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316話

 騒ぎになるのが嫌だったので、早々に宿屋に戻って来た。

 リゼとシャルルの部屋にレティオールを呼んで、シャルルが習得した”アクセラレート”を試してみる。

 時間にして五分間は持続する。

 五分以上の魔法やスキルが持続するものの場合は、意味が無いことを三人で共有した。

 使用すれば、持続時間は長くなるので特訓する必要があると、シャルルは意気込んでいた。


「しかし、リゼも有名人の仲間入りだね」

「うん。私も同じことを思った」


 自分のことのように嬉しそうに話す。


「そんなことないよ」


 有名になることは望んでいたことだが、思っていた以上に面倒事に巻き揉まれるのだと実感した。

 さっきもシャルルがいなければ、あの場に居続けたに違いない。

 

「シャルル。さっきはありがとうね」

「別にいいよ。リゼが困っているように見えたから」


 本当にシャルルは優しい。

 その優しさに甘えている自分に気付き、一人でも対応出来るようにならなければと反省する。


「それはそうと、返事を聞いてなかったけど闘技大会に出るよね」


 そういえば、明確に返事をしていなかったことに気付く。


「うん、出たいと思っている。レティオールと戦うことになるかも知れないけど……」

「望むところだよ」


 笑ってレティオールは答える。

 リゼはレティオールの防御を敗れるのかを真剣に考える。

 レティオールのジョブ(職業)スキルのプロヴォウク(挑発)を闘技大会で使用することはない。

 純粋に防御の能力値と技術の差に、自分の力が通用するかということになる。

 人を殺すことに対して罪悪感が薄れてきていることは、自分自身でも気付いている。

 だがそれは、相手が殺してもいいと思える人間だったからだと、結論付けているからだ。

 殺す気なく本気で相手に向かって行った相手で思い出せるのは、金狼のコウガだけだった。

 もし、レティオールと戦うことになったら、手を抜かずに戦えるだろうか……自分では全力のつもりが、実は違っていたらレティオールを傷付けてしまうかも知れない。


「リゼ」


 自分の心が読まれているのかと思うタイミングで、レティオールに名前を呼ばれる。


「全力で戦ってくれると嬉しいな。それがリゼの思う全力じゃなくてもね」

「もちろん、全力で戦うよ。でも、どうして私の考えていることが分かったの?」

「……人の顔色を見て育ったからかな」


 複雑な表情のレティオールに、これ以上深入りして聞いてはいけないと思った。

 両親や優秀な兄と姉から始まり、次第に出会う人々の顔色を見るようになる。

 処世術として、知らぬ間に身につけたスキルとは違う技術だった。


「まぁまぁ、この話はこれくらいにして、ちょっと早いけど夕食でも食べに行く?」


 シャルルと同郷だからこそ、レティオールのことが分かっているのか話題を変える。


「そうだね。早いけど、そうしようか」


 宿屋は夕食込みにしているので、宿屋の中で食事をとることが出来る。

 食堂は宿泊客のみとなるので、宿泊客以外での飲食は出来ない。

 三人で食堂に移動をすると、すでに何人かの宿泊客が食事をしていた。

 アルブレストでしか呑めないエールも扱っているため、多くの宿泊客はエールで良い気分になっている。

 リゼたちは四人掛けのテーブルに座ると、部屋番号のついた鍵を見せる。

 従業員が部屋番号をメモすると、すぐに夕食が提供された。

 見たことのない料理にシャルルは、リゼとレティオールの顔を見る。


「シャルルは魚料理苦手だもんね」


 アバント湖で取れた新鮮な魚がメインのメニューだった。

 他にもサラダに使用されている草やキノコなども分からないが、食べられることは間違いない。


「骨を取るのが苦手なだけだよ」


 シャルルは秘密をバラされたことに腹を立てていた。


「たしかに面倒臭いよね」


 リゼもシャルルに同意する。

 実際は面倒でも何でもないがシャルルに助けてもらった恩を返すつもりだった。

 大声で話す宿泊客の冒険者たちの会話が聞こえて来る。

 どうやら闘技大会の話題で盛り上がっているようだ。

 多くの名立たる冒険者たちが参加するようだ。

 自然とリゼたちは聞き耳を立てる。

 アルブレストで活躍する冒険者の名前をあげているが、聞いたことのない名前ばかりだ。

 同じ連邦に加入しているとはいえ、エドゥルプレスト国は自国の強さを見せるつけるために国をあげて参加をしている。

 パマフロスト公国は主だった冒険者もいないのか、会話に名前もあがっていない。

 他国のエルガレム王国や、ラバンニアル共和国からも冒険者が集まって来ているそうだ。

 商品目的で合ったり、腕自慢だったりと理由は様々のようだ。


「そういえば、バビロニアで活躍した宵姫も参加するそうだぞ」

「らしいな。今、この町に滞在しているらしいじゃないか」


 話題が自分のことに変わると、リゼは箸を口に運ぶ回数が多くなる。

 それに合わせるようにレティオールとシャルルも食べる。


「でも、本当に強いのか? アンデュスのドラゴンスレイヤーだって偶然にトドメを差しただけかも知れないし、その宵姫だって同じかもしれないだろう」

「たしかにな。噂ってのは尾ひれがつくし、実際の実力じゃないかもな」


 自分を過大に評価してくれる冒険者がいる。

 自分の代わりに訂正してくれることをリゼは感謝していた。

 だが逆に、その過大評価のおかげで戦う前から勝敗が決まってしまう場合のあることをリゼは知らない。


「それは聞きづてならないな」


 別のテーブルで呑んでいた冒険者が、聞き耳を立てていた冒険者に絡む。

 どうやらアンデュスのドラゴン討伐に参加した冒険者のようで、何も知らない部外者に自分たちが必死で戦った行為を侮辱する発言が許せないようだ。

 口論はエスカレートして、殴り合いへと発展するが、公共施設及び、営利目的の建物内での暴力沙汰は法に触れる。


「表に出ろ‼」


 冒険者たちは知っているのか、建物内で暴れることなく外へと出て行った。

 表から大声で言い争い、暴れる音が聞こえて来る。

 暴力沙汰が日常の一部になっている三人は気にすることなく、その音を聞いながら食事をする。


「骨取ろうか?」


 魚の骨に手間取っているシャルルに手伝うことを提案する。


「大丈夫。子供じゃないから」


 シャルルなりに懸命に苦手を克服しようとしていた。

 


――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十六』

 『魔力:三十三』

 『力:三十一』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百三十五』

 『回避:五十六』

 『魅力:三十』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・皇都アルブレストで闘技大会での入賞。期限:十日

 ・報酬:力(三増加)


■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加)

 

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