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あなたがいたから  作者: yuzuhiro
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因果応報

『お掛けになった電話番号は電波が届かないか、電源が入っていないためかかりません』


「なんで?」


 秋穂はスマホをベッドに投げつけて怒りを露わにした。ここ数日、冬馬と連絡が取れないことでフラストレーションがたまりヒステリックぎみになっていた。


「どういうことよ! 知らない間に実家からも居なくなってるし! なんで彼女に何も話さないのよ!」


 最後に会ってから一週間が経っていた。新入社員で社員寮暮らしだから、なかなか会えないのは覚悟していた。しかし、連絡がとれないのは冬馬自身の問題だ。


『社員寮の前で待ち伏せるしかないかな?』


 自室でそんなことを考えていると窓の外に見慣れた車が走り去るのが見えた。


「冬馬くん!」


 慌てて外に出てみたがすでに車は見当たらない。


「あら、秋穂ちゃん。冬馬のお見送りにきてくれたの? 研修後に配属先変わるなら初めから寮なんて入らなければ良かったのにね」


「そ、そうですよね」


 秋穂には初耳の話だった。

 3か月は研修期間だとは聞いていた。

 しかし、配属先が変わるという話はいまはじめて聞いた。


「おばさん。私うっかり配属先聞き忘れたんだけど、どこって言ってたっけ?」


「たしか愛知だったわよ」


「あ、そうか〜。()()()()()がいるから会いに行きやすいね」


 ♢♢♢♢♢


「ねぇ、はるくん」


「何? なっちゃん」


「たしかシャチ見に行こうって言ってたのって初夏だったよね?」


「たしか商店街の夏祭りより前だったね」


(夏祭り楽しかったよね)


 あなたの浴衣姿は綺麗だったよ


(あれ? 私、浴衣なんて着た?)


 花火の柄だったよね


(金魚じゃなかったかな?)


「なんで私コート着てるのかしらね?」


「似合うからじゃないかな?」


「あ、ほんと? えへへ、ありがとう。今日のために由季と買いに……って違うよ? いや、褒めてくれたことはありがとう。じゃなくてもっと前に行くタイミングあったよね? もう11月だよ? 寒い日に水族館って違わない?」


 仕方ないよね?


(なんで?)


 あなたと違って奇跡の合格だったんだから


 勉強する必要があったんだよ


(私だって余裕はなかったよ?)


「じゃあ帰ろうよ」


「なんでそんな意地悪言うのよ。このコート今日のために買ったって言ったよね?」


「じゃあ早く行こうよ」


「もういいよ。そのかわり、うん」


「なにその手?」


「繋ぐに決まってるじゃない。デートなんだから」


 デートだったんだね


(そうよ。きみと出かけるときはどこに行ってもデートよ)


 ()()じゃなくても?


 恋人じゃなくてもよ


「まあいいか。迷子になられても困るしね」


「私? いやいや。大人だよ? 迷子にならないよ?」


「じゃあ繋がない?」


「……繋ぐ」


(私の扱いおかしいよね?)


 おかしくないよね


「で、シャチ見るんだよね?」


「そうよ、イルカもね」


「あ、わかってくれた?」


「皮肉を言うはるくんはかわいくないよ」


「あれ? なっちゃんにしては鋭いね」


 あなたは子どもっぽいから時々年下かと思うよ


(きみが来るまでは頼りになるお姉さんだったんだよ?)


 小さい頃からそんなあなたは見たことないよね


(きみは年の割に落ち着いてたからね)


「はるくん、はるくん! 見て見て! ペンギンさんがお散歩してるよ!」


「あ〜、うん。わかったから少し落ち着こうね。見た目綺麗なお姉さんなのに行動は小学生と同じだから」


「いいのよ。楽しむときに年齢なんて関係ないよ。まあ節度はあるけど楽しいときはちゃんと表現しなきゃ。私ははるくんと一緒で楽しいよ」


「はぁ、……ありがとうね」


「こちらこそね」


(私はきみと一緒なら近所の公園でも楽しめるよ)


 おままごとはしないよ?


(好きだったくせにね)


「シャチはどこにいる—」


「はるくん?」


 驚いたよ


(……うん)


「行こう」


「えっ? はるくん? ちょっとそんな急がなくてもシャチはいなくならないよ」


 まさかこんなところに()がいるなんて


「はるくん? はるくん⁈ 大丈夫? 真っ青だよ? 何があったの?」


「やっぱり。なっちゃん久しぶり。一瞬秋穂がいるかと思っちゃったよ」


「……冬馬くん? なんであなたがこんなところに?」


「ああ、こっちの工場に配属されたんだよ。」


「最悪だな」


 本当あり得ないよね


「あっ?」


(彼がなぜ不機嫌になったのかがわからないね)


「屑は消えてくれない?」


「お前、春斗か? へぇ〜、妹取られたから次は姉ちゃんか! お前もなかなかやるじゃねぇか。今度はちゃんと()()()()のかよ? お前みたいなやつになっちゃんはもったいな———」


『パシッ!』


「いい加減にして。自分がどれだけ他人を傷つけてるかわからない?」


「ってぇな。んなもん知らねぇよ。ヤッたもん勝ちなんだよ」


(思わず手が出ちゃった。冷静さを欠いてたね)


「不愉快だから消えてくれよ冬馬。どうせ秋穂も捨ててきたんだろ? 屑に何言われても何も感じないよ」


「おっ、よくわかってるな春斗。あんな面倒くさい女もう飽きたわ」


『ちょっと冬馬〜、彼女ほっといて何してるのよ』


「おう、わりぃ」


「あなた、彼女って!」


「おっと。落ち着けよなっちゃん。秋穂とは終わってるんだから口出しするなよ。もう会うこともないだろうから好きなように言っといてくれよ」


(少しだけ彼女に同情したわ)


 彼女にとっては因果応報だよ

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