6.5:領主
本日は二話投稿第6.5話と第7話でこちらが先の投稿になります
(12:00)と(12:10)です
時はウェネルヒア達が無事に領都へたどり着いた時まで遡る
落ち着きのない様子で執務をこなす男の元へついに一報が届いた
「シャルデリア様とウェネルヒア様お戻りになられました」
「真か!無事なんだな今何処に?」
「無事では有るのですがあまり状況はよろしく無くて…」
ダンッ!と机を叩きつけ
「何をわけの判らんことを、だいたい安全のために城を離れたはずなのに襲われたのだぞ、さっさと二人の元へ連れて行かんか!」
何やら言いづらそうなにしている従者を怒鳴りつける男は領主であるペネイデスその人であった
「はっ」
もう何を言っても無駄と諦めた従者は領主を玄関へと誘導した
婦人は先に行ってしまったのか残っているウェネルヒアがロレンシアや城の者と見知らぬ小娘を巡って何やら言い争っているではないか
「早くなさい!ぐずぐずしてないでナイラを湯に浸けて上げなさいって言ってるのよ、ああもういいわ私が連れて行って洗ってあげる」
「ウェネ、ウェネ我が娘よ!」
父の存在に気づき一層元気よく声を張り上げる我が子
「ただいまお父様!聞いてこの者たちがナイラを連れて行きたいのに言うことを聞かないの」
その様子ならば怪我の心配はする必要はないだろう
「おかえりウェネ、どうしたんだ落ち着いて話してごらん」
「お父様この子は命の恩人の娘なのよ、それなのにこの者たちはお城から追い出そうとするんですものわたし頭にきちゃって」
「そういう事だったのかい、それでその恩人は何処に?」
「それは…」
身代わりになって死んでしまったのか…これは報いねばなるまい
「身代わりになって女装したから入ってこれてないと思うの」
「ええとそれでは死んでは居ないのだな」
「死んでないと思うわ、ロバートは頭が良いし不思議な魔法も使えて、リチャードの方は凄い強いんだから」
「リチャード殿が父親でロバートがその息子になります、奥様は既に湯汲みへ向かわれております」
補足を伝えるのはロレンシアだ
「おおロレンシアそなたも息災であったか父君も喜ばれよう」
おおよその自体を把握したペネイデスは落ち着きを取り戻し
「余が許すそのナイラという娘を湯汲みに通してやれ、妻と娘の恩人だ粗相の無いようにな」
男の部下であったならば何故すぐに来ぬのだと文句の一つでも言うかもしれないがとかく女には女の作法が有る、それを許すというのが男の器量というもの、とにかく無事なのだ確かめられれば後はどうということもない
「ロレンシアはしばし残って詳しく教えてくれ良いか?」
「はっ」
ただし護衛であるロレンシアは性別よりも仕事が優先される
「なるほどな、ではその女装した父と子は見つけ次第それなりの服を用意して褒美を取らせなくてはならぬな、それにしてもその商人それほどまでに強いのか?お主の目から見て我とその商人どっちが上だ正直に申せ」
強いという言葉に興味を持った領主が話し辛い話題を振ってきた
「あなたお止めになってください、大体命の恩人相手に何を張り合っているのですか」
湯汲みを終えて顔を見せた妻を抱きしめるペネイデアであったが情けない事を言う
「しかしだなぁ、ウェネルヒアにお父様より強いなどと言われた日には立ち直れないぞ」
「そういった事は日頃の態度で見せるしかないのですよ」
「ぐうう」
ペネイデアは辺境伯、武人としての誇りがあるのだが戦っている姿を見せる理由にもいかない戦場に娘を連れてなどいけないからだ
「お父様はお父様、そんな事で幻滅したりなんて私しないわ」
続いてさっぱりとした我が娘がやって来る、後ろには所在なさ気な小さな子供
「お~お~そなたが命の恩人の娘だな名は何というのだ」
名前は既に知っているが自己紹介する機会を与えているのだ
「商人リチャードの娘ナイラと申します」
自分の娘より三つか四つは年下だろうに立派な自己紹介
「ナイラも凄いけどロバートも凄いわ、自分だけの魔法が使えるのよ」
「ほう」
これはその兄と父親にも興味が湧いてくる
「父親のリチャードはなんて言えば良いのかしら商人だけど口数少なくてその代わり強いのよ、こ~んなでっかい魔物も一太刀だったもの」
本人にはそんなつもりはないようだが火に油を注ぐ娘
「それは是非、手合わせをしたいものだ」
「お止めなさい!」
ブレーキを掛ける妻にしょげる夫
「お父様、それでねちょっとお願いがあるの…」
娘がそれとなくリチャード親子にお店を持たせたいと言い妻もこれに賛同、褒美の規模がどんどんと大きくなっていくのだった
ブクマや評価をしていただけると作者が大変喜びます!続きを書く活力になりますので
『ページの下にある☆マークでの評価』
よろしくお願いします!




