１５話　脱走計画

　「【学習】……？」

　唐突に私の脳内に声が響きスキルの獲得を通達する。一瞬何が起きたか解らなかったけれどこれについても彼女の知識にもある。どうやらこの世界のシステムアナウンスの様なものらしい。

　やっぱり異世界なのだと改めて実感しながら私は【学習】の効果を【情報操作】で確認する。

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　学習(ラーニング)

　パッシブ効果：学習スキル所有者のあらゆる事象に対しての必要熟練度や経験値が半減する。また、他者の能力を観察、分析しその能力を得やすくする。

　アクティブ効果：スキル発動時に思考速度を２倍にする。一時間の間更に必要熟練度や経験値が半減する。クールタイム３０分。

　同期中のスキル

　・なし

　取得条件

　ＩＮＴ２００以上。一定以上の高度な学業を修める、また探究心が一定値を超える。

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　こ、これは彼女が言っていた『成長系チート』のスキルではないかっ！？

　最大で必要な経験値を７５％もカットしてくれる計算になる。つまりレベルアップ速度が単純に４倍になることと同義と言う訳でとても有り難いスキルだ。

　スキル取得の要因も納得だ。医療術はそもそも日本ではかなり高度な分野だったからそれにも納得する。

　でも、一点で目を引いたことは『同期中のスキル』という点だ。これはつまりこのスキルが何かしらのスキルと繋がるということになる。

このスキルは能力の分析による保有者の能力獲得を促すもの。だったらより情報が読み取れたら？効果が更に上がるんじゃないかな？

　そして都合のいいことに情報に特化した【情報操作】を私は持っている。ならば―――

　《スキル【情報操作】と【学習(ラーニング)】の同期を開始します……完了しました》

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　学習(ラーニング)

　パッシブ効果：学習スキル所有者のあらゆる事象に対しての必要熟練度や経験値が半減する。また、他者の能力を観察、分析しその能力を得やすくする。他者のスキルの詳細を閲覧した際５％の確率でそのスキルを会得する。

　アクティブ効果：スキル発動時に思考速度を４倍にする。一時間の間更に必要熟練度や経験値が半減する。クールタイム１５分。

　同期中のスキル

　・情報操作

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　完璧だ。やっぱり彼女の知識は凄いな。あっと言う間に途轍もない性能を持つスキルになるなんて……。

　……おっと。はしゃいでいる場合じゃなかった。早く此処から逃げ出す算段を立てないと。確かこの後に模擬戦をするとか言っていたけど、この際にできる限りのクラスメイトからスキルなどを学んでおきたい。気配を消すスキルを持つ人も居るからそのスキルだけでも取得しておきたい。

　ゾワッ……！

　ん……？何か背筋に悪寒がしたような気が……？う〜ん……何が覚えがあるこの嫌な気配は確か男子達のこう、何と言うか全身を舐め回すみたいな生理的嫌悪を催す下卑た視線で……。

　ゾワッ……ゾワッ……！！

　《スキル色欲(ラスト)の【魅了支配】の影響を受けています。純潔(チャスタイティ)により抵抗(レジスト)が成功しました》

　な、し、色欲っ……！？早速クラスメイトに手を出すような奴が居るなんて……！！

　このスキルの保有者は確か―――

　「チッ……！」

　私がその保有者の方を見れば私に、いや、自身のスキルが通じなかったことに対して舌打ちをしていた。名前は五月雨(さみだれ)星哉(せいや)。

　クラス屈指の顔の広さ（女性限定）を持つ所謂陽キャグループの一員で不確かだけれども経験人数は３桁を超えると言われるいつ背中を刺されるか分からない程の女の敵だ。

　考えれば当たり前だった。クラスで最も性の乱れた男に【色欲】スキルが無い訳が無い。

　それにさっきからクラスメイトの女子達が明らかに黒い噂の絶えない彼に恋する乙女の様な視線を向けている。ここは私しかどうにか出来ないな。

　直接誰にも触れずに【魅了】の効果を解きたいけれど何が手はないか……？

　ひとまず【学習(ラーニング)】を発動して思考時間を４倍に引き伸ばして考える。

　もう一度この純潔(チャスタイティ)の効果を前より丁寧に見てみよう。時間はまだある。

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　純潔(チャスタイティ)

　機能

　超健康体：あらゆる病に負けない健全な肉体を維持する。また、あらゆる精神汚染に負けない健全な精神を維持する。

　状態異常無効：あらゆる状態異常を無効化する。

　浄化：あらゆる状態異常や精神汚染、病を消し去る。介するものにより効果範囲や効果が変動する。媒介：振動、肉体接触

　また、不死性魔物(アンデット)に使用した場合、使用者の熟練度によって昇天する。

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　見つけた。これを使えば……！

　「『正気(もと)に戻れ』」

　今回は、目立たない『振動』を使う。振動とは音や光にもその性質を持つ。だから今回は適当な空気振動(音)を発してからその振動に【浄化】の効果を乗せた。

　幸い【支配】されかけていた女子は全て私の近くに固まっていたから小さな音でも全員の【支配】を解除できた。

　支配されていた女子達はふと我に返って五月雨をまるで虫を見るような目で見つめる。流石の女の敵でもこの目には堪えられなかったのか居心地の悪いように目を逸らした。

　今回はどうにかなったけど次も同じ事をしないか心配だ。

　『色欲ってさー、凄く便利そうでもデメリットはあるんだよー。一度最低まで嫌われた相手の支配は無理だと思うよ？例えば人生をぶっ壊した人に普通惚れたりするかな？』

　記憶に残る声。そうだった。それを信じればいい。それにたった１度しか失敗してないのに舌打ちをしていたのだから確かに『嫌われたら二度と効かない』のかも知れない。

　でも、その後効かないと分かっていたのに何でまた２回も支配を試みたんだろうか？

　男というものはよくわからないなぁ……。

　まあ、早く脱出して気ままな異世界生活を楽しむとするかな。幸いにも私の成長率は高い。さっさとクラスメイトのスキルを学んでこんなところからおさらばだ。