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299話

 団員たちに礼と別れの挨拶を言い、カワラークを選ぶため、バーナムと二人で移動をする。


「多分、大丈夫だと思いますが……」

「なにがですか?」


 不安そうに呟くバーナムにリゼは質問する。

 バーナム曰く、アリアーヌとティアーヌの二人がカワラークを上手く使いこなすことが出来ないらしい。

 バーナム曲芸団に女性はアリアーヌとティアーヌの二人しかいない。

 しかも、二人は忍びではない。

 フォークオリア法国奪ってきた魔物調教具が、極少数が裏で出回っている魔物調教具と同様かの検証までは出来ていない。

 バーナムは試作品だと考えていた。

 そして、性別や職業が影響を与えているのではないかとも考えていた。


「試してみれば分かりますよ」


 確証がないため、曖昧な返事をリゼにすると、言葉の意味が分からないリゼは不思議そうな顔をする。

 小さなテントに入ると、大きな鳥籠に何羽ものカワラークが大人しく入れられていた。


「こちらから、好きなのを選んでください」

「籠によって違うんですか?」


 分けられた鳥籠について問うと、訓練……調教中と実用可能とで分けられているそうだ。 

 直感で選ぶと話すバーナムだったが、どれも同じに見える。

 何羽もいるカワラークから選ぶというのは、思っている以上に大変なことだった。

 よくよく考えれば、一生のパートナーを選ぶ作業だ。

 そう考えると安易に選べなくなり、直感と言ったバーナムの言葉も理解できた。

 灰色の体に黄色い(くちばし)が特徴だが、個体によって模様が異なる。

 そのなかで調教中の鳥籠にいるカワラークが目に止まる。

 灰色よりも黒に近く、漆黒のように黒い嘴を開くと、紅い舌を覗かせる。

 そして、自分と同じように青い瞳は、敵意に満ちた目で自分を見ていた。


「厄介なのに目を付けましたね。調教中ですが、見てみますか?」

「はい、御願いします」


 バーナムが気に留めたカワラークについて説明をしてくれる。 

 反抗的な態度をするため、何度も何度も調教されているし、他のカワラークたちや、団員たちとも一定の距離を取るかのように馴れ合わずにいた。

 飛行能力としては他のカワラークよりも頭一つ抜け出していた。

 調教中に少しでも変な行動をすれば、足に縛り付けてあるアラクネの糸で引き寄せて回収される。

 その時は大人しくなるが、それは一時だけで次の調教時には同じような行動をするため、何度も何度も同じ訓練を繰り返す。

 一応は及第点の仕事ぶりは出来るようになるが、使い手を選ぶ。

 実質、バーナム以外の命令は聞かない。

 つまり、手なずけられる相手がいなければ、実際に使用できない。

 あくまで調教レベルで能力が高いだけでは意味がない。

 大きなかごの中で、孤高に佇む姿は美しいと感じる。

 孤高のカワラークは視線を外すことなく、リゼを見続ける。

 視線を外した方が逃げたと感じたリゼは、そのままカワラークを見続ける。

 指を近付けることに「危険です!」と忠告するバーナム。

 だが、視線を重ねるカワラークが自分に危害を加えないと、根拠のない自信があった。

 指を近付けても反応することなく、リゼを睨む。

 他のカワラークたちは、怪しい雰囲気を感じたのか、近付くどころか距離を取るかのように離れていく。

 譲らないリゼに根負けしたのか、飽きたのか不明だが顔を横に向けた。

 リゼが勝負に勝ったと思っていると、油断していたリゼの指を噛む。

 噛まれた指から血が滴るが、決して離そうとしない目でリゼを睨み続けた。

 油断をした一瞬の隙をつかれたという恥ずかしいと思いと、根拠のない自信が外れた思いが交差する。

指の痛みを感じながらも、自分にないものを持っているカワラークを気に入る。


「この子にします」


 直感ということであれば、このカワラーク以外の選択肢はない。


「まだ、調教中なので、このカワラークは……」


 バーナムは悩んでいた。

 調教中のカワラークでは情報伝達に支障をきたす。

 だが、直感という意味ではリゼの選択は正しいのかも知れない……と、リゼの意見を尊重する。

 リゼも自分が我儘を言っている自覚はあったので、バーナムに申し訳ない気持ちだった。


「本当に、このカワラークでいいのですか?」

「はい」

「本当に良いのですね」


 バーナムは何度も確認する。

 カワラークとの主従関係が成立しなければ、魔物調教具を使ったとしても使いこなすことは出来ない。

 これは調教の過程で分かった事実だ。


「分かりました。いずれ……ということで。とりあえずは、相性確認と魔物調教具の登録をしておきましょうか」


 肩掛けの鞄から指先程度の小さな器を取り出すと、リゼの選んだカワラークを掴み、針で体を指す。

 カワラークから流れ出た血を器の半分程度まで貯めると、続けてリゼの指から垂れている血を器に追加する。

 細い木でかき混ぜると水流が出来てカワラーク血と、リゼの地が混ざり合う。

 バーナムが器から細い木を取り出すと、水流が徐々に収まる。


「お互いの血が混ざりあった割合で相性が分かります。と言っても、あくまでも私たちなりに試行錯誤したうえで導き出しただけなので、参考にしかなりませんが……」


 リゼは緊張しながら器を見てると、器の血は四分の三ほど交ざっていた。


「良い感じですね。やはり、直感というのは正しいのかも知れませんね。次は、これに魔力を注いでもらえますか」

「魔力を注ぐとは?」

「摘まんで忍術を……魔法をかけるようにしてください」


 魔物調教具を受け取り、言われた通りにする……が何も変化がない。

 やり方が悪いのか、もう一度試してみるが、……何度も何度も……。


「無理……ですか?」


 バーナムの言葉は聞こえていたが、リゼは諦めることなく魔力を魔物調教具に注ぎ続けた。


「すみません」


 数分ほど経過しても状況は変わることが無かった。


「いえいえ、仕方がありません。ですが、困りましたね」


 リゼとの連絡手段がなくなったため、バーナムは悩んでいた。

 ここにいるカワラークはバーナム曲芸団とヤマト大国にしか飛べないように訓練されている。

 リゼが上手く魔物調教具を使用すれば、バーナム曲芸団と契約者であるリゼの間を行き来出来るようになるはずだった。

 外部の協力者である貴重なリゼの情報を生かすことが出来ない。

 それに忍びであるリゼが魔法調教具が使えないということから、職業が関係していないことは分かった。

 とりあえず、性別が関係しているの可能性が高くなったと、バーナムは考えていた。

 だが、魔物調教具の数にも限りがあるので、簡単に検証確認は出来ない。

 リゼの出現が一瞬の煌めきだったと、残念に感じていた。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十六』

 『魔力:三十三』

 『力:三十一』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百八』

 『回避:五十六』

 『魅力:二十七』

 『運:五十八』

 『万能能力値:二十四』

 

■メインクエスト

 ・瞬脚の習得。期限:一日

 ・報酬:敏捷(三増加)


■サブクエスト

 ・ミコトの捜索。期限:一年

 ・報酬:慧眼(けいがん)の強化


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加)


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