだろう。

 奪われないようにするのも参加するための資格なのだと、暗に言っていると感じた。

 アイテムバッグに入れてしまえば奪われることは無い。

 レティオールは「アイテムバッグを買ってよかった」と自虐気味に話す。

 当たり前だが、リゼたち三人の受付番号は連番だ。

 そのため、リゼとレティオールは予選会で戦うことになると、お互いに思っていた。

 リゼたちは受付に言われた通り、奥の部屋に移動する。

 入り口で番号札の提示を求められる。

 参加者しか入室を許可されていないようだ。

 部屋は広く、既に多くの参加者たちがいる。

 闘技大会の内容は部屋の中央で大きな板に書かれて、高い位置に展示されている。

 そのため、多くの参加者が下から眺めるように内容を確認していた。

 部屋の周囲にはアルブレスト皇国の歴史などの展示物が飾ってある。

 自国をアピールして、闘技大会後も国に残ってくれる人を募っていた。


 予選会も”前衛職”、”後衛職(攻撃職)”、”後衛職(回復系)”に分かれて時間を区切って行われる。

 回復系以外は、それぞれ四つのグループに分かれて、大きな闘技場での乱闘戦をして、最後まで闘技場で立っていた二人が本戦へと進める。

 回復系の予選は少し違う。

 回復職同士で戦う方法など無い。

 だから、回復職に限っては闘技大会とは少しだけ意味合いが異なっている。

 枯れ木に回復魔法を掛けて、より早く綺麗な花を咲かせることを競わせるそうだ。

 用意される枯れ木も特殊な加工をされた物らしいが、詳細は明かされていない。

 シャルルやレティオールも、そのような物があることを聞いたことがないそうだ。

 当然、リゼも聞いたことがない。

 規格発案したという人物が用意したものだろう。

 技術的には、魔法技術に特化しているフォークオリア法国か、産業都市アンデュスだと推測する。

 だが聞いたアルブレストの資金力で、これだけの大きな大会を開催できるとは思えない。

 エルガレム王国ほどの大国であれば納得出来るが……。


「リゼ!」


 闘技大会の説明を呼んでいたレティオールが説明が書かれている頭上の板を指差していた。

 そこには、予選会は大会本部の抽選により組み分けを決定すると記載がある。

 もしかしたら、レティオールと別のグループになる可能性があるということだ。


「もし、別グループになったら、本戦で会おう! ってね」


 冗談のように話すレティオールだったが、その瞳は真剣そのままだった。


「もちろん。お互い負けないようにしましょう」


 リゼもレティオールの想いに応える。


「でも、タンクって不利だよね」

「たしかに、防御力が高い分、攻撃力が低いから耐えるしかないからね」

「耐えきればいいだけじゃない」

「そんな簡単なことじゃないよ」

「冗談だよ。でも、それしか方法はないでしょ」

「確かにね。タンクは守りだけでなく反撃も出来ないと一流じゃないって言われているしね」


 レティオールがタンクについて語る。

 彼なりにタンクとして思うことがあるのだろう。


「レティオール、あの人たちって……」


 なにかに気付いたシャルルが小声で囁く。

 シャルルの視線の先を見たレティオールは驚いた表情で一言呟いた。


「なんで、あの人たちが……アルカントラ法国最強の”四葉の騎士団”が……」


 レティオールの言った四葉の騎士は知らないが、その前に言った”最強”という言葉。


「四葉の騎士団って、なに?」


 アルカントラ法国の内情を知らないリゼの質問にレティオールは答える。


「四葉の騎士団とは、法王を守る騎士たちのことです。四葉の騎士団は、その名の通り四つの騎士に所属する団です。」

「あそこにいる人が、そうなの?」

「うん。でも、私も四葉の騎士全員を知っているわけじゃないんだけど、あそこにいらっしゃる”シャジク”様は有名な騎士様ね」

「そうなんだ……じゃあ、今歩いて来て話している人も、同じような四葉のマントを羽織っているから、あの人も四葉の騎士ってこと?」

「あのマントを与えられるのは四葉の騎士様だけ……あの人も四葉の騎士様なのは間違いないわ」


 アルカントラ法国最強と言われる騎士のうち二人が闘技大会に参加する意味を考える。

 名誉が目的ではないと考えれば、必然的に賞品だろう。


「あの人たちは、どの部門に参加するの?」

「シャジク様は前衛職だよ。舞うような美しい剣技で、相手を魅了するとも言われているから」

「そうなんだ……もう一人の女性は魔術師っぽいね」

「高名な魔術師で赤髪……ベニバナ様かもね」

「あの”深紅の拷問官”と噂される‼」


 レティオールは咄嗟に口を塞ぎ、視線が合わないように首を横に向けた。

 幸いにもアルカントラ法国の集団には気付かれていない。


「たしかに、あれは欲しくなるかもね」


 リゼは後衛職(攻撃職)の賞品が書かれている板を見上げていた。

 そこには優勝賞品に”アーティファクトのブック(魔法書)”がある。

 売れば何年も遊んで暮らせると本で読んだ覚えがある希少なブック(魔法書)だ。

 後衛職(回復職)の優勝賞品も”アーティファクトのブック(魔法書)”だった。

 にわかには信じられないが、偽物を優勝賞品にしてしまえば国の威厳に傷が付く。

 間違いなく本物なのだろうが……。

 リゼは自分たちが出場する前衛職の優勝賞品を確認すると、”聖剣クラウ・ソラス”と書かれている。

 無知なリゼだったが聖剣が素晴らしい剣ということだけは知っていた。

 だが今の自分には聖剣に劣らない素晴らしい武器を持っている。

 とても誇らしい気分になっていた。


「一緒にいる人たちも四葉の騎士団だから、かなり強いと思うよ」

「へぇ、そうなんだ」


 改めて、強者たちが参加しているのだと気を引き締める。

 しかし、レティオールとシャルルは、こんな場所で会うと思っていなかった人物に出会ったことで、少し動揺しているようにも思えた。

 特にシャルルは一時でも聖女候補になっていたので、それなりに有名だった。

 自然に知られたくないように顔を伏せている。

 レティオールもシャルルを守るように四葉騎士団の人たちの間に入り、視界にシャルルが入らないように動いた。

 その様子を見ていたリゼもレティオールの横に移動をしてシャルルを隠す。


「ありがとう。でも、大丈夫だから」


 シャルルはレティオールとリゼの優しさに気付き、守られるだけではいけないことを思い出して、気丈に振る舞う。

 これを乗り越えなければ、何度も同じことになると思いながら、リゼの隣に立つ。

 自分の自意識過剰なだけで相手は自分のことなど知らないかも知れない。


「私が居なくなったことを後悔させてあげるくらいにならいとね」


 聖女候補だった自分を捨てたアルカントラ法国を見返してやるという意思表示だった。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十六』

 『魔力:三十三』

 『力:三十一』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百三十五』

 『回避:五十六』

 『魅力:三十』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・皇都アルブレストで闘技大会での入賞。期限:十日

 ・報酬:力(三増加)


■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加)

 

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