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あなたがいたから  作者: yuzuhiro
31/46

変わるもの変わらないもの

「はるくん、おかしいところない?」


 春になってあなたは一足早く社会人になったね


(ピカピカの一年生よ)


 年齢バレるよ?


(年の話はだめよね?)


 だね


「ん。いつもよりも落ち着いて見えるね。大丈夫、今日も綺麗だよ」


「あっ! もう、違うでしょ。綺麗とかじゃなくってね? もう……ありがとう」


「おかしいところなんてないよ。落ち着いた雰囲気だよ」


(初々しさも欲しいけど落ち着きも欲しいのよね)


 贅沢だね


(あら、女性って全部欲しがるのよ?)


 欲張りなんだ


(学習したでしょ? いろいろと)


 だね


 ♢♢♢♢♢


『春斗?』


「……秋穂か」


 彼女の連絡先はすでに削除してあったんだ


(そうだよね)


 でも、電話をかけてきたのは彼女だとしか思えなかったよ


(うん)


『そう! お姉ちゃんに連絡先教えてもらったんだ』


「教えて()()()()ね」


『春斗、番号もアカウントも変えてるから電話もSNSも繋がらないんだもん。苦労したんだよ?』


「用件はなんだ?」


『用件? そろそろ私が恋しくなってきたんじゃないかなって思ってね。私も悪いことしちゃったかなって思ってたんだよ?』


「そうか。もうどうでもいいから忘れてくれていい。恋しくなることも会いたいと思うこともない」


『そんな強がらなくてもいいんだよ? そうだ! 私ね。就職したんだよ! だからね、週末会いに行ってあげるよ』


 はっきりと伝えたかったんだ


(終わってるって?)


「くる必要はない。と、言うかこないでくれ。お前とは2度と会うつもりはない」


『は? 何言ってるの? 彼女と会いたくないって———』


「お前とはとっくに終わってるだろう。それを選択したのはお前だ。現状はなっちゃんから聞いてる。戻りたいところがあるなら冬馬のところにでも戻れよ」


「へぇ? 春斗までお姉ちゃんなんだ。みんなしてお姉ちゃんお姉ちゃんって。いつもいつも私が欲しいものを奪っていく!』


(小さい頃から我慢してたみたい)


 あなたと比較されてきたんだね


「自分で手放したんじゃないか。なっちゃんのせいじゃない」


『春斗だって、私を守ってくれなかったじゃない! 私ね襲われたんだよ? 冬馬くんに襲われて! 写真撮られて! 脅されて! 春斗は全然助けてくれなかったじゃない! 私だけ悪いみたいに言わないでよ!』


「はっ? 襲われた? 何を言って———」


『春斗にわかるわけないよね? 私が悩んでたの、全然知らないよね? それなのに私だけが悪いの? ねぇ春斗、何か言ってよ』


「……そんな、なぜ今更そんなことを言うんだよ。脅されてたならなんで二股だったんだよ。何が本当のことかわからないよ!」


「はるくん?」


『私だって昔のことはどうでもいいわよ。いまさらなんともならないもん。だから春斗は反省して私のところに戻ってこればいいよ』


「反省?」


『そ、私を守れなかったこと。それで許してあげるよ。だから———』


「俺が守るべき人はお前じゃない。例えお前が言ってることが本当でも元に戻ることはない。冷たいと、最低と罵ってくれて構わない。お前とはもうこれっきりだ」


『何言ってるの? 私は怒ってないんだよ? だから安心して戻っておいでよ』


「俺の居場所はここなんだよ。なっちゃんの隣が俺の居場所だ。お前は自分の居場所を探せよ。じゃあな」


『春斗? ちょっとま———』


(困惑してたね)


 どこまでが本当でどこからが嘘なのか


(私達ではわからない)


「はるくん、大丈夫?」


「なっちゃん」


「教えてもらえる?」


 ♢♢♢♢♢


「おい今井。移動になったんだって?」


「そうなんすよ。4月から元町工場らしいっす」

 

「お〜、名古屋近くなって良かったな。お前どこも行くとこがないって嘆いてたもんな」


「波乗りするわけじゃないっすからね。乗るなら女の上っすね」


「お前、最低だな」


「自覚してるんで。まあ、それでも女に不自由してないのは人徳っすね」


「まあ、いいさ。本社も近くなるからあまり暴れるなよ」


「肝に命じときますよ」


 ♢♢♢♢♢


「許せない!」


「なっちゃん」


「確かに、どこまでが本当かわからないけど、冬馬くんの行動からすると十分に考えられる」


「そうだね」


「……はるくん」


「ん?」


「もし秋穂が言ってたことが本当だったら、はるくんは……」


「いまさら俺にはどうしようもできないよ」


「うん」


「いま、俺にできることをするよ」


「できること?」


「なっちゃんを大切にすること。それしかできないから」


 過去には戻れないから


(そうね)


「だから、心配しないでよ。俺はいつまでもなっちゃんと一緒にいるから」


「うん」


 ♢♢♢♢♢


「じゃあ行ってきます」


「はい、行ってらっしゃい」


「……どうしよう」


「何が?」


「行ってきますのチューができないの! 口紅が取れちゃう」


「あ〜、それは大変な悩みだね」


「あっ! 小バカにしてるでしょ?」


「してないから。はい、おいで」


「ふふふふ。よくわかってらっしゃる」


「スーツじゃないからシワにならないでしょ」


(いってらっしゃいのハグ)


 目で訴えてたよね?


(……よくわかってらっしゃる)


 あからさまだったよ?


「ご飯遅くなるけどごめんね?」


「俺も簡単なものくらいならできるよ?」


「本当は全部やりたいんだけど、様子みてから相談させてね」


「もちろん。少しは頼ってね」


「いつも頼りにしてますよ?」


「そう?」


「うん。じゃあ、行ってくるね」


「はい、いってらっしゃ、んっ!」


「んっ、はぁ〜。やっぱり我慢できなかった。どこかでこっそり塗り直します。じゃあね!」


「まったく」


 変わらないね


(変わらないよ)


 好きだから?


(愛してるからよ)

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