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246話

 サイゾウの忍術に驚いているリゼと視線を交わすことをしないサイゾウ。


「ハンゾウ様。リゼ様に忍刀の使い方をお教えになられてはいかがでしょうか?」

「そうだな。小太刀や短刀よりも、忍刀を持った方が攻撃力は上がる。……少しだけ待っててもらえますかな」


 そう言うとハンゾウは姿を消す。

 ハンゾウの一挙手一投足には驚かされる。


「ムサシ様への手紙を預かったそうですが、もう一つ頼まれてもらえませんでしょうか」

「なんでしょうか?」


 コジロウと話していた場にサイゾウはいなかった。

 リゼたちが部屋から出た後に、コジロウがサイゾウを呼んで内容を伝えたとは考えづらい。

 つまり……気配を感じなかっただけでサイゾウも、あの場にいたのだと確信する。


「サスケに私からの伝言を伝えて頂きたいのです」

「伝言ですか?」

「正確には、この巻物を渡して頂きたい」


 リゼはサイゾウから巻物を預かる。

 スクロール(魔法巻物)よりも一回り大きく、見たことのない模様だった。


「これを見せれば、サスケは理解するはずです。それと、これをお持ちください」


 サイゾウから受け取った物は二つ。

 一つは先程のコジロウから受け取った勾玉と触った感じは似ているが、別色での勾玉独特の形状をしていない削られたというより、黒い石の欠片だった。


「サスケも同じ物を持っています。これはヤマト大国で採掘できる珍しい石に特殊な忍術を施した石になります。二つの石が近くなれば、石自体が熱を持ちますので分かるはずです」

「熱ですか……」

「はい。熱と言っても火傷するような熱さにはなりません。言葉では難しいですが、その時が来れば、自然と分かるはずです」


 サイゾウの説明では理解できなかったが、そのまま二つ目の説明を始めた。


「このクナイは私とサスケにしか分からない特別な物です」


 クナイには布が巻き付かれていた。

 その布が風に揺られる様子を見るサイゾウから説明を聞く。

 幼馴染のサイゾウとサスケ。

 ハンゾウの弟分として、幼き頃よりハンゾウとともに切磋琢磨していた。

 親からもハンゾウとともに、いずれ将軍になる若を支えるようにと言われて育つ。

 誰もがヤマト大国の明るい未来を信じていた……。

 サスケとサイゾウの忠義は変わることなく、今も続いている。

 お互いに忠義を確認する時、幼いころにそれぞれ前将軍から頂いた大切な布を二枚に分けて、サスケとサイゾウはぞれぞれ持つことにした。

 半身はお互いに預けるという意味を込めて。

 その布を一部切りクナイに縛った。

 自分の持っていた布の一部は巻物に貼り付けた。

 サスケであれば、両方とも一目で分かるはずだ。

 もし、石が反応して勾玉を見せてサスケだと確信したとしても信用してはならない。

 このクナイや巻物を見て反応しなければ偽物、もしくは操られていると判断するべきだ。

 本当にサスケという忍だと確証するうえで必要なことだ。

 この用心深さがサイゾウたちにとっては当たり前だと思いながら、リゼが大事な物なので、とりあえずアイテムバッグに仕舞おうとするとサイゾウが止める。

 クナイと巻物は仕舞うことに問題はないが、石は防具の内側に仕舞って欲しいと言われる。

 防具の内側には、お守りや大事な手紙などを仕舞っておける小さな内ポケットがある。

 これはアイテムバッグが普及していなかった時代の名残らしい。

 リゼは頷き、後で内ポケットに仕舞うことを約束する。



 サイゾウが話し終えると、ハンゾウが戻って来た。

 手には古びた忍刀が握られていた。

 役目を終えたのか、サイゾウはリゼに軽く頭を下げて去って行った。


「これは練習用に使用しているものです。握ってみてください」


 ハンゾウに促されて忍刀を握る。

 小太刀より長く、刀よりも短いが程よい長さだ。

 ただ、リゼは小柄なので体に比べて大きい印象だった。

 ハンゾウはリゼに忍刀の握り方を教える。


「出来るだけ左手は自由にしておいた方が、戦闘で便利です」


 左手を自由にして戦っていた経験もあるリゼは昔を思い出していた。

 戦い方を試行錯誤したことを懐かしく感じる。

 忍刀で何度か素振りをするリゼ。


「左手で手裏剣……リゼ殿には分からないですか」

「いいえ。最近ですが、棒手裏剣を使っていました」

「それは素晴らしい」


 思っていた以上にリゼが忍らしいことにハンゾウは喜ぶ。


「では模擬戦をしましょう。模擬戦中に、あの木を新しい敵だと思って、手裏剣を投げてください」

「はい」


 ハンゾウ相手に忍刀で模擬戦を行うが、相手を傷つけてしまう恐怖から、どうしても本気で打ち込めないでいた。

 当然、ハンゾウもリゼの動きから躊躇していることを感じ取る。

 リゼからハンゾウが離れると、言われた木に棒手裏剣を投げた。


「どうですか?」

「腰から取り出した棒手裏剣を上手で投げたのはどうしてですか?」

「えっ!」


 ハンゾウの言葉は、リゼが疑問に感じなかったことだった。

 腰から棒手裏剣を取り出して、一度頭上まで腕を上げてから、振り下ろすように投げた。

 しかし、ハンゾウは腰から棒手裏剣を取り出して、そのまま下手で投げれば余計な時間を要しないと手本を見せてくれる。


「あと、酷な言い方ですが人を殺めることにためらいがありますね」

「……はい」

「良い悪いは別ですが、情けをかければ自分に返ってくることを覚えておいたほうがよいでしょう」


 人殺しが当たり前と教えられて育ってきたハンゾウ。

 当然、部下たちも同じだ。


「ドヴォルク国には、どれくらい滞在されるのですか?」

「カリスさんたちの用事が済むまでだと思います」

「そうですか。時間があるようであれば、いつでも拙者たちを訪ねて来て下さい。出来る限りお相手させて頂きます」

「ありがとうございます」


 ハンゾウとの出会いで、自分が強くなれる気がしたリゼは可能な限りハンゾウに教えを乞うことにする。


「そろそろ、カリス殿とコジロウの話も終わった頃なので戻りましょう」

「はい」


 どうして、カリスとコジロウの話が終わったのが分かったのか不思議だったが、疑う気持ちにはなれなかった。


「元来、忍とはヤマト大国の将軍のために存在する者だったのです」


 戻る道中、忍頭として忍のリゼに忍の歴史を話し始めた。

 忍とは主君に対しての忠義を持つ者で、自分の身よりも主君を守るべき存在だと。

 決して表に出ず、影に潜みながら活動する者たち。

 いろいろと話しながら、ハンゾウは誰かに聞いてもらいたかったのかと気付く。

 国を侵略されて、戦うことさえできずに無様に逃げてきたことをハンゾウは今でも悔やんでいた。

 それが子供だったからとかは関係ない。

 優秀な忍だった父親から、若や半人前の者たちを集めて逃げるようにと命令された。

 そして一言「若様を必ず守れ」と……。

 その父親は自分たちを逃すためリリア聖国の侵略者たちと戦った。

 リリア聖国を里に引き込んだ前忍頭サンダユウと戦うことで、ハンゾウ達を安全に逃す最善の方法だった。

 その後、ハンゾウは忍頭となり若様に忠義を誓い、残ったヤマト大国の民を守り続けてきた。

 前忍頭サンダユウという戦犯者を出した忍一族。

 その汚された忍の名を払拭するかのように、ハンゾウは必至だった。

 守るべく若様にもコジロウと二人で外へ出ることを必死で止めた。

 だが、決意は固く最後には若様の気持ちを尊重する形で送り出した。


「ハンゾウさん、どうかしましたか?」


 遠くを見ているように感じたリゼが声をかける、リゼを見て冷静を装い返事をする。


「なんでもありません」


 と、一言だけ。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十一』

 『魔力:三十』

 『力:二十五』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十一』

 『魔力耐性:十六』

 『敏捷:百一』

 『回避:五十三』

 『魅力:二十四』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・購入した品を二倍の販売価格で売る。

  ただし、販売価格は金貨一枚以上とすること。期限:六十日

 ・報酬:観察眼の進化。慧眼(けいがん)習得


■サブクエスト

 ・瀕死の重傷を負う。期限:三年

 ・報酬:全ての能力値(一増加)


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加) 

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