【商談】ラクーン商会:ブラック企業
変なたぬき、ポンちゃんは言った。
<「 不思議な力を持ってるもきゅね! 」
<「 実はポンちゃん、ビジネスマンもきゅよ! 」
俺のベッドでごんぶとな尻尾を両手で抱いて、昼過ぎから仕事もせずにダラダラしている領主にそう言った。
「たぬきが……?」
<「 ラクーン商会を知っているもきゅ? 」
「知らない」
<「 数多の世界を股にかける多次元籍企業なのもきゅ! 」
<「あ、こちらをどうぞもきゅ 」
たぬきはベッドの上ででんぐり返しして、何もない場所からポンッと厚紙の名刺を出した。
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【ラクーン商会 ラングリシエル支部長 ポンデ・リン】
我々ラクーン商会は、皆様のマナを、資源やサービスと交換するクリーンな企業です。
霊話 013-ponponpon-poko
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「ポンちゃん、君……社畜だったんだ……」
<「 ポンちゃん支部長もきゅ! 部下はいないもきゅ! 」
ブラック企業……?
<「 ラングシエル支部にきたポンちゃん、愕然としたもきゅ! 言葉、通じなかったもきゅ! 」
そこはたぬきと言葉が通じる世界の方がレアだと思いたい。
「つまりどういうこと? 何かを俺に売ってくれるの?」
<「 いえ、それはこの世界の市民にもきゅ! 」
<「 ポンちゃん、見てたもきゅ! あなたの楽しくて、不思議な力! 」
<「 ご主人様のお力で、ポンちゃんたちにも施設を作ってほしいもきゅよ! 」
ご飯を食べてぽんぽこになったお腹を撫でながら、僕は引き続きベッドでだらけた。
「ああ、つまり、ここで商売がしたいってこと? たぬきもしっかりしてるんだね」
<「 要するに賃貸契約もきゅ! 」
<「 ラクーン商会の施設を建設していただければ、家賃と、異世界の魅惑的なサービス、商品をご提供いたしますもきゅ! 」
「質問。それ、従業員もたぬき……?」
<「 多次元企業ですので、たぬきの方も、たぬき外の方もいらっしゃいますもきゅ! 」
たぬきが多そうな言葉の響きだった。
<「 もし契約していただけるのなら、ポンちゃんが貯蓄から自腹を切って! 」
<「 施設【自販機&ガシャポン・ポン】の建設費を提供させていただきますもきゅ! 」
「自販機とっ、ガシャポン・ポンッ!?」
懐かしい響きに僕はベッドから飛び起きた。
<「 自販機は、お金を押してボタンを押すと、飲み物やおでん、ラーメン、ハンバーガーが出てくるサービスもきゅ 」
ファンタジー世界に自販機とガシャポンポン、だって……? そんなの――
「面白そう! その話、乗った!」
最高だよ、ポンちゃん!
<「 ありがとうございますもきゅ、ご主人様! それでは、仮契約をば! 」
ポンちゃんがベッドの上で後ろ宙返りをした。
少し失敗してベッドから落ちそうになったところは、見なかったことにしてあげた。
<「 仮契約成立もきゅ! それでは、建築画面をご確認下さい! 」
<「 内政画面に新しいコマンドが増えているはずもきゅ! 」
そうたぬきが言うので、化かされたつもりで確認してみた。
コマンドに【建設】が増えていた。
「こ、これは……っ!?」
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【内政施設】
【自販機&ガシャポン・ポン】
Lv1【費用 金0】
【効果:金100(月)】
【コンビニ コンビニ たぬきマート】
Lv1【費用 金1000】
【効果:金200(月)
:兵糧400(月)】
【居酒屋宿ぽんぽこ】
Lv1【費用 金1500 石材100】
【効果:金100(月) 出生率・移住率アップ・小】
【リゾートスパ・ラクーン】
Lv1【費用 金2500】
【効果:金200(月)
負傷兵回復・大】
【ダンジョン鉱山・ムジナ】
Lv1【費用 金100 石材500】
【効果:鉄材:100(月)
税収25%アップ 治安低下・小】
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世界観無視にもほどがある……。
たぬきさんたちはこの世界をいったいどうしたいのか……。
いや、だけど、これは……。
「コンビニ!? 居酒屋!? 温泉にダンジョンッ!? なにこれサイコーだよ、ポンちゃん!」
便利だし面白そう! 僕、ガチャコーナー大好き! 大きいモールとか寄ったら必ずチェックする派!
<「 ありがとうございますもきゅ! 」
<「 命を助けていただいたご恩、ポンちゃん一生懸命返しますから、ぜひごひいきに! 」
「あははっ、これ、アッキーがザラキアにきたらびっくりするぞっ! こちらこそポンちゃん、まずはお試しからよろしくね!」
小さなポンちゃんの手に握手をして、僕はこの世界に自販機とガシャポン・ポンという特大の異物をもたらすべく、たぬきを頭に乗せてテラスに出た!




