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会の観賞会 5

「ん?」


電話か? 誰だろう


「マスターの股間が震えておられる! なれば我はただ待つだけ」


「いや、電話だから……げ!」


携帯を取り出し、液晶を見た俺は戦慄する


666。悪魔の数字


「ね、姉ちゃん?」


滅多に連絡してこないあの姉が、何故


「……大丈夫?」


立ち尽くす俺へ、柚子が心配そうに声をかけた


「だ、大丈夫」


どうせ買い物の命令かなんかだろう。俺はそっと携帯をポケットへ戻して


ブルル、ブルルル、ブルルルルル(怒)


出ろ、出なければコロす。コロコロするわよ


聞こえる筈のない声が、バイブ音と重なって聞こえてくる


「はい、もしもし恭介です!」


慌てて電話に出て、直立不動。ただのコールですら俺を怯えさせるとは……。さすが冥界の王


《アンタまだ外うろついてんの?》


姉ちゃんの声に怒りはなく、どちらかと言えば呆れているような響きがあった


「あ、うん。秋姉のインタビュー、なかなか録画してる奴がいなくてさ」


真田先輩とこにメール送ってみるかな


《あたしが録画してるわよ》


「ふーん、姉ちゃんが録画してるんだ」


そうか、そうか。録画、録画っと……


「録画!?」


《ええ。貸してあげるから見たいなら見れば?》


「だけどさっき録ってないって!」


《う、うるさいわね、ちょっと勿体ぶっただけよ。姉ちゃんのサプライズでしょうが》


「そっか! ありがとう、最高のサプライズだよ!」


《え、ええ。ま、そういう事だから。とっとと帰って来なさい》


「分かった、すぐ帰る! 本当にありがとう姉ちゃん。大好きやー」


《こら、調子にのるんじゃないわよ。まったく》


仕方のない奴ねと珍しく優しげに言い、姉ちゃんは電話を切った


「……姉ちゃん」


冥界王だなんて酷い事を言ってごめん。これからは大魔王ぐらいにするよ


しかし家にあったとは。やはり青い鳥は側にいたと言う事か。なら飛び立ってしまう前に帰ろう


「……諸君」


俺をいぶかしげに見ていた鈴花達へ向き直り、渋い声で呼び掛ける


「はっ!」


「なんでしょう」


「……なに? マスター」


「私の姉が君達の望む物を用意してくれた」


「そ、それは一体」


「輝くトラペゾヘドロン。そうですね?」


違います


「……秋様の映像。そうでしょう、マスター」


鈴花の声が震える。冷静を装っているが、その緊張は隠せていない


「そうだ」


答えると、鈴花の顔がほころんだ。赤田は泡を吹き、新谷はよろける


「ルルイエ……。そういう事か」


どういう事だよ


「とにかく映像は俺の家にある。往くぞみんな」


「はっ!」


「ええ!」


いざ、進軍だ!


「恭にぃ……」


盛り上がる俺達とは対称的に、柚子が沈んだ顔をしていた


「柚子、マスターには果たさねばならない宿命があるんだ。見送ってあげよう」


「……はい」


目を潤ませて、


「バイバイ、恭にぃ。またね」


にこ。って


「や、やっぱ俺、5時まで遊んでこー」


お前らも遊んでやれや! 魂で訴えると、鈴花は渋々頷いた


「童女と遊ばれになるのですか? マスターのお心、海より深しぃいい!!」


「はいはい。ほれ柚子、俺を部屋に案内せい」


「……無理はしないでいいよ」


「してないって。秋姉のインタビューは気になるが、柚子と遊ぶのも楽しい」


いつか雪葉を連れて来てやろう。二人とも大人しいし気が合いそうだ


「ま、そんな感じだから。遊ぼうぜ、柚子」


「……うん! じゃあ早く部屋にいこ」


手を繋がれ引っ張られていく俺へ、鈴花は変態を見るような視線を送って下さった


「お、お前らも来い!」


みんなでゲームだ!



さて、それから柚子の部屋でレースゲームをやり、あっという間に5時となる。新谷と柚子は、これから家庭教師と勉強しないといけないらしく、俺達はおいとまする事になった


「僕も秋様のインタビューを拝見したかったのですが、仕方ありません」


「今度持ってきてやるよ」


10万円でも買ってくれそうだ


「また遊びに来てくれる?」


「ああ」


「きっとだよ? すぐにだよ?」


「あ、ああ」


「聖なる者として恭にぃをマークしないといけないんだからね」


むんっと気合いを入れて、バイバイと小さく手を振る柚子。それに微笑みかけ、俺達は最後の旅へと出た


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