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315話

 宿も決まったので、ブック(魔法書)を扱う道具店を何店も見て回る。

 真剣に悩むシャルルをリゼとレティオールは見守っていた。

 とくに明日の午後まで用事もないので、時間を気にしなくても良いことは伝えている。

 シャルルは真剣に急かされることなくブック(魔法書)を見ていた。


「これを貰えますか」

「はい、有難う御座います」


 シャルルはリゼとレティオールに相談することなくブック(魔法書)を購入した。

 一度見た店をもう一度行きたいと言った段階で、購入する意思を固めていたのだろうと二人は思っていた。

 カウンターで通貨を支払いと、ブック(魔法書)の契約作業を行う。

 リゼとレティオールは自然と目が合い、シャルルの決断を尊重するように頷く。


「これはおまけね」


 魔法回復薬をおまけでつけてくれた。

 市場では新しく販売されているマジックポーションが主流なこともあり、在庫処理も兼ねているのだろう。

 道具店を出ると同時にシャルルが購入したブック(魔法書)が”アクセラレート”だったと教えてくれた。

 リゼとレティオールは、聞いたことがないその魔法に、どのような効果が分からないので首を傾げる。


「一定時間の間、リキャストタイムが半分になるの。これなら魔力があれば魔法やスキルを倍の時間使えると思ったから」


 恥ずかしそうに魔法の効果を話すシャルルだったが、リゼは自分のために選んだのかも知れないと、少し複雑な思いだった。

 だが、支援系魔法は、仲間のために使用する魔法なのでリゼの考えは間違っている。

 良くも悪くも他人との関わらない人生を送ってきたことや、学習院で基礎知識を知らないリゼにとっては、偏った考えになってしまう。

 だが、シャルルが悩んだ末に出した答えだ。

 リゼはシャルルが習得して良かったと思えるように頑張ろうと誓う。


能力強化(バフ)の魔法にしなかったんだ」


 以前にシャルルとの会話を思い出したのか、レティオールが質問をする。


「うん。能力強化(バフ)も視野に入れていたよ。だけど、いろいろありすぎて悩んでいた時に、アクセラレータを見つけたの。その瞬間に、これだ! って思ったの」


 シャルルは購入の決め手になった思いを二人に話した。

 そして、いずれは他の魔法も考えているし、治癒師としての職業スキルを習得したいと熱く語る。


「変わったね」

「変わった?」


 レティオールの言葉にシャルルが聞き返す。


「う~ん、少し違うかな……そう、昔に戻ったと言ったほうが正解に近いかな。聖女候補と呼ばれていた時のシャルルにね」

「そう?」

「うん。うるさいくらいによく喋って明るかったんだよね……あの頃は」

「うるさいは余計よ」


 レティオールに文句を言うシャルル。

 二人の微笑ましいやり取りが、リゼの目の前で繰り広げられていた。

 一応の目的を終えた三人は、町を散策する。

 レティオールも今の装備を気に入っているが、珍しい武具を見ると目移りしてしまっているようだった。

 いろいろな地域から人が訪れている為、歩いているだけでも情報を入手出来る。

 エルガレム王国の王都エルドラードでは、天翔旅団のオルビスが、ランク昇級試験に挑むため、出立したこと。

 産業都市アンデュスでは、国内に大型魔物であるドラゴンが突如出現して、多くの冒険者と開発した武器で、ドラゴンを討伐したこと。

 その時にアンデュスを拠点にしていたクランの幾つかが壊滅した。

 多くの死者や負傷者の壊滅的な被害だった。

 生き残った冒険者でも後遺症が残ったりと、引退を決める物も多数いたため、冒険者の数が不足してしまう。

 しかし、そのクエストに参加して活躍した冒険者の何人かは、二つ名で呼ばれているようになった。

 そのなかでも有名なのは、仲間が倒れるなか果敢に一人でドラゴンに向かっていき、最後にはドラゴンの命を奪ったことで、ドラゴンスレイヤーの二つ名で呼ばれている。

 その戦闘中に、誰も知らない冒険者が助太刀に入り、ドラゴンに致命傷を与えていた。

 火炎系魔法を使っていた冒険者だったが、気付いたらその場から居なくなっていた。

 幽霊か幻覚だったのかと思う冒険者たちも多くいたが、焼け焦げた痕跡から確かにいたと確信する。

 正体不明の冒険者だが、顔を隠していた布から長い髪がなびくのを見た冒険者がいたそうだ。

 男性冒険者たちは勝手に女性だと決めつけ”幽霊少女”や”紅蓮御前”、”煉獄姫”などと面白可笑しく話しているそうだが、女性冒険者の間では美男子だったと、別の意味で盛り上がっているらしい。

 旬な話題なのか、フォークオリア法国の話が一番多く耳にする。

 傭兵を雇うことからも、内戦の話については、かなり真実味があると感じていた。

 そのため、争いに巻き込まれたくないのか、暫くはフォークオリア法国には行かないと話す商人が多くいた。

 リゼは話を耳にしながら、フォークオリア法国の内戦で兵器が使用されないかを考えていた。

 極秘に協力している円盤の回収。

 円盤が無ければ、装置は作動しない。

 だが、もしどちらかの勢力が円盤を既に回収していたら……フォークオリア法国内はもちろん、国外への被害はどれくらいになるのか! と考えるだけでも恐ろしかった。

 ラバンニアル共和国は、バビロニアのスタンピードで活躍した冒険者の話がほとんどだった。

 宵姫という冒険者の活躍は、一緒にスタンピードを阻止した冒険者仲間からも一目置かれているそうだ。

 なによりもバビロニアを拠点に活動している有名な冒険者であるリャンリーも認めている。

 レティオールとシャルルは、その話が聞こえるたびにリゼに視線を送っていた。

 噂話をする人の中には、宵姫と知り合いだと自慢する者もいる。

 すぐそばにいるリゼに気付かない時点で嘘だと分かるが、何も知らずに話を聞いている人たちからは羨ましがられていた。

 だが、先程の冒険者ギルド会館での会話を聞いた冒険者から、リゼが宵姫とバレるのは時間の問題だ。

 出来れば、自分が宵姫だとバレないうちにアバントを出立したいと思うリゼだった。

 だが、その願いは一瞬で打ち砕かれる。


「あれ? あんた、宵姫だろ。俺もバビロニアで活動していたけど、覚えているか?」


 声に反応して振り向くと、確かに見たことのある冒険者が立っていたが名前までは憶えていない。

 その冒険者は、自分がリゼの知り合いだと自慢するかのように、ミノタウロスの時の話なども始める。

 当然、周囲に人が集まってくる。


「すみません。ちょっと急いでいるので」


 シャルルが早口で助けるように話に入るとリゼの手を引っ張り、その場を急いで立ち去る。

 だが、この騒ぎで宵姫がアバントにいるということが広まった――。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十六』

 『魔力:三十三』

 『力:三十一』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百三十五』

 『回避:五十六』

 『魅力:三十』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・皇都アルブレストで闘技大会での入賞。期限:十日

 ・報酬:力(三増加)


■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加)

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