14話 召喚者たち
私の名前は水瀬聖奈。学校からの帰宅中、病床に伏せてる幼い頃からの友人への見舞いに行くために歩いていた私はいつの間にか知らない建物に立っていた。
ついさっきまで歩道を歩いていた筈の足元は真っ赤なカーペットを踏んでいて空気の味が日本のソレではない事に少し経って気が付いた。
誘拐?いや、私の家は決して裕福とは言えないから可能性としては少ない。だとすれば人身売買かな。私は生まれてこの方一度も風邪を引いたり病に掛かったりしたことがない。至って健康な臓器ならあり得るかもしれない。
そうでもなかったら医療免許を持ってる私に患者を取られた他の医者の仕業だろうか。これが一番現実的かもしれない。
「本当になんだろうな、ここは」
男の声?さっきまで物音もしなかったけど今回の犯人だろうか?それにしては若すぎるような気がするけど……。でも、何処かで聞いたことのあるような……。
声のした方向に目をやると同じ学生服を来た同学年の……確か、橘佳祐くんがいた。よく周りを見ると私と同じ高校の1年生が全員居るみたい。
それを認識した途端に沢山の音が耳に入ってくる。またやってしまった。私の悪い癖だ。集中してしまうとそれ以外の音や光は一切入ってこなくなる。手術をしているときには問題ないけど、この状況では迂闊だった。
そして、この状況を見て予想した事態は全て外れたことになった。集団誘拐、それも同じ高校の同学年を狙ったもの。犯人は個人情報を大方把握しているものと見ても過言じゃない。
「選ばれし勇者たちよ!貴殿らは魔王を討ち滅ぼすために召喚されたのだ!」
突然大きな声が響き渡る。あまりの大きさに反射的に声の主の方を見ると物語に登場するような玉座に座る書いたような王様がいた。でも、その目の奥は品定めでもするかのような酷く冷たい目をしていた。
「勇者だって……!?」
「何意味わからねぇ事言ってんだ!さっさと帰せよ!」
クラスメイトや他クラスの人達が騒ぎ出すけど今は仕方がない。でも、気になる単語が幾つかあった。勇者。魔王。召喚。そして、あの目。
思い出すのは病床に伏せている友人の持つ小説の話。よく彼女が楽しそうに勧めてくる本の中に異世界転移というジャンルの本があって、物語の内容は、異世界に召喚された主人公が魔王を討伐する。というものが王道だと聞いていた。
中には無能追放からのチート覚醒、クズ国王から逃げたり、逆に破産させたりというものもあったけど、私は召喚されたことは確からしい。
『でね、こういった話には「ステータス」って唱えたら自分の情報が見えるんだよ』
「ステータス」
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水瀬聖奈
Lv1
筋力 50 防御 25 俊敏 60
知力 1500 魔力 1000
ユニークスキル
純潔
スキル
医療術Lv3、情報操作
称号
異世界人、召喚者、正義の闇医者、純潔の王
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本当に見えるなんてね。でも、このステータスの知力と魔力は飛び抜けてる気がする。この状況がもし『国王達がクズ』という状況なら知られたら不味い。
彼女は他に何て言ってたっけ?
『ステータスが見えたら他の詳細も見える筈だよ』
そうだった。ならひとまずスキルを見ないと……!
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純潔
あらゆる病や精神汚染を無効化するスキル。また、他人の【催淫】状態異常を無効化する。
医療術Lv3
医療の心得を持つ者の技術レベルを表すスキル。可能な治療術:外科、投薬、診断
情報操作
自他の情報を操作するスキル。自身の個人情報の偽装や、他者の個人情報の閲覧、また他人からの情報閲覧の遮断、妨害を行える。
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全部私の特徴をそのまま文章にしたかの様なスキルだった。私の体得している外科手術に薬物知識、そして診断力も当たっている。情報操作についても医者は情報が何より大切。
まるで私の歩んできた人生をそのまま反映されているみたい。今までの健康体もこの純潔の効果なら納得する。
「これより勇者様方のステータスを計測するゆえ一人ずつこの水晶に触れていただきます」
これもテンプレ通り。そして、真っ先にステータスを表示した橘くんのステータスを見て私は魔力と知力のステータスを偽装することに決めた。あと、情報操作と純潔の王も隠していたほうが良いかも。
「次は私が」
ステータスを表示させる。うん、問題なく偽装できてる。王様の反応は……。
「む、ただの物知りか。ハズレだな」
よし、早くここから逃げよう。
その後も皆がスキルを表示させていって分かったことがあった。それも最悪の。
7人に大罪スキルがあったのだ。これも彼女の話では、
『大罪系スキルを持ってる人は近づかないほうが良いよ。性格も能力の性能も壊れてるから』
ということらしい。
私もそのスキルを覗き見して情報を得たので、ざっと説明すると次のようになる。
傲慢、性能:万能
暴食、性能:成長
怠惰、性能:弱化
憤怒、性能:狂化
嫉妬、性能:封印
色欲、性能:支配
強欲、性能:強奪
そして、大罪系スキル保有者の性格は必ずスキルの名と同じになるそうだ。
確かに橘くんは普段から人を見下す様な傲慢な人だった。でも、成績優秀、運動神経抜群といったことから誰にも咎められなかった。
多分今までの全てが今の私達のステータスを作り上げてる。つまり、強い人格がないとあっという間にこの世界に飲み込まれる。この現実に絶望して時間を無駄にするより手札を揃えてこの場所から逃げないと私は詰む。
幸いにも私は何時でも健康体のままだから逃げるときにも万全の体制で逃亡できる。今は機を窺わないと。
《熟練度が一定に達しました。スキル【学習】を獲得しました》
結城 蓮です。
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