表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
301/357

301話

 翌朝、部屋を片付け終えると、部屋の扉を叩く音とシャルルの「起きている?」という声が扉越しに聞こえた。

 申し合わせたわけでは無いが、シャルルを呼びに行こうとしていたので、何故か嬉しい気持ちになるリゼは「起きているよ」と言葉を返すと、そのまま「どうぞ」と部屋に招き入れる。

 扉を開けたシャルルの後ろにレティオールもいた。

 二人とも出発の用意が出来ていた。

 三人揃っているならと、酒場の方に移動して食事をしながら話をすることにした。

 一階まで下りると、酒臭い臭いが残っている……と言うよりも、夜が明けても飲んでいるようだ。

 昼夜という概念がないのかは分からないが、楽しそうに騒いでいる。

 カウンターにヴィッカーズの姿が見えない。

 代わりにヴィッカーズよりも少し若い男女が、客たちの対応をしていた。

 とりあえず、朝食を食べようと注文をすると女性のほうが応対してくれた。


「三階に宿泊している冒険者の三人ね。ヴィッカーズさんから聞いているわ。私は”パティーナ”で、あいつは”ペッツ”。ここの従業員で元冒険者よ」


 親指で差す先には、カウンターで作業をするベッツがいた。

 注文を聞き終えたパティーナは、すぐに大声でベッツに伝える。

 

「とりあえず、三人の宿のことは食事を終えた後に聞くわ」

 

 リゼたちのことはヴィッカーズから酒場を去る時に延泊するのかを、三人に確認するよう言われていた。

 他の客から声を掛けられたので、パティーナはリゼたちのテーブルを離れる。


「それで、どうする?」


 レティオールがリゼに質問をする。

 レティオールとシャルルの意見はまとまっていると伝えたうえで話を続ける。


「主体性がないと思われるかも知れないけど、僕とシャルルはリゼに従うと決めている。もし、自分たちの意見があれば、当然リゼに言うするつもりだけど、最終的にエルガレム王国……王都エルドラードに戻るリゼと一緒に行動することが大前提だと思っている。だからこそ、リゼの旅路の邪魔をするつもりはないんだ」


 シャルルもレティオールの言葉に頷く。

 リゼも二人の気持ちを汲み取り、有難いと感じていた。


「今日の国主様との謁見が終わったら、ここに一泊してから朝一で、ラバンを出立して、ヴェルべ村経由でエルドラードに戻ろうと思っている。後で商人たちの馬車護衛が無いかを聞いてみよと思うけど……」


 行き先はシークレットクエストのヴェルべ村。

 ただ、商人の往来が少ないと聞いていたため、都合よく商人が見つかるとは限らない。

 もし見つかったとしても護衛が出来るとは限らない。


「はい、お待たせ」


 話の途中で、パティーナが注文した食事を持って来た。

 食事をテーブルに置くと、すぐに去って行く。

 リゼたちの会話を邪魔しないように、さりげない振る舞いだった。

 パティーナが去ったことで、会話を再開する。

 朝食後に宿を一泊だけ延長して、商人たちへの聞き込みをすることにすることにした。


「本当だって‼」


 酔っ払っている客の声が飛び込んでくる。


「本当に昨日の夜、見たんだって!」

「どうぜ酔っ払っていたんだろう?」

「そん時は、まだ呑んでいなかったんだって‼」

「俺も、見たぞ」

「俺は他の奴からも、同じような話を聞いたぞ」


 声に反応した他の客も会話に加わる。

 客たちの話では、今朝から街中で話題になっているそうだ。

 昨夜に町で幽霊が出たという話で持ちきりだった。

 突然の突風に、黒い少女の姿をした幽霊が町で目撃されていた。

 何をする訳でなく、現れては消え、出現する時には必ず突風が吹き、月夜に照らされた姿も目撃されている。


「絶対に酷い殺され方をされた少女の霊だって!」

「殺した奴を夜な夜な探しているそうだぜ」

「しかし、なんで突然現れたんだ?」

「さぁな。でも、異常なことが起きるのは、いつも突然だろう」


 話を聞いていたシャルルは、こういった話が苦手なのか怯えていた。


「大丈夫だよ。ただの噂だから」


 怯えるシャルルをレティオールが慰める。

 その姿を見ながら、リゼはその黒い少女に心当たりがあった。

 多分、昨夜に瞬脚の練習をしていた自分だろうと……。

 申し訳なさそうな表情を浮かべながらも、言い出すタイミングがなかった。

 シャルルには後で伝えることにして、朝食を口にする。

 朝食を食べ終えると、今晩だけ延泊することを伝える。

 最後にヴィッカーズとロゼッタに挨拶をしたいので、明日はいるかを確認すると、二人とも奥の自宅にいるので、呼べば姿を見せてくれるとパティーナが教えてくれた。

 ヴィッカーズの酒場を出ると、リゼはレティオールとシャルルに小声で、先程の話に出てきた少女の正体は自分だと打ち明ける。


「そうなんだ‼」


 リゼだと分かった二人の……特にシャルルの表情は明るかった。

 黒い少女の正体がリゼだと聞いて、納得する自分がいたため疑うこともなかった。


 とりあえず、冒険者ギルドに顔を出して、護衛の依頼が無いかを確認するが、そのような依頼はなかった。

 その足で商業ギルドに向かい、ヴェルべ村に向かう商人がいないかを尋ねる。


「生憎と、その方面に向かう商人はいないわね。最近、雪崩などもあったので違うルートにしている人たちが多いです」


 雪崩とはパセキ村でのことだとリゼは知っていたので、他の質問をする。


「ヴェルべ村近くまで行ける方法はありますか?」

「そうですね……」


 商業ギルドの職員は地図を取り出して、リゼたちに見せる。


「ここが現在地で、こちらがヴェルべ村です。多くの商人は、こちらのアバントという町までなら、それなりの通行する商人もいますね。ルラール村の商人が買い出しにくることもあります」

「普通に行くのと比べて、どれくらい多くかかりますか?」

「そうですね。アバントまで順調にいって五日前後ってことですかね」

「有難う御座います」

「ルラール村まで行くのですか?」


 礼を言うと、後ろにいた男女に声を掛けられる。

 その視線は唯一の男性レティオールに向けられていた


「はい、そうです」


 目が合ったレティオールが答える。


「私はアサーダと言います。こっちは母親のサーヤヨです。明日の朝一にルラール村に戻りますが、乗って行かれますか?」

「有難う御座います。それは護衛ということでしょうか?」

「そうですね。護衛もそうですが、乗車賃も少し頂ければ……と」


 商人があまり立ち寄らない村では、村で商売をしている村人が直接、街まで買い出しに来ることがある。

 その場合、近くの大きな町で護衛を見つけて、乗車賃を請求することもあるのだと、商業ギルドの職人が違法性はないと説明する。

 乗車賃といっても僅かだ。

 あまり金額が大きいと、本来の目的である護衛さえして貰えないこともあるので、依頼する側も交渉には応じてくれることが多い。

 一人銅貨三枚で契約して、ルラール村までの移動手段を確保した。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十六』

 『魔力:三十三』

 『力:三十一』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百三十五』

 『回避:五十六』

 『魅力:二十七』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト



■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ