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あなたがいたから  作者: yuzuhiro
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運命歯車

「秋穂!」


 懐かしいなぁ。


 秋穂は制服姿の彼女を思い出していた。


 短いスカート、リボンを緩めて谷間が見えるくらい開けたブラウス。男を意識してますと言わんばかりの彼女に何度呆れたことか。


「久しぶりだね祐美。相変わらず……派手ね」


 短大を卒業した彼女は春からデパートの化粧品売り場で働いている。天職なのでは? と思うくらいイキイキとしている。


「派手? こんなのナチュラルメイクだよ? 先輩達なんてバッチリメイクだからね。秋穂だってメイク覚えたいんでしょ? 仕事にしたいなら私なんかで派手なんて言ってちゃだめだよ」


「方向性の違いだと思うけどね。とりあえずご飯行こうよ」


 美容師としては職場で日々成長を感じられているが、メイクアップアーティストとしてはまだまだ素人同然だった。

 そこで彼女が化粧品売り場で働き出したことをSNSの投稿で知った秋穂は久しぶりに連絡を取ることにした。


「にしても久しぶりだよね。卒業式以来?」


「そうだね。働き出してからは特に忙しくなったし、みんなと休み合わないからね」


「ウチらの仕事は土日休みじゃないからね。早いとこ男捕まえて結婚したいわ」


「あれ? SNSの写真の人、彼氏じゃないの?」


「うん? どれのことだろ? とりあえず今はフリーだよ。秋穂はどうなの? 高校のときはいたよね?」


「春斗?」


「いや、古川くんの後」


「あんなのとっくに終わってるよ。いまは春斗を待たしてる状態」


「何、あんたら元サヤ? まあ古川くんは……違うか。2人ともラブラブだったもんね。別れたときはびっくりしたもん」


 別れた、ね。


「まあ、ね。春斗には私しかいないからね」


「あはははは、言うね秋穂。どちらかと言うとあんたの方がゾッコンだった気がするけど?」


「そ、そんなことないわよ。今だって春斗が私に会いたがってるくらいだし」


「連絡取り合ってるんだ。そういえばあんたら幼馴染同士だったね。簡単に離れられない運命ってやつだね」


 運命? そうか。私達は幼馴染だから別れられない運命なんだ。じゃあ、仕方ないよね?


「そうだね。祐美も早くいい人見つけないとね」


「リア充爆発しろ!」


 おかしそうに笑う祐美に秋穂もつられて笑い出した。


「運命からは逃れられないよね。私も。春斗も!」


 ♢♢♢♢♢


「どうだった?」


「ちょうどインターンシップの募集してるみたい」


(きみはやりたいことを見つけて動きだしたね)


 決めたらそれに向かって動くだけだからね


「ネットで応募できるんだよね?」


「うん、とりあえず1週間ってのがあるからそれに応募してみるよ」


「吉乃建設なら近くだからそのまま卒業までアルバイトさせてもらえるといいのにね」


「そういうのもあるの?」


「あるみたいだよ。逆にアルバイトから正社員になる人だっているくらいだもん」


「まあ、確かにね。そう言えばこの前、伊藤さんに話しかけられたよ」


「伊藤さん?」


「ほら、なっちゃんと同じサークルで俺と同じゼミの人」


「はるくんって興味ない人にはとことん興味ないよね。美樹ちゃんは内藤さんだからね」


(興味もたなくていいんだけどね?)


 間違っててよかったってことだね


(それはどうなのかな〜)


「で、そのナイトさんがね」


「美樹ちゃんは誰か守れるほど強くないよ?」


「話の腰折らないでよ」


「え〜、私が悪いの?」


「まあ、いいや。なっちゃんに会いたがってたよってだけのことだから」


「それだけ?」


「それだけ? うん、それだけ」


「他に何も話さなかったの? 一緒にご飯行かないとか、飲みに行かないとか」


「ないよ」


「本当に?」


「就活の話を少ししただけ。と言っても何も決まってない時だったから実際は話してないようなものだけどね」


(ホッとしていいのか、かわいそうになってくるのよね)


 仲良くした方が良かった?


(もぅ、いぢわる)


 変に仲良くするとヤキモチやくでしょ?


(うぅ〜、何も言い返せないじゃない)


「社会人のはるくんか〜、あっ、スーツ! はるくんスーツは?」


「持ってるよ」


「入学式の時の以外にだよ?」


「ああ。それだとないね」


「リクルートスーツ買いに行かなきゃ!」


「そうだね」


「……なんとなく温度差を感じるんだけど、私の気のせいかな?」


「まだ早くない?」


「早くありません! 今度の私の休みの時に買いに行かなきゃね」


「あ〜、そうだね」


「ね!」


「任せましたよ」


「はい、任されましたよ」


 ♢♢♢♢♢


「スーツなんてどれも同じじゃない?」


「もう、まだ10着しか着てないじゃない。働き出したら3着は必要だからね?」


「まだ就活前だし入学式の時のがあるから1着買えばいいでしょ?」


「え〜!」


「えっ? なっちゃん気が早いって。体型変わるかもしれないし必要最小限でいいから」


「私の楽しみを奪うのね」


「大袈裟だよ」


「じゃ、じゃあネクタイ。ネクタイは私に選ばせてよ。体型関係ないし何本か必要でしょ?」


「慌てん坊だなぁ。まあ、なっちゃんのセンスに任せるよ。俺より俺に詳しいもんね」


「はるくん検定1級だからね」


 ♢♢♢♢♢


「インターンの日程が決まったよ」


「いつ?」


「夏休みだね。8月の一週目」


 動き始めた運命の歯車は微妙に噛み合いながら動き出していく。


 あなたも彼女も彼も。


 もちろん僕もね。


 春が過ぎ (夏がくる)


 秋を巡り (冬に備える)


「はるくんの就職が決まったら式の準備しなきゃね!」

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