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第35話 地下シェルター?何でそんな物があるんだ?

お楽しみください

「“前原”は今回の任務(ミッション)依頼人(クライアント)なの」

「………………で?」

「で?と言われても……(もう少し驚くと思ったんだけど)」


 そんなことを言われても「だから?」と言う話である。

 この世界に前原姓がどのぐらい居ると思っているんだ?ただ同姓なだけかもしれないだろうが。同姓だとしてもこのタイミングは不自然だがな。


「大体、前原だけじゃ何とも言えないだろうが。フルネームが同じで、住所が同じならともかく」

「良祐、とても苦しい」

「あ、ごめんごめん」


 無意識の内に近くに居たアーティにチョークスリーパーホールド掛けてた。全く気付かなかったぞ。


「そんな焦っても仕方が無い。落ち着く」


 湊の前だからか、とてつもなく変な喋り方のアーティがそう指摘してきた。

 えっ?俺、焦ってた?ふと手の平を見ると、尋常じゃない汗が吹き出ている。

 俺は現実から逃避していたのだ。前原の名前を聞いた瞬間に分かってしまったから。


「フルネームは……」


 厳しい表情で俺を見る湊は、追い討ちを掛けるかのごとく言い放った。


「“前原良太郎(まえばらりょうたろう)”」

「っ……!」


 間違いない。親父の名前だ。的中してしまった。

 もちろん同姓同名の可能性も捨てきれないが、鬱陶しい位に頭がそれは違うと訴えているようだった。それはきっと、香澄さんの「前原良祐という男が鍵を握っている」という言葉のせいだろう。んで次は親父か。どういう事だよ!まったく!


 湊は何も言わずに俺を見ていた。その瞳には困惑の表情が見て取れる。彼女自身、依頼人(クライアント)の名前ぐらいしか聞かされてなかったのだろう。仕事現場でゾンビが発生して、そして依頼人(クライアント)の関係者と出会うなんて思っても見なかっただろうしな。


「この話は止めよう。これ以上進展もしなさそうだし」


 湊は力無く首肯する。アーティだけが、何かを感じ取っていた。





 翌日、8月6日。午前7時24分。

 家電量販店で一夜を明かした俺たちは、湊たちの軍用車両(ハンヴィー)と俺の乗用車(パッソ)でビル街を走っていた。

 ハンヴィーにランド、クルス、マーシャさん。パッソに俺とアーティと湊という乗り合わせだ。湊は俺とアーティの護衛とか。


 次の目的地は地下シェルター。湊たちの目的地なんだが、ショッピングモールの途中にあるから俺たちも同行させて貰っている。直前に聞かされるまで、俺はその存在すら知らなかった場所だ。

 地下シェルターとは言うが、名ばかりの、実際は違う目的で作られた場所らしい。ちなみに湊に、何で関係ない俺にそこまで教えてくれるのか聞いてみたが教えてくれなかった。よう分からん。


「何でその……地下シェルターとやらに行くんだ?」


 助手席に座った湊に問いかける。地図を見ながら四苦八苦していた湊の代わりに、(湊が持っていた)通信機越しにマーシャさんが返答してくれた。


『地下シェルターと言っても実際は研究所みたいなものよ。そこに目的のサンプル(ターゲット)があるらしいの』


 外人組で唯一、日本語をペラペラ喋れるマーシャさんは、そう回答した。

 どうやら、シェルターは市民を収容するモノじゃなく、研究所を存続させる為のモノだったようだ。


『マア、多分誰モ居ナイダロウケドナ』


 と言ったのはランドさんだろう。まだ聞き分けられない。

 クルスさんは銃器のメンテしているのか、カチャカチャいうだけで何も言葉を発さない。

 言葉を発さないと言えばアーティもだ。日付が変わってから一言も話さなくなった。後部座席に乗る今も、何にも言わない。


「(あの子はどうしたの?)」

「(さあ?分からない)」


 心配した湊が小声で聞いてくるが、俺にもさっぱり分からない。

 ――――やっぱりアーティは不思議だ。服を着たがらないし。

 そんな中、先導するハンヴィーが右に曲がったので、俺も同様に右に曲がる。


『ソロソロ着クゾ』


 ランドさんの言葉の通り、辺りの雰囲気が変わっていくのが分かる。

 どこかの路地で(ハンヴィー)を止めたのを見て、後ろにつける様にパッソを駐車させた。


(リョー)はどうする?」

「そうだな……」


 湊が車を降りて、そう問いかけた。俺としては行きたい所だが、アーティのこともあるし……。だが、アーティは早々に車から降りると、


「行かないの?」


 と無表情に言った。どうやら心配ないらしい。


「んじゃ、行く」


 湊の首肯を見届け、諸装備を整える。

 サブにUSP、S&W M37、近接用に短刀(ドス)、メインにX−7だな。

 USPをレッグホルスターに保持。S&W M37を弾薬ポーチのガンホルダーに保持。短刀をベルトに挿し、X−7を持つ。


「中々様になってるじゃん」

「そりゃどうも」


 出来れば普通の高校生でいたかったよ。そんな言葉を胸にしまって、俺はエンジンを切った。外に出て、車に鍵を掛ける。


「オレたちから離れるな」

「分かっとうわ」


 イングラム(昨日聞いた)を両手に持った湊が、続々と歩いていく傭兵集団の後に続くように歩いていった。俺はアーティを連れ、またその後を追う。どこかのビルの裏口で立ち止まったみんなは、特殊部隊の突入の様に陣取り、指で合図をしていた。


 ここが地下シェルターの入り口か?俺はやる事が無くて、辺りを索敵するがゾンビは居ないようだ。

 キイィという音と共に開かれた扉に全員が突入したのを確認して、俺とアーティはその中に足を踏み入れた。





 建物の中は薄暗く、ある物と言えば下に降りる階段が一つ、それだけだった。

 その階段はかなり深い所まであり、目を凝らさないと最下段が見えないぐらいだ。

 もうすでに先に行くみんなを追って、俺たちも階段を降りて行く。


「良祐、そこ気をつけて」

「えっ?っとと!?」


 アーティの声に気を取られ、段に踏み下ろした足が滑ってしまう。

 何とか持ち直し、足元に視線を向けた。そこには、


「血?」


 少量ながらも血液――――それも凝固してない様子から見て、まだ時間が経ってないものがあった。

 何でこんなものが?その思考は先を促すアーティに遮られてしまう。


「怖気づいた?」


 先行する湊が馬鹿にした様な声音で言った。

 それは心外だ。俺はよっぽどの事じゃないと怖気づかないぞ。


「大丈夫だ。問題無い」

「そう」

「なら結構」


 エ○シャダイネタを持ってきたが、アーティも湊も分からなかったようだ。

 ああ〜。ツッコミが恋しい。泣けてきた。


 しょうがないからボケも無しでさっさと歩く。下に降りるにつれ、不気味な雰囲気が漂ってきた。

 最下段まで降りた所で、大きな隔壁(かくへき)の前で何かやっているクルスさんが見えた。手元にはダイナマイトを持っている。


「場合によってはダイナマイトの方が役に立つ事もあるから」


 説明キャラが定着しつつある湊が説明してくれた。

 どうやら隔壁を爆破するらしい。おいおい、どんだけよ。…………ゾンビが寄ってくるんじゃね?


「ここの防音は完璧と資料に書いてあったから」


 毎回毎回ありがとう湊。ていうか俺のモノローグが何故分かった?


「顔」


 なるほど、それでか。………………理奈と早織かっ!!

 頼むから顔でモノローグを読まないでくれ。


「そろそろ物陰に隠れて」

「お、おう……」


 いきなり仕事モードになった湊が、俺とアーティを物陰に連れて行く。俺一人アウェーみたいじゃないか。(みたいじゃなくてアウェーです)………………度々俺のモノローグに介入している奴がいる気がする。


 そんな事を考えていると、突然爆発音が響いた。終わったらしい。

 湊の後について、隔壁の前に進んだ。大して頑強じゃなかった隔壁は完全に穴が開き、奥まで綺麗に()()()()。――――そう、()()()()

 穴の向こうには、学校の体育館顔負けの広大な空間が広がっていたのだ。

いかがでしたでしょうか?

段々おかしな事になって行ってる気がします。

地下シェルター、深まる謎!ここには一体何がある?

御意見御感想をお待ちしています!


そして明日、8月1日は新作の投稿日です!

是非ご覧下さい。

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