295話
バーナム曲芸団は、アリアーヌとティアーヌ以外は忍だと話す。
ヤマト大国で暮らす忍とは違い、各地に根付き諜報活動をしていた。
完全に溶け込み生活をしているため、怪しまれることは無く平穏に暮らしていた。
だが、その生活も一辺する。
ヤマト大国が襲撃された直後、国外で活動している忍たちにもサンダユウの指示で抹殺命令が出されていた。
ただし、ヤマト大国を裏切ったサンダユウが動かせる人物はいない。
協力関係であったリリア聖国の者を使い、忍たちを襲う。
思いもよらぬ襲撃に反撃する忍たちは、子供たちを逃して大人のみで戦う。
大雑把な襲撃は近隣にも被害をもたらすため、人が集まり始める。
忍ということを隠しながらも、関係のない近隣の者を守ることにもあり、積極的に攻撃は出来ずに命を落とす。
リリア聖国の者を使ったため、明確な指示は出せずに曖昧だったこともあり、全員の生死を確認することなかった。
サンダユウは忍頭時代から諜報活動している忍を捨て駒として見ていたこともあり、生き残っていたとしても何も出来ないと考えていたので、問題無かった。
なにより、戦闘を得意としない忍が代々諜報活動していたため、復讐を企んでも返り討ち出来ると考えていた。
バーナムは任務で別の土地に住む仲間を訪れていた時、仲間が襲われている状況に出くわす。
逃げてきた仲間の子供を発見して保護する。
泣き叫ぶ子供を宥めて、すぐにその場を去る。
バーナムとしても苦渋の決断だったが、仲間が子供だけを逃がした理由も理解していた……血筋を絶やすわけにいかない仲間の思いを汲み取る。
同時に頭の中で仲間が襲われる理由が分からなかった。
遠目でしか見ていないが、その動きは明らかに訓練されている。
強盗を装っていることは明らかだった。
ふと、不吉な考えが頭を過ぎる。
計画的な襲撃で、他の土地で活動している仲間も……と。
その後、バーナムは交流のあった他の土地で活動していた仲間の生存を確認するために訪れる。
現実は非情だった……バーナムの考えが的中していた。
すでに家族もろとも殺された者や、死体も見つかっていない者……。
辛うじて、見つけられた子供や大怪我をしながらも返り討ちにした者。
バーナムは生き残った者を引き連れて、各地を回る。
大人の人数よりも子供の方が多くなり、普通の動きでは目立つため馬車を購入して商人に偽装していたが、商人にしては大人数なことなどの不自然な点が目立ち始める。
この頃、ヤマト大国がサンダユウの手引きで滅んだことを知る。
連絡に使用した鳥が戻ってこなかったり、戻って来たとしても報告を持ったままだった。
怪我を負った仲間たちは移動するのも辛くなり、訪れた土地に移住する。
新しい土地で、忍としての活動は諜報活動することになるが、国がどうなっているかも分からない状態だった。
残った仲間とバーナムは”曲芸団”を立ち上げて、各地を回ることにする。
ヤマト大国に近付くにつれて、状況が集まってくる。
ドヴォルク国に逃げた仲間がいることなども知ると、バーナム曲芸団としてドヴォルク国に入国する。
もちろん、ドヴォルク国で曲芸を披露することは無く、仲間の帰還と無事を喜ぶ。
そして、サスケは自分も外で諜報活動すると進言する。
サスケの部下という形で新たな諜報活動する忍の情報網を再編成される。
バーナム曲芸団も、その一つになる。
アリアーヌとティアーヌの二人は、ある町で襲撃に巻き込まれた隣人の子供を引き取ったそうだ。
あの曲芸も努力の末に辿り着いたのだと、バーナムが話すと二人は照れていた。
忍の家系に生まれたものは、血筋によりジョブスキルを目覚める。
バショウの硬化も、その一つらしい。
(ということは……)
リゼはチクマールは、血筋によるジョブスキルを使わずに自分と戦ったことになる。
手を抜かれていた屈辱という感覚は無く、操糸だけでもあの強さなことに驚き、自分の未熟さと、強くなれる
それに、こんなにも詳しく話をしてくれるのは自分を信用してくれているのだと感じ、この人たちをのために出来ることは協力しようと考える。
連絡を取り合う鳥が必要であれば、一羽譲ってくれるそうだ。
「それって――」
「もちろん、通貨はいただきませんよ。忍仲間ですしね」
リゼが全て言い終わる前に、質問に対する答えを口にした。
諜報活動してくれる忍が増えることは、バーナムにとっては良いことだ。
リゼにとっても悪い話ではない。
考え込むリゼを見つめるバーナムたち。
だが、リゼは新たに発生したクエストを見ていただけだった。
メインクエスト『瞬脚の習得:一日』『報酬(敏捷:三増加)』。
サブクエスト『ミコトの捜索:一年』『報酬(慧眼の強化)』。
サブクエスト『バーナムの真意を読み取る。期限:一時間』『報酬(慧眼の強化)』。
一気に三つのクエスト……内容も様々だ。
優先すべきは、時間の短いサブクエストだが――。
「すみません」
「はい、なんでしょう」
「その……鳥の訓練とかは必要でしょうか?」
まず、バーナムの話を終えてから、気になることを聞くことにした。
「あぁ、そういうことでしたか」
バーナムは忍の伝達方法について話し始める。
基本的に鳥を使用するのは、国にいる忍頭ハンゾウとのやりとりになる。
それ以前は伝達係という忍が数人存在していた。
彼らは信じられない早さで各地を走り回る。
だが、サンダユウは彼らを最初に殺害する。
それも自ら……自分がヤマト大国を滅亡させたことを知らせないため。
その後、新たな伝達係を育てるには時間を要するが、必要不可欠なことなので数人を教育していた。
その一人がサスケだった。
サスケは進んで伝達係……諜報活動の任を望んだ。
そして、サスケは伝達係をしながら、フォークオリア法国で極秘に開発していた魔法具の存在を知る。
今では高額で取り扱われる”魔物調教具”。
貴族の道楽で魔物をペットとして扱いたいという希望に沿ったものだ。
ペットといっても可愛らしく愛でるものではない。
自分の破壊衝動をぶつける相手としてだ。
普通には取引されていない特別な魔道具だ。
ただ、全ての魔物を意のままに操ることは出来ず、小型系の魔物で相性が良かったり、主従関係を強引に理解させたりしないと、魔道具としての効果は発動しなかったりで、普通の狩猟に飽きた貴族たちが購入するものになる。
今も尚、開発は進めているそうで、技術が確立されれば。魔物を軍事利用することも可能で、魔物軍団を作ることも出来る。
フォークオリア法国は裏では危険な研究をしていることに、他国がもっと圧力をかけるべきだと、バーナムは険しい顔で苦言を呈す。
サスケは、この魔道具が使えるとフォークオリア法国から魔道具を奪う。
奪った魔道具はハンゾウに渡し、一番最適な魔物を選んだ。
「飼育される鳥は”カワラーク”です。聞いたことはありますか?」
「はい」
カワラークは鳥型の魔物だが、鳩や燕ほどの大きさのわりに、素早さと連続飛行距離に時間は、鳥型魔物の中でも上位になる。
一定の地域に生息して時期を見て移動する。
人を襲うわけでなく害鳥の部類になるが、頭がよく罠を回避する。
駆除のクエストも多いが難易度は高く、報酬も良い。
カワラークハンターと言われる冒険者もいるくらい、専門知識が必要な駆除になる。
魔道具を使用しても、魔物は手なずけることは可能だが難しい。
「まぁ、相性というものはありますので、訓練しているなかから気になった選んでください」
「有難う御座います」
「私どもの話は、これくらいにしておきましょうか。先にリゼ殿の話を聞きましょうか?」
バーナムの話は一旦、ここで終わる。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十六』
『魔力:三十三』
『力:三十一』
『防御:二十』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百八』
『回避:五十六』
『魅力:二十七』
『運:五十八』
『万能能力値:二十四』
■メインクエスト
・瞬脚の習得。期限:一日
・報酬:敏捷(三増加)
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
・バーナムの真意を読み取る。期限:一時間
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)




