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20.道をつなぐは天体王者

ったく、なさけねぇところ見せちまったぜ

トシに言われるまで、自分の状況と立場を忘れていた


カナンを失うのが嫌だ

そして、トシを失うのがいやだ

ここにいて、護れないのがいやだ


そんな考えで、衆目を集めた状態で

二人にコールした

すぐにつながるのはカナン

トーヤと、耳をくすぐるような甘い声

その声をじかに聞きたい

抱きしめて安心させて、安心したい


だが、そのあと、俺たちは、トシに手ひどく降られた

「トシが連絡を受けてくれない・・・」

ショックに打ちひしがれたという声で、カナンの声が震える


なんてことだ・・・泣いているのか


「カナン・・・」

どうして俺は彼女のそばにいない・・・そして、トシのそばに

ここにきて、なぜすぐに迎えわなかった・・・


だから、トシは、怒っているのだろうか


「冷静になってらかけてください」

と、トシの声が聞こえる

自動開封、音声読み上げ機能をオンにしていたからこそ気づけた


トシは、いつも通りのトシだった


いつもそうだ

現実、情けない親な俺たちを許し、そばを離れない

それにいつも甘えているのは、俺のほうだ

母親の仕事をしていると、女を感じた

自分はそうじゃない

だけど、筋力もなく父親でしてやりたいことなんてできやしない

情けなくて逃げても、トシはやはり許してくれた


とんっと、大地をけるように空を蹴る

幾度か、加速しそのまま飛び続ける


上空限界があるのか試したことはない

次のエリアにつながっているのかも不明だ


グォォォォと、飛龍が咆哮しダゲられたのはわかる

だが、俺の敵ではない


ぶんと、剣を音をたてて抜く

前回のボスクエで手に入れた素材

稀石霊で作った現存する武器で耐久値MAXの武器だ


星を砕く、シュラメテオをぶつけても、耐久値は1割しか減らなかった

故に、ともに使うのにちょうどいい武器だ


空人は、空中戦が多い

投擲や魔法、飛ぶスピードを重視したアタックが基本の攻撃となるだろう


ちなみに、石精霊が素となった稀石霊だから、魔法との相性

魔伝率は高い

一番有名なものはファイヤーソードや、ファイヤーアローあたりだろう


加速したまま、剣をブン投げる

慣性の法則は適応され大剣が、瞬きする間もなく針の大きさに変わり

飛龍に吸い込まれていく


空気を震わし着弾点

飛龍が破裂し耳をつんざく咆哮をあげ、消えていく


同じように叫ぶ

言葉にならない言葉を、魂の慟哭を

涙を流しながら空を駆け上がっていく


子供のように泣きわめき

八つ当たりのように飛龍を殺し続ける


上空へ上がれば上がるほど、敵は強くなる

生理的欲求を覚えても、この世界になれきった俺にとっては

些末なことだった

ただひたすら、アクションを起こしデータを読み解く

天体王者にふさわしい、世界を遍くてらす太陽のように索敵を行い

敵対するものを無慈悲に殺すだけだ


そんなことをしていたら、少し

気が晴れた


馴染みきった行動で、アイテムが一杯になれば倉庫に送り

倉庫が満タンになれば、誰かが空白を作り

使用した回復薬などが補充される


「空を穢すものよ、去れ!!」

体を振わすような怒号が、目の前の巨大な竜から発せられる

今までの飛龍とは各が違う


「我らは天体王者、我がが空に境界はなし!」


自分の背丈以上の牙をもつ竜に向かう



・・・・がすり抜けた



「去れ!!」

ただ竜はそれを繰り返す

条件が足りないか・・・と、さらに空を見上げる

虹色に光る雲

・・・あれは、何かを隠している

そりが宝か?と思ったが、巨竜がボスモンスターではないのは

攻撃してこない、攻撃判定がないことから明らかだ

コートを翻し、止まる


立ち止まったからだろう

「去れ」と、最後呟くようにして、巨竜は消えた

虹色に煌めく雲は変わらない


何か、ひっかかる・・・だが、まだ判断材料は足りない


口の中に、石を放り込む

がりと、音をたてて、砕けると

眼の前に広がるのは、天空王者のギルド室だ


「王、お戻りで」

「戻った、が、まだ終わってない」

散れと、手で記す


部屋の中に一人、トシから見計らったように連絡がきた


「トシ!!」と、呼ぶ声が、揺らぐ

さっき、発散して弱さなど、もう残っていないはずなのに

安堵のせいか、カナンも泣きそうな声でトシを呼ぶ


「普通にかけてください、うるさいのを嫌いなのを知ってするんですし

 周りの方に影響が大きい人がそういう態度なのは、好みません」

いつも通りの落ち着いたトシの口調

叱るという口調が近く、次に説教じみたというと

彼女は、あきれたような顔をするだろうか


「まずは、落ち着いてください

 そして、まわりを落ち着かせてください

 あなた方ならそれができるのでしょうから

 安全策を講じるか、宝物を見つけるかどうかはそちらの好きにしてください

 そのあと、ゆっくりお話ししましょう」

「・・・わかった」

そういうしかない

ヒントになりそうなものは見つけてきた


それを議会にかければ何かの意見はでるだろう


「よし、いくか」

道具箱から、きつめの酒を出し煽る

喉が焼けたあと、腹の中でかっと火がともる


ふーーーっと深く息を吐き出す

その息が、燃えるように熱い


熱くていい、それでこそ、俺だ


ばんっと、扉を開く

ギルドのやつらは全員注目している

右手を上げ、前方を示し歩き出す


「集まってくれ!」

大声とギルドの大声の併用をして注目を集めた


「トーヤ」

「トーヤ様」と、俺の名前を呼び叫び、駆け寄ってくる

空人のやつら



飛行をし全員を見下ろす

空人だっつーのに、こいつらは地面に降りて這いずるのが好きなやつ

そういう意味でおれたちは、所詮は「人」なんだろう


だが睨むような熱視線を向けてくるやつらだ

まぁ、今回に限ってはちょうどいい

ギルドの奴らも集まり、俺の左右の腰あたりの位置に並ぶ


眼の前にきらきら光るゲートがある・・・

そうだ、虹色の光は、ゲートだ・・・

あれは、もしかすると、大陸へ通じる門ではないのか・・・


あれは、竜ではない、巨大な亀だ・・・

3つの頭を持つ亀の頭の一つだ


「ここはゲームの世界だ

 だが、今の俺たちにとってゲーム以外のものにすり替えられた

 その純粋たる遊びを穢すバカに鉄槌を下せ」

死よりも怒りに脳を染めたやつらが、おぉぉぉと、呻るような高ぶりで応じる


「全土大陸の道を開き、三国共同戦を開始する

 天空のはるか高みに、神話の幻獣がいた

 その後方に、虹色に輝く雲


 そうだ、そこにあるゲート」

と指差せば、視線は、ゲートへと集まった

転移門は、人の視線に煽られるように

ぐにゃりとその門の内を歪める

それは、受け入れる、出てくる時にあるエフェクト


視線だけで、それを門は感じ取ったようだ


「その門を開放する!」


「そして、現実への帰還を約束しよう

 だが、覚えておいてほしい

 この世界は、ゲームだが、今は、俺たちの現実となった

 命を無駄にするな

 力を無駄にするな

 知識を無駄にするな


 そして、またこの地で会おう!!」


世界を揺るがすほどの万雷の拍手と怒号

空人の意志は固まった


それで・・・いいんだよな、トシ

母親様トーヤバージョンでしたー

明日は、お休みになるかな・・・?


誤字訂正、指摘ありがとうございます 2013/10/08


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