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240話

 ――明朝。

 イズンが部屋の中にある扉の前で、なにか操作らしきことををしていた。

 いくつかのサークル(魔法陣)が発動されては消えていく。

 時間にして五分ほどで操作を終えると扉を開ける。

 その先にも別の扉がいくつかあり、そのうち一つの扉の前で同じような作業を続ける。

 それをその後も二回続けて、開けた扉の先の床には大きなサークル(魔法陣)があった。

 イズンの説明で、これでドヴォルク国の近くまで転移するようだ。

 ナングウはイズンに挨拶をすると、サークル(魔法陣)へと進む。


「ほら、行くぞ」


 カリスに促されて進むリゼ。

 緊張をしているのが、自分でも分かる。

 人生でサークル(魔法陣)に入るのは初めてだからだ。


「では、行こうかの」


 ナングウの合図でサークル(魔法陣)に入ると、暫くして景色が歪む。

 その歪みが元に戻ると別の景色へと変わった。

 周囲を見渡しているリゼを、物珍しそうにカリスが見る。

 リゼの初々しい反応を面白がっていた。


 この場所はドヴォルク国から少し離れた場所で、ごく一部のドワーフ族しか使用することが出来ない。

 ナングウが閉鎖されたこの場所から出るために、幾つかの印が付いた岩を不規則に触る。

 その度にサークル(魔法陣)が浮かび上がっていた。


「お待たせしたの」


 そう言うと同時に浮かんでいたサークル(魔法陣)に手を触れると、大きな岩が音を立てて移動する。

 かなり大きな音で地面も揺れていた。


「凄いじゃろう。この先にドヴォルク国があるので、少しだけ歩こうかの」


 いつもと変わらない飄々とするナングウの態度に、この先に危険がないのだと思いながらサークル(魔法陣)で転移してきた場所を出る。

 出るとナングウが先程と同じような作業を始めた。

 大きな岩をもう一度移動させるためのようだが、実際は大きな岩が何重にも重なっていく。

 魔法の力で、目の前で起きたことが可能なのかとリゼは驚愕する。


「これはフォークオリア法国でも無理じゃ。今となっては失われた魔法と言っても過言ではないじゃろう」


 得意気に話すナングウだったが、誰でも簡単に使用できるわけではないことは明白だった。

 権限に加えて、作業手順などもかなり複雑だ。

 とてもドワーフ族全員が使用可能とは感じず、ナングウやカリスが「世界中を旅している」と言っていたのは偽りで、実は世界の情報を収集するための極秘任務が与えられていたのではないか? とリゼは勝手に推測していた。


「さてさて、なにを話しながら歩こうかの」


 まるで近所を散歩するかのように軽い口調でナングウが笑顔で話しかけてきた。

 カリスはリゼの許可を貰って、短刀を触りながら歩いていた。


「リゼの属性はなんだ?」

「属性って、魔法属性のことですか?」

「それ以外にあるのか?」


 意地悪そうに話すカリス。


「闇属性です。一応、風属性と水属性もあるそうですが実質、闇属性のみと言われました」

「ほぉ~、それは珍しいな。風属性があるから、多少は攻撃力も上がっただろう」

「どういうことですか?」

「そうか……なにも知らないのか」


 カリスはリゼに説明を始めた。

 自分が製作した武具には、製作途中に属性を付与しているそうだ。

 これはドワーフ族でも限られた者しか出来ない。

 使用者が武具と同じ属性を持っていれば、武具の能力を引き上げることが出来る。

 俗に”レア”と言われている武具になる。

 迷宮(ダンジョン)で発見される以外では、ドワーフ族が製作した武具しかない。

 他にも”エピック”や”ユニーク”なども数こそ少ないが、ドワーフ族でも稀に製作されることがある。

 ただし、”レジェンダリー”だけは別だ。

 偶然、製作できることもあるがドワーフ族でも事例は少なく、ドヴォルク国で丁重に祀られている。

 ドワーフ族であれば、誰もが目標にしている貴重な武具らしい。

 迷宮(ダンジョン)でも見つかることはあるが、その数は少ない。

 希少なレジェンダリーの武具は、ドヴォルク国同様に国が厳重に管理保管していた。

 なによりも噂では資格のない者が触れても重くて動かすことが出来ず、何度も触れると命を落とすとまで言われている。


(ん?)


 カリスの話を聞きながら、リゼは首を傾げる。

 今の説明を疑問に感じたからだ。 

 レジェンダリーの武具は重くて動かせないのであれば、まず資格があるかを判別した後に、レジェンダリーの武具を保管場所まで運ぶ必要がある。

 運び終わった者は、その後どうなったのか?

 そもそも、本当に動かせないほど重いのか?

 実際は怪力自慢の者たち数人で運べるのではないか?

 と、リゼは考えていたが、カリスも実際のところは知らないのかも知れないと思い、口に出すのを止めた。


「冒険者が武具を選ぶんじゃなくて、武具が使用者を選ぶと、私は思っている」


 話を終えようとしていたカリスが、リゼの短刀を見ながら呟いた。

 このカリスの言葉はドワーフ族を含めて、武具を製作する職人たちの多くが思っていることなのだと、なんとなく感じた。


「自分に合う武器や防具と巡り合うのも、一流の冒険者の資質じゃからの」

「金にものを言わせて購入したとしても、武器や防具の性能を引き出すことは出来ないだろうからな」

「そういうことじゃ。武器を使うのは二流じゃ。なんでも武器や防具のせいにするのは三流じゃ。使いこなしてこそ一流というわけじゃ」

「まぁ、自分専用の武具の場合は別だけどな」


 ナングウの言葉には考えさせられた。

 武器を変えれば強くなれると、安易に考えていたことを恥じる。

 そして、短剣や防具は自分を選んでくれたのだと、少しだけ嬉しい気持ちになる。


「リゼにとって武器ってなんだ?」


 カリスの漠然とした質問に、リゼは即答できなかった。


「魔物を倒すための道具……命を預けられる大事な相棒?ですかね」


 道具という言葉が適切か悩んだが、それ以外の言葉が浮かんでこなかった。


「なるほど」


 この質問に正解などない。

 その答えに、道具でもあり相棒と答えたリゼ。

 カリスなりに満足いく回答だったのか、少しだけ笑みを浮かべていた。


「そういえば、リゼの職業ってなんだっけ?」

「忍です」


 リゼが答えると、ナングウとカリスが足を止める。


「それは本当か?」

「はい。盗賊から転職しました」

「転職……そうか」


 なにか言いたそうだったが、転職だと知ると少しだけ残念そうな表情になる。

 リゼには理由が分からなかったが、雰囲気的に聞いてはいけない気がしていた。


「まぁ、ハンゾウが聞いたら喜ぶだろうな」

「たしかに、そうじゃな」

「ハンゾウ?」

「あぁ、私たちと一緒に住んでいるハンゾウと言う男だ。あいつも忍だ」

「えっ!」


 同じ職業の人に会えることを知り驚くが、すぐに有意義な話を聞けるのではないかと期待する。

 歩きながらドヴォルク国について、いろいろと教えてくれた。

 ドワーフの国ということくらいしか知識のないリゼにとっては、とても有難いことだった。



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十一』

 『魔力:三十』

 『力:二十五』

 『防御:二十』

 『魔法力:二十一』

 『魔力耐性:十六』

 『敏捷:百一』

 『回避:五十三』

 『魅力:二十四』

 『運:五十八』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト

 ・購入した品を二倍の販売価格で売る。

  ただし、販売価格は金貨一枚以上とすること。期限:六十日

 ・報酬:観察眼の進化。慧眼(けいがん)習得


■サブクエスト

 ・瀕死の重傷を負う。期限:三年

 ・報酬:全ての能力値(一増加)


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加) 


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