夏の海 5
「じゃあはい、ラムネ代の600億」
一本150円のラムネを4本買い、綾さんの手にお金を渡す
「わぁ、駄菓子ジョークですね! 誰かが使う所初めて見ました、ありがとうございます!」
何故か喜ばれてしまった
「それでは皆さんにラムネをお渡しして来ますね」
「あ、俺も行きます。綾さん、クーラーボックス持ちますよ」
思ったより長話になってしまって、綾さんに負担を掛けてしまった
「ううん、大丈夫です。これも鍛練みたいなものですから。お心づかい、ありがとうございます」
綾さんは俺へ大人っぽい微笑みを見せた後、よいしょと海の家に向かって歩き出した。俺も自分のクーラーボックスを担いで後を追う。……それにしても
「うむ〜」
エロが無い時の、あの落ち着いた雰囲気はやはり同い年とは思えん……。24歳ぐらい?
「処女ですけどね」
「何いきなり!?」
「え? 何がですか?」
綾さんは振り向き、キョトンとした顔で俺を見つめたって、
「いやいやいや、俺がキョトンですよ! 何いきなりとんでもない事、口走ってるんですか!」
「あれ? この女のケツは、遊び慣れてる24歳女(OL)の熟れたケツだぜグヘヘって視線を感じたのですが……」
「貴女のシックス・センスはぶっ壊れてる!」
すごい勘だけど!
「う〜ん、怒られちゃいましたね。佐藤君は処女嫌いっと」
「アホか!!」
「ん? お、兄貴。やっと来たのか、遅いぜ~」
俺の怒鳴り声を聞き、海の家の前から春菜が走り寄って来た
「こんにちは、春菜さん」
「お~綾ちんじゃん。綾ちんも泳ぎに来たの?」
あ、綾ちん? 年上の先輩に対してなんつーふざけた呼び方を……
「こら春」
「春菜さん。その呼び方は止めて下さい」
ほら、怒らせてしまったじゃないか! よし此処は俺の謝罪で……
「す、すみま」
「え? なんで? 呼び易いじゃん」
「呼び易いかも知れませんが、それだけでは相手に不快感を与えてしまう事もあります。相手を呼ぶ時は、相手の立場や状況を考えて、その方に相応しい呼び方をする事が大切です。例えば学校の担任の方には、〇〇先生と。部活の先輩には〇〇先輩と言った風に」
「ええ、その通りです」
たまには良いことを言うな、この人
「ですから、私を綾ちんなどと呼ぶのは止めて下さい。失礼です」
「うんうん、そうだ」
呼ぶのなら綾先輩、または徳永さんとかそう言う呼び方を……
「仮にも私は女です。ですので今後は綾ちんでは無く綾まんと」
「き~さ~ま~!」
綾さんの頬にアイアンクロー!
「きゅー!?」
「変な事、言わないで、下さい、ねっ!」
「ひぅ、ひぅ!」
「よし!」
コクコクと頷く綾さんを解放
「うぅー、ほっぺ痛いです……。なんだか調教された気分」
「あんまり綾まんをイジメるなよな、兄貴」
「本当に呼ぶな!」
「な、何怒ってんだよ。そんな事より早く中入ろうぜ。夏姉が昼飯奢ってくれるってさ」
「夏紀姉ちゃんが? 珍しいな」
雨でも降るか?
「春菜さん。ラムネをどうぞ」
「お、サンキュー、綾まん」
「だから呼ぶなって!」
まったくもう!




