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14.ギルド水煌宮 姫君の嘆き

大陸全体で2番目に設立されたギルド水煌宮は

細やかなレリーフが刻まれた石柱群を境に水が踊っていた


宮の中は色とりどりに発光するサンゴ

生きている証というように気泡が舞いシャンパングラスの中のような細やかな泡が

こぼれ落ち、立ち上る


その泡に戯れるように大小さまざまな魚が乱舞する

そんな美しいギルドだった


海人たちの始まりの地は水中であり

海人たちは、重力をほとんど感じることなく浮遊して移動している


水中にいる時は、人魚のように長い尾をもつが

人と変わらず、二本に変化させることも可能である


スキル【水中呼吸】と【水泳】がすぐさま取得され

【水中移動速度上昇】などが取れる事など

海人の初期スキル獲得は多い


それ以外は、他種族と変わらず

武器や魔法のスキルを取得し、モンスターと戦いレベルを上げ

アイテムで自分を彩る


ギルドも規模を大きくしたり、工場や店を拡張したり

彩ることも可能で

水煌宮の美しさはそういったアイテムによって保たれていた


そして、もっとも彩られたもの、カナン姫が

運営のお知らせを読み終え

ふぅ、と溜息を洩らし目を伏せた


トシは、やめてしまうかもしれない

元よりゲームが好きな子でなく

無駄と思うなら、そぎ落とすように拒絶してしまう

潔癖に近い感性を持つ子だから


それは、私たちが、トシに与えてきた

一人の時間の多さのせいだと今ではわかっている


大人になりゆく彼女は、私たちの親としての愚行を許し

逆に私たちの生活を一部以外変えないようにと乞うた


私は私の時間を作りました

生活スタイルも決まりました


だから、それを邪魔しないでください


親様たちが、ゲームにはまるように、私も、その生活スタイルにはまりました


と、冷静に言われたものだ


少しばかり突き放された気分になったのは

小さなトシが、私たち以外へと目を向けてしまった嫉妬と

いまさら気づいた孤独な時間への罪悪感だろう


そして、トシは独り立ちした

そんな風にいつしか大人になった


ゲームにハマったのは学生の頃

自分の性癖に気付いたのもその頃

だけど、どちらに対しても恋心すらいだけず

トシの潔癖は、私のそれを引き継いでいるような気がした


あの頃のゲームは、集団でRPGをすることのできないものしかなく

いつでも、主人公になれた

だけど、いつしか、護られることに快感と安堵をいだくようになった


そして、来るMMOの時代

その時、トーヤを見つけた


私は、まだまわりと馴染むことができず

女性プレイヤーへのナンパに対してもだましている故の罪悪感から

積極的にはなれなかった

ソロプレイが多く、固定パーティは組むものの

ギルドに参加する勇気すらなかった


だけど、トーヤは違った

強く、雄々しいトーヤ

魅せられ憧れた

それは、まわりの人も同じだったようで

彼の名は瞬く間に、広がった

あのときのトーヤの二つ名は『殲滅の覇者』だったか『紅蓮鬼』のどちらかだったはず


一騎当千がはやっていた時代のオンゲーのどれかで

殲滅スピード、殲滅数や、コンボ数、オーバキルポイントなどを競ったものなら『殲滅の覇者』

グロゲーと呼ばれたものなら、『紅蓮鬼』


ちなみに、私はグロゲーの時、吹っ切れた

ゲームなのだから、私は私でいいのだと

画面の向こうの人と愛を囁き、深い関係になってもいい

そして、その情報を発信し、楽しんで行きたいと思えた


トーヤが、血まみれの『紅蓮鬼』なら

私は、一滴の血も浴びる事なく殲滅する『涙の聖女』となった


涙のとつくのは、私のロープレのせい

「また、死しか残らない」というセリフで、泣くモーションをいれるのだ

あれは、実に美しく感動的だった


そこから、私の姫としての人生が始まった


可愛い系、綺麗系のゲームを主体に

ゲーム実況をブログで配信し

現在の姫日誌の前衛で、学生のバイトで稼げないお金を稼いだ


課金はそのお金でしたし、不足分は、貢いでもらったり

一部、リアルマネーでのトレードをして

運営にばれ忠告とアカウント停止の憂き目にあうけどそれは止めどきと重なり

引退宣言をした


その内、ゲームの画質クオリティ

PCスペックが向上

ゲーム内容より、キャラゲー、コミュゲーと言われる

カスタマイズができるゲームが流行った


交流主体のため、恋愛、結婚、離婚、子育てのシステム搭載で

疑似人生を送ることのできるゲーム


そこで、トーヤと始めて会話をした


絵を描くこと、こまかな作業が得意だった私は

あっという間に名をはせた

それに、現実ともつながっているゲームだった故に

リアルマネーを合法的に稼ぐことができた


ブログでは、カスタマイズノウハウ

特に、人気だったのが、ゲーム内のソフトでの作成講座と

無料ソフトで作ってみようなどの講座を開設


その内、専門ソフトを使用してかなり精緻なドット絵を作り上げ

アニメのキャラやオリジナルキャラセット

家や街の雰囲気なども積極的に販売していたので

海外勢からも人気の高い職人として私は存在していた


それで、将来の道も確定したけど



トーヤは、今も変わらないけど

自分らしいスタイルを他人に任せる

俺のイメージで、何か作ってくれと言われ考えた


トーヤがあの時、私のことを知っていたのかはわからない

ただ、託されたことだけに喜び

それは、周りを哀しませた


私のあこがれがトーヤに向いていると、周りが理解したから

アイドルに恋人がいた、結婚したなどの失望感

そして、裏切られた気持ち


だが、私は、トーヤと話すのは始めてで悩んだ

それを赤裸々に

今読めばさすがに、恥ずかしいぐらい舞い上がっていたから

だからこそ、応援して貰えた

片思いなら恋はというのは許されるものなのだろうか


それが結実したのは、また違うゲームだった

トーヤは、私を覚えた

またその名前か、というわりにトーヤの名前もそう違いはない

トキヤとか、そんな名前だった

始めて、フレンド登録し、パーティを組む

前衛後衛で相性もよかった


どんどんと加速し、元からいる私の仲間がトーヤを王として祭り上げるには

時間がかからなかった


そして、何度目かのアップデート

その時に婚姻システムがあり、ペアになった

それなりの会話もした


お互いの性別が逆とは、あの時は気付かなかった


むしろ、今でも、私の性別は女で

彼は男のまま

それがとても自然で、しっくりきた


現実の私たちは、大人になる

そして、社会人になった

私は、キャラクターのデザインや

眠ゲーの前衛のシステムワールドのデザインを提供した


息の長い、デザインゲームは未だに続けていて

3Dでのモデリングはお手の物だから高所得者でもある


そんな時、トーヤから引退宣言を聞いた

トーヤは私の二つ下

あと一年で、ゲームをすることができなくなるだろうと

交わしていた個人アドレスで

はじめて愚痴をこぼされた


悩んだ、男だという現実をトーヤがばらさないか

そして失望しないか

それを幾日も天秤に掛けて、ついに誘った


一緒に暮らしたいと、家にきませんかと・・・


そして、トーヤからの返事が無くなった

ゲームは共にしていた

なのに、そのことについてお互い触れられなかった


一年後トーヤからメールが来た

「失望しないなら、いいぜ?」

と、たった一行のメール


そして、会ったのは一時間で借りられる部屋

お互いを知り、理解した


「あんたはあんた、俺は俺、それでいいよな」

私は頷いた

その時即お持ち帰りされたのは若い証拠


その時の子が、トシだ

内輪の結婚式、ネットでも報告

だけど、私たちの距離はとてもよかった


ただ、トシができて、少しだけ環境が変わったことに

トーヤがいらいらしていた

私たちは、その時、トシから逃げた


そんな弱い親を持つ子だ

いくら強くとも、トシは甘えん坊だし

外では結構おとなしい子だ


少しばかり、はっきり意見を言いすぎる所はあるけど

それ以外は良好みたい


だから、ゲームはしません、ときっぱり言われ

トシとは共に遊べなかった

だけど、トシは、もったいないことが嫌いだから、貰ってくれた


そう、これは私の我が儘

トーヤは、馬鹿だの、どうするだの、怒ってたけど

実は、そういうこと

二人がいがみ合うのがトシは嫌い


その原因をすぐ除いてくれた


ごめんね、トシ

だけど、どうか逃げないで

ゲームを続けて


この世界で私たちは生きている


その世界をどうか知ってほしい


今書き終わりました、10/1は無理かもしれません

ご了承を~

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