願い
それまで旅行らしい旅行をしてなかったのは意外だったね
(私はずっと待ち望んでたのよ)
「旅行?」
「うん、GW休みなんでしょ? 来年、俺も働き出したら休みが合うかわからないじゃない?」
「確かに。私が不定休だからね。あ、新婚旅行はちゃんと考慮してくれるから大丈夫だって」
「それもそろそろ考えないといけないね。俺が落ち着いてからだと来年行けるか怪しいしね」
「う〜ん、新婚旅行は慌てなくてもいいかな?」
「そうなの? なっちゃんのことだから早く〜とか言いそうなのに」
(小さい子供みたいじゃない)
そんなとこもあるでしょ?
(も〜)
ほらね
「で、どこか行きたいところある? 大学時代いろいろ旅行してたんでしょ?」
「基本は街歩きだったから泊りがけでってのは年に数回だったよ。でもせっかくだから旅行です! みたいな感じにしたいな」
「定番みたいな?」
「うん、例えば網走刑務所とか五稜郭とか」
「え? 北海道行きたいの?」
「例えばの話。嵐山とか大仏とか」
「京都、奈良ね」
「京都大原三千院ね」
「恋に疲れたの?」
「全然! 足りないくらい! 仕事で疲れても恋に疲れはありません! 明日は休み! 仕事なし! 早起きもしなくていいのよ」
「本当に疲れてない? なっちゃんの言葉にリズムを感じるのは俺だけかな?」
「うん? そうじゃない?」
「そっか、俺が疲れてるんだね」
「そ? じゃあ、はい」
「はい? まさかの膝枕?」
「うん、癒してあげるからこちらへどうぞ」
「じゃあ遠慮なく、よいしょっと」
「ちょっとはるくん。おやじくさくなるからよいしょっはやめようよ」
「あ〜、柔らかい。肌もスベスベ」
「こらっ、なにげにスカート捲り上げて素肌に寝転がらないの。えっち」
「あれ? ダメだった? こっちの方が気持ちいいもん」
「ふふふ。そう言ってくれるのはうれしいんだけどね、こっち向いちゃうとスカートの中まで見えちゃうでしょ」
「まあ、いまさらじゃない? どっちみち気持ちいいから寝ちゃいそうだし」
「仕方ないのでオプションで頭なでなでもつけてあげるよ」
「ん? ここは極楽だったみたい」
「千種区よ」
「あ〜、名東区に極楽ってところがあったってローカルな話題だね。じゃあ旅行は極楽?」
「ちなみに京都にも極楽町ってあるの知ってる?」
「じゃあ京都?」
「名東区はないけど京都はありだね。じゃあ明日本屋さんにでも行こうか?」
「了解、早起きしないからお昼からね」
「うん! じゃあさっそくお風呂入らなきゃ。一緒に入る?」
「それは遠慮しておきます」
「照れ屋さんなんだから」
♢♢♢♢♢
「ん〜? 今からだと新幹線も飛行機も予約いっぱいだろうね」
「もう1週間前だからね、ホテルだって厳しいよ」
「そこは最悪、インター付近のホテルで探すとか?」
「最悪ね? あくまでも最終手段だからね?」
「高速も混むだろうし、どうする?」
「じゃあさ、下道で京都あたりは? 夜中に出れば朝には現地に着いてるよ」
「京都か〜、うん。そうしよう。旅館はやっぱり厳しそうだけど会社の人にも相談してみるよ」
「そこはなっちゃんコネクションだね」
「任せといて! カップルに評判のいいホテル探しておくから!」
「それ、普通の旅館かな?」
♢♢♢♢♢
「ねぇ、高速じゃないんだよね?」
「今は違うよ。元々は高速だったんだけど無料化されたんだって。信号もないから快適でしょ?」
「だからってスピード出しすぎないようにね?」
「わかってるよ。スピードは控え目に、休憩は適度に」
「はい、よろしい」
(休憩は大事なのよ?)
気分が良いと忘れちゃうんだよね
「ふんふふ ふんふふ ふんふふ ふんふ〜」
「なっちゃんご機嫌だね」
「ふふ〜ん。鼻歌まで歌っちゃった」
「それってローカルCMのテーマソングでしょ?」
「そう! よく知ってるね」
「うん、たしか京都に行こうってやつね」
「うん?」
「僕たちが行くのは?」
「……奈良だね」
旅館が取れなかったんだよね
(うん、インター付近のホテルでもよかったのに)
「だね。鹿に体当たりされないようにね」
「セントくんに会うんだもん」
♢♢♢♢♢
「着いた〜」
「はるくん運転お疲れ様」
「全然大丈夫だよ。で、1番来たかったのが春日大社なの?」
「うん。正確には末社の夫婦大國社だけどね」
「夫婦?」
「縁結びと夫婦円満の神徳があるんだって」
「縁結びはいまさらだし夫婦円満はまだ少し早くない?」
「も〜! そういうこと言わないの! ほらほら! 早くお参りに行くよ」
「慌てなくてもまだ時間大丈夫だから」
「しゃもじ?」
「うん、これに願いを書くと叶えてくれるんだって。2人で書かない?」
「いいよ。夫婦円満?」
「う〜ん? それは願う必要ないかな?」
「かもね。じゃあ家内安全とか?」
「ありきたりじゃない? え〜っとね……、あっ! 一姫二太郎は?」
「言わんとすることはわかるけどお願いとしてはどうなの?」
「いいんじゃない? 子供は2人欲しいし。最初は女の子がいいもん」
「あ〜、確かにはじめは女の子の方が育てやすいって言うね」
「でしょ? 大きくなったら恋バナするのが夢なの」
「それは楽しみだね。俺は混ぜてくれないの?」
「女の子だけの秘密よ」
「ぜひ2人目は男の子をお願いします。じゃないと俺だけ仲間外れになっちゃう」
「娘カップルと息子カップルとでトリプルデートとかしたいね」
「それ、絶対嫌がられると思うよ」
「小さい頃から擦り込んでおけば大丈夫よ」
「洗脳しないでよ?」
「違うもん。認識の共有だもん」
「まあ、そういうことにしておこうね」
♢♢♢♢♢
「お待たせ」
「いや、待ってないよって。一緒に部屋出ればよかったんじゃない?」
「デート感が欲しかったのよ」
「そっか。じゃあしょうがないね」
「そういうこと。さて、何食べようか?」
「えっ? さっき晩ご飯食べたばかりだよ?」
「せっかく来たんだから食べ歩きしなきゃ! みたいな?」
「みたいなって」
「あっ! はるくん。ジェラート! 鹿が乗ったジェラートがあるよ」
「鹿だね。これくらいなら食べれるかな」
「違うの選んでシェアしようね」
あなたはラズベリーとレモンを頼み
(きみは抹茶とミルクを頼んだ)




