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October 16th, 2131 東部標準時(UTC-5) 3:53am
車内を小刻みに揺らし続ける履帯の連続音と、やたら喧しいエンジン音は、《046号車》と呼ばれる回収車両が順調に帰還の途に就いている証しだった。
その狭い車内 ―― 頭をぶつけるほど低い天井に幅2mあるかないかの空間を照らすのは、6基の紅暗い非常灯と小さな光源が1つだけ。
それらは、寝台の上に横たわる男性と、傍らで細巻き煙草を弄ぶ女性の陰影を不確かに浮かび上がらせていた。
男は彫像であるかの様に身じろぎしないが、数分に一回の頻度で毛布を浅く上下させ、死体でないことを控えめに主張し続けている。
女は視線定かでないまま、肉感的な厚めの唇に煙草を咥えるという仕草を繰り返し、その度に整いすぎた美貌が闇へと浮かび上がる。
強い倦怠感を宿した瞳に、憂いを浮かべた表情――それは彼女を知る者が見れば驚くほど、普段と全く違った印象を抱かせるものだった。
『本当によろしかったのでしょうか?』
車内スピーカーから、喫煙のタイミングを充分見計らった男性の声。
「ええ……いい演技だったわ。眠り姫は再び目覚めることがあってはならない」
「指示通り、彼女はシカゴ支部の電波暗室で保管後、アンカレッジの《総研》に移送よ」
騒音の中、心情を感じさせない女性の声が響く。
「それと《SVR》の改竄は、僅かな痕跡も残さぬよう念入りに……」
『承知いたしました』
それっきりスピーカーの声は途絶え、代わりに溜息のような呟きが漏れる。
「《魅入られし者》……〈F-241673〉……ジョナサン・E・トラヴィス」
「彼の者へと与えられる祝福は、同時に呪いでもある」
「貴方を襲った《上位種》……彼は本当に執念深いわ。要請した空爆でキッチリ消えてくれれば良いけど……」
「それに《公社》に潜入しているアチラ側のモノ達……彼らは今後どう出るかしら?」
女性は紫煙をゆっくり吐き出した後、男の貌に近づき囁いた。
「ジョン、貴方の闘争は終わらない」
STEEL!! KISS Chapter 1
“Detailed report of the battle on October 15, 2131 AD” 完
See you next in Chapter 2.




