生きるだけでもサバイバル

朝目を覚ましたら熊になっていた。

え？なんで？って思ったが、まぁ熊になっていたお陰で、前世で孤独死した俺はまだまだ生きられるんだと嬉しくなる。

なんて思ったけど、野生動物で生きるのがこんなに辛いなんて思いもしなかった。

生きるだけでもサバイバルじゃないか。

食い物を求めて山の中を１日中彷徨いても、餌にありつけないなんて日がざら。

やっと餌を見つけたなんて思っても、自分より身体の大きな成獣の熊に横取りされたり追い払われたりする。

腹を空かせて山を彷徨いていたら食い物の匂いが、山の奥に延びる獣道の方から漂って来た。

木々の影から獣道の方を見る。

５〜６人の人間たちが獣道の脇に野菜や果実をばら撒いていた。

「此処に餌を置いておけば熊も里に下りて来ないでしょ」

「ああ、山に餌が無いから熊が里に下りてくるんだ、餌が沢山あれば下りてこないだろう」

「「「そうだ、そうだ」」」

なんて事を喋っている。

あ、彼奴等、熊駆除反対派か。

前世が人間だと喋っている言葉が分かるから便利だよな。

食い物をばら撒いた人間たちが引き返して行くのを横目で見ながら、ばら撒かれた野菜や果実を食い漁る。

ばら撒かれた食い物を全部頂いたけど、足りない。

だから俺はばら撒かれた食い物を前菜だと思うことにして、メインデッシュの肉を頂こうと獣道を下りて行く人間たちに襲いかかった。