第七回戦 ユフィVSシャリオ 第八回戦 ゼツヤVSゼノン
ユフィはスタジアムに上がった。
反対側ではシャリオがいつもの雰囲気で立っていた。
「まさか一回目がユフィだとはな」
「意外ですか?」
「いや、そういうことを考えている訳じゃなくてな。ただ、今日は本気でいくぞ」
その『本気』というのは、いったいどれ程のことを言うのだろうか。ユフィにはわからなかった。
だが、何時もであれば、魔法を発動する前にユフィは切り込める。それほどの速度は自分にあると自覚している。
さらに言うなら、シャリオがどんな動きをしたとしても、ユフィの動体視力があれば、ユフィが高速移動しているときでも認識は可能だ。
ユフィにとって魔法使いというのは、先手必勝をすればまず負けることはない。そんな認識だった。
「いつも通りにいくと思っているか?」
「今はね」
「まあそれでもいいさ。お、カウントが始まったな」
確かにカウントが始まった。
ただなんと言うか、今日のシャリオはいつになく静かだ。
カウントゼロ。
ユフィはいきなりトップスピードで動く。
ハイエストレベルに至っているプレイヤーたちは、本気を出したり、切り札を投入すると初速が極端に早くなるが、ユフィの場合はなにもしなくても、最初からとてつもない早さで動くことができる。
反応できるプレイヤーはかなり少なく、できたとしても対応できるものは多くはない。
「確かに早いけどな……」
シャリオは呟き、ユフィの初撃をかわした。
だが、そこで終わるユフィではない。すぐに体を切り返した。
「先手必勝。確かに、魔法使いが相手なら、ユフィに速度があれば実際にそうなるだろう」
シャリオはそのままユフィの攻撃をかわし続ける。
「だが、先手必勝って言うのは、俺にも言えるんだよ。降れ『カタストロフ・レイン』」
シャリオは呟いたあと、指をならした。
レイン。雨。
ユフィは上を見た。
……何もなかった。
「え……」
はったりとおもってシャリオを見た。
シャリオはそこにはいたのだろうが、ユフィに目に写ったのは、大量の魔方陣だった。
「簡単にかかりすぎだぞ」
「しまった」
「ふう、オールスペル。解放」
次の瞬間。魔法が大量に発動された。
だが、ユフィも負けてはいられない。魔法であるなら、アクションスキルを使えば切断は可能。それに、隙を見てうまく範囲外にいくことができれば、まだ手はある。
そう、いくことができればだ。
シャリオは目算を外すことはない。どのような距離であっても、正確に読み取ることができる。
魔法使いにとってはよいポテンシャルだ。どこになにがいるのかを正確に判断できると言う状況は、魔法使いにとっては、その本職である魔法を発動させやすいのだ。
さらに、シャリオの戦術は、魔法をその場で発動するのではなく、発動状態のままで止めておいて、たくさんの魔方陣を展開したあとに一斉発動することだ。
そうすることで、多少準備に時間はかかるが、その分相手にとって対応しにくいものになる。
しかも、その一斉放火中に、更なる準備をすることも無論可能であり、第一陣を成功させることができれば、後はMPが継続する限り、連発が可能。
シャリオの現在のMPの総量は『23000』であり、超級であってもお構いなしな状態だ。
「対応しきれない」
ユフィが辛そうだが、そもそも魔法は、アクションスキルを当てる、または魔法を当てること以外の迎撃手段がない。これが、強い魔法使いが得られる特権でもある。
ハイエストレベルに至っているものは迎撃もそう難しいものではないが、ユフィはその経験の差もあって、集中力の継続時間がやや短いのだ。
しかも、アクションスキルは全て、『事前に決めておいた動き』であるため、魔法。特に連射型のものの場合は、一回一回アクションスキルを瞬時に選ばなくてはならない。
連射型は本来威力は低いはずだが、シャリオはINT極振りである。無視できない。しかも、ユフィはその素早さをいかすために全体的に防御力が低いのだ。
この勝負。重要なキーワードがあるとするなら、確かに『先手必勝』であった。
それを得ることができたシャリオの勝ちである。
NWO最強ギルド。エクストリームサブマスターは、甘くはない。
「ふう、俺の出番か」
ゼツヤはスタジアムに上がった。反対側からはゼノンが歩いてくる。
「ゼノンと一回戦目で戦うことになるとは思わなかった」
「それは俺も同じだ」
「そうだな。ところで、ひとつ質問があるんだが……」
「なんだ?」
「ゼノンって、登場回数少ないよな」
かなり長い沈黙が訪れたあと、ゼノンが口を開く。
「いやー、まあそうだよな。みんなが知っていることなんて、俺がNWOではあまりいない双剣使いだってことと、デュエルカップ四位の実績があることくらいだし、第一作者が悪いんだよ。バスターはゼツヤのクラスメイトにして思いっきり登場回数増えたのに俺なんてたまに地の文で出てくるときがあるかないかなのに、不公平だろ。しかも、デュエルカップがただでさえ四位までしか特別な評価をもらえないって言うのに、ルナードは帰ってくるし、ミズハは参戦してくるし、しかもお前の弟子ってみんなよくわからない性格なのに心底強いし、お前自身はゲーム化に困るようなことばっかりやっているし、はっきりいって俺、人気投票しても全然上にいけない気がするんだよね。しかも、俺NWOでもリアルでも容姿は良いのに、最近容姿のいい女性ばっかり増えるし、作者が絵が壊滅的に下手だから挿し絵もくそもないから俺の評価って正直絶壁寸前だと思うんだよね。一応『エンドレスレイン』何て言う二つ名を持っているけど、『何でこいつこんな二つ名もってんだ?』って思っているやつたくさんいると思うし、しかも伏線も俺一番少ないだろ。まだたぶんバスターの方が多いぜ?もう俺最近序列まで気になりはじめて……」
「ストップストップ。レルクスの罵倒はいいから、あとメタ発言多すぎ。あと、もうカウントゼロになっているぞ」
ゼノンが確認した。
「あ、本当だ」
「まあ、仕切り直してやるぞ」
「ああ」
ゼツヤは黒い剣を構え、ゼノンは双剣を構える。
「せめてエンドレスレインの説明くらいはするか」
「その話はもういいから」
ゼノンが突っ込んでくる。
そして、洒落にならないレベルで斬撃が続けてきた。
「地の文だけだとシンプルだよなぁ」
「お前って結構器小さいんだな」
ごちゃごちゃ言い合っているけど戦闘はしっかり続行しています。
「五月蝿いわ。俺だって結構活躍したいんだよ。しかも、アンフィニッシュドレギオンの内部構造とかも一杯言いたいんだよ。そりゃさ。初期設定ではエクストリームは存在していなくて、でもお前の友好的なギルドを出そうとした結果、俺のところのネーム案からエクストリームのメンバーのネーム案に急遽変更されてネーム案の在庫が枯渇したし、そもそもそれぞれの支部の隊長を今さら出してもキャラ増えるだけで出てこない面子が多くなるだけなのはわかるけどさ。ひどいと思わないか?」
「さっきから会話文が多い!あといくら文字稼ぎだからって裏設定をのせるな!お前がしゃべるのは勝手だが、これ全国放送だぞ!」
「今さら黒歴史がひとつ増えたところで俺は知らん!」
「ポジティブすぎるわ!」
さっきから訳のわからんテンションだが、ゼツヤは思っていた。
ゼノン。負けフラグ建てすぎである。
まあ、ゼノンは弱くはない。しっかり苦労した。でもゼツヤが最終的にはネクスト・レベルを使って勝利する。
ひとつだけ言わせてくれ。疲れた。




