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285話

 ゆっくりと優しい口調でロゼッタが話し始める。

 豪雪地帯にあるパセキ村の存在していたと、場所を最初に話す。

 長きにわたり、そのような場所に村があることは知られていなかった。

 ほぼ、陽を照らすことがない場所で人が生活出来るとは思っておらず、未開拓の魔所だったことが大きい。

 実際、特殊な作物しか育たず、動物や魔物を狩りながら質素に細々と暮らしていた。

 幸運なことに大型の魔物が近付くような場所に村がなかったため、大型の魔物の脅威はなかった。

 自分たちの生まれたパセキ村には特殊な風習があった。

 外部の人間との交流を絶つ生活の理由が、自分たちは神に愛された容姿を持つため、外部の血を入れると汚れるという思考が代々受け継がれていたからだ。

 子供は親の所有物という概念もあり、親に逆らうことは出来ない。

 男性の出生率が少なく、村に出て動物や魔物を狩ってくるので、成人男性は貴重な存在だった。

 なにより村内での子孫を増やし続けるため、成人男性の誰が父親なのか分からない。

 誰の子供かは重要でないため、村民全体で子供の面倒を見る。

 子供は年配者の言いなりになることは、当然の流れでもあった。

 外の世界を知らない村人たちは、そのことに疑問も持たずに細々と生活をしていた。

 ある時、パセキ村近くで狩りをしていた男性たちが、吹雪のため遭難していた貴族を発見する。

 助けてくれたら報酬を出すと、見たこともない装飾品を男性たちに見せる。

 村の掟よりも好奇心が勝つ。

 そして、装飾品を仲間の一人に渡して、村の老人たちからの回答を待つ。

 村の老人たちも同じ反応だった。

 自分たちにも装飾品を寄付することを条件に、一晩だけ村に迎え入れた。

 村に入ると貴族は美しい容姿の村人の女性に驚き、一人の女性を見初める。

 持っていた金貨に身に着けていた宝石が散りばめられた装飾品を渡して、その女性を買おうとする。

 神に愛された自分たちには、それ相応の価値があるのだという勘違いが生まれて、

 女性の母親は娘を貴族に売り渡した。

 一晩で母親は村一番裕福な家へ変わるが、それさえも年配の者たちに搾取される。

 それに目を付けた年配者は、この娘もどうか! と言い始める。

 その貴族は商人を紹介することを約束する代わりに、村人の売買は自分を介してしか出来ないと、村との間で独占契約をする。

 人身売買は禁止の時代だったが、非合法の商売にも手を染めていた貴族は、この稼げる商売を見逃すことはなかった。

 それからのパセキ村は一変した。

 村にあった一ヶ所の出入り口には衛兵を置き、宿屋を建てて観光地へと変貌を遂げる。

 表向きは新たに発見された村と、珍しい村人を見るだけだ。

 最初こそ物珍しさで訪れようとした者もいたが、村に入るために高い通貨を支払うことが知られると、訪れる者は限られるようになる。

 明らかに女性を値踏みする来訪者たち。

 目的は目に止まった者を村から連れ出すことだ。

 気に入った者が居れば、商人と交渉して村から連れ出すことが出来る。

 外部の文化に触れて、積極的に外の世界で暮らしたいと夢見る若者も多くなっていく。

 無知な故、騙されやすいということを村人たちは知らなかったのだ。

 当然、村人にも限りがある。

 若者が村から出て行けば、村は衰退する。

 パセキ村を牛耳っていた貴族は、一時的に稼げれば村がどうなろうと関係なかったのだ。

 女性の若者全てが売られると、観光地としての価値は著しく低下する。

 今では物珍しさで訪れる者しかいない……。

 観光地として有名なのは、村からの絶景というのが表向きだった。

 実際は過去の栄光と、愚かな村としての二面があった。


 ロゼッタの話は、ここからが本題だった。

 自分も十二歳の時に、二人の少女と一緒に貴族に買われた。

 もちろん、非合法だ。

 その時の少女の一人が、リアンナだった。

 別の貴族からの依頼を受けた貴族は代理でパセキ村の女性二人を購入して、仲介料を貰い売り渡す。

 もちろん、建前上は使用人としてなので合法的にだ。

 一人はキンダル領の領主チャールトン……リゼの父親だ。


 ロゼッタはリアンナと別れてから、リアンナは幸せな生活を送っているものだと思っていた。

 だが実際は違っていた。

 明らかに使用人以上な感情を持っていたため、チャールストンが居ない時に、領主夫人であるマリシャスから嫌がらせを受けていた。

 来賓がある際は、リアンナを傍に置き自慢をしていた。

 その時、リアンナに傷などがあれば、他の使用人たちのせいだと怒鳴られる。

 リアンナの傷はマリシャスのせいだとは言えず、さらにマリシャスの怒りを買い、使用人たちからも煙たられていた。

 そして、子供(リゼ)を身籠ったと知ると、マリシャスの怒りは爆発する。

 自分は何年も相手にされていない。

 屈辱……いいや、女性として負けたことがマリシャスのプライドを傷つけた。

 チャールストンに対しても怒りをぶちまける。

 リアンナを解雇しなければ、自分の両親に言いつけるとチャールストンは渋々、リアンナを屋敷から放り出した。

 その後、チャールストンはマリシャスに秘密で、少し離れた小さな村にリアンナを住ませる。

 リアンナに手を出す輩がいたら、すぐに知らせるように……そして、決してリアンナと子供を傷つけないように村長に命令をしていた。

 いずれ、マリシャスの怒りが収まった時に、リアンナを屋敷に戻そうと考えていたからだ。

 だが、リアンナはその事実を知らないまま、この世を去った。


 もう一人の貴族は、チャールストンの実弟“チャーロット”だった。

 栄華を誇る貴族とは程遠い、小さな領地の貧乏貴族だった。

 パセキ村の少女を買うと聞いたチャーロットは、兄への対抗心もあり見栄を張るため、自分も少女を買うと言う。

 高価だと聞いても、チャーロットは引き下がらなかった。

 世話になっている貴族と、大きな商会も絡んでいるため、転売することは出来ないと言っても、チャーロットの意志は変わらなかった。

 だが、その少女は十歳未満だったので、非合法で手に入れたことになる。

 無理して少女を購入したため、財政難に拍車がかかり、領地運営もままならないため税を重くした。

 これは兄のチャールストンからの助言からだった。

 当然、領民たちから不信感が大きくなり、暴動が起きる寸前だった。

 無下に扱っていた側近や使用人たちが最初に反乱を起こす。

 反撃する術を持たないチャーロットは逃げるように王都へと避難する。

 兄のチャールストンに頼らなかったのは、最後のプライドだった。

 暴動の件は既に国王の耳にも入っており、領主の器ではないと領主の座を取り上げられる。

 僅かながらの支度金を渡されると、連れてきた数人の使用人たちや、少女は金になると思ったが、運の悪いことにエルガレム王国では、半年前に人身売買は禁止になっていた。

 合意が成立すれば、使用人の譲渡という名目での抜け道はある。

 ただ、明らかに未成年の者には、リスクが高いので、この方法も使えない。

 王都から離れていたチャーロットは、少女の人身売買が出来なかった。

 転売禁止と言われれていたことさえ、チャーロットは忘れるくらい追い詰められていた。

 目立つ容姿の少女を放置すると、自分に疑惑の矛先が向くこともあり、少女には「親はいない天涯孤独な身だ」と言い聞かせて、教会に連れて行く。

 もちろん、自分は保護しただけだと言って、僅かな賄賂を渡すと足早に教会を去る。

 その少女こそが、アルベルトとクウガとともに孤児部屋にいた“ノア”だった。

 数ヶ月後、チャーロットは最後に残ったプライドも放り出して兄チャールストンに泣きつく。

 しかし厄介者だったため、体よく他の町への使者にして、雇った野盗に襲わせて帰らぬ人となる。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十六』

 『魔力:三十三』

 『力:三十』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百八』

 『回避:五十六』

 『魅力:二十五』

 『運:五十八』

 『万能能力値:二十四』

 

■メインクエスト



■サブクエスト



■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加)

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