その後
「いやー。負けた負けた」
会議室にキリュウが戻ってきた。
すでに3人は戻っていたようだ。キリュウも自分の場所に行く。
「キリュウ。あれほど言っていたのに、一太刀もいれていないではないですか」
「いや、レイシャ。俺が戦ったやつはいろいろ規格外だって……」
NWO最強のプレイヤーなのだ。当然である。
「そこは別に構わない。十分許容範囲だ」
負けることが前提で話を進めていたダマスカスもダマスカスである。
「ところで、今回の侵攻の戦果はどうなっている。レイシャ」
「はっ!まず、全て青い銀色の鎧のもの達からの物ですが、武器の入手数が2000を突破しています」
「その集団を任せていたラシェスタを二階級昇進させておけ。ところで、あの武器は何本だ?」
「累計しますと、11本です」
「我々の戦力からすると少々少ない気がするが……まあいいだろう」
そもそもの本数がそう多くはない。
「あの世界は今回相手にした集団のみを認識するならかなりの戦力だ。特に、そのトップに至っては、キリュウですら相手ができないほどのものだった。なお、武装したアルベシオンを投入しても大きくペースが変わらなかったところを見ると、そもそもの戦力に差がある。と言うより、アルベシオンの強さにすらなれている可能性がある。今回の件を考慮して、アルベシオンの存在としての強化が必要だ。いや、進化と言ってもいい。その方法を発見することを優先する」
アリが何匹いても、それを脅威と感じるものはいない。だが、それが軍隊蟻なら、かなりの脅威になる。それだけのことだ。
「あと、キリュウ。分かっているな」
「分かってるって、次までに強くなっておくさ」
また次も負けちまいそうな気がしないわけじゃねえがな。と思うキリュウだが、言うわけがない。
「また次も負けたりしてのぅ」
「じじいは黙ってろ」
まあ、そんなやり取りはあった。
「次こそ占領するぞ!」
ダマスカスの喝に、全員が頷いた。
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ゼツヤはホームに戻っていた。
「いろいろあったな……」
「そうですな」
「あ、ゴディアス。今日は助かった」
「それが私の存在意義です。さらに言うなら、最近私の影が薄い気がするのは気のせいでしょうか」
「縁の下の力持ち。見たいなポジションだから薄くて問題ない」
「承知しました」
それでいいのか?と自分で思ってしまうゼツヤだった。
まあ、今日の侵攻で一番驚いたことは、
『あのNPCたちが去った数分後に、本来のイベントのモンスターが大量にポップしたこと』なのだがな。いや、ホントやばい雰囲気だった。
まあ、それらはすべて、シャリオとオブシディアン海賊団とブリュゲールにすべて任せておいたがな。
倒した比率は。
シャリオ 82%
オブシディアン海賊団 11%
ブリュゲール 7%
だったがな。
まあそれはいい。しかし、今回はいろんなことがありすぎた。
この世界の隣にある、また別の世界があるのだ。どんな場所なのだろうか。
「分からない。だが……」
今回は少なくとも、運営と、あのNPCの軍勢の郷愁が重なったことで対応できたのだ。秘密裏に動かれたら、太刀打ちできない可能性も出てくる。
「かなりめんどいことになっているな」
早くデメリットが消えたらいいのにな。と思うゼツヤだった。
ちなみに、今回最も悲惨な結果になったのはブリュゲールだった。
武器は散々無くなるわ、オラシオンシリーズは奪われるわ、しかもほとんど貢献できなかった。ちょっとは反省してくれるといいのだがな。
あと、バスターとゼノンには、ゼツヤがオラシオンシリーズを手掛けていることを教えておいた。
優遇する気はないが、2人とも口は堅いことは知っているから漏れることはないと思うし、そもそも推測されている可能性がかなり高かったし、それに今回のようなことがあったので、それに対して『ゼツヤ=オラシオン従業員』と言うものは大きいのだ。
「レイフォスは言っていたな」
『もしもこの侵攻が、現実の誰かによって行われたのだとしたら、おそらく、運営よりも上の存在にやられたんだろうな』
意味は分からない。そもそも、いるのかどうか全く不明だ。
だが、レイフォスはバカではないので、いろいろ考えはあるのだろう。
とにかく、今日は寝る。
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「もうあれから一週間か」
沖野宮高校のHR前、竜一は席に座っていた。
あれから侵攻はなかった。まあ、何度もあってほしいとは思わなかったが。
「さて皆さん。今日から留学生がこのクラスに来ますよ」
今日子先生が言った。留学生。外国からか。
一体誰だろうな。
「さて、入ってきてください」
「はい」
ドアを開けて入ってきた。
金髪に青い目で、端正な顔立ちだ。そして、あの雰囲気は……。
「それでは、自己紹介をしてください」
「はい。イタリアから来ました。『デュリオ・クレメンティ』です。好きなゲームはネイバーワールド・オンラインで、プレイヤーネームは、『バスター』です」
バスターが留学してきた。ていうか、あの中身外国人だったのかよ!
しかもイタリア!?いや、別に悪いわけでも何でもないし、最近グローバル化とか進みすぎて言語以外どの国に行っても変わらないし(偏見)、その言語すら自動翻訳で意味をなさないけど……一体誰がこんな展開を予測出来たって言うんだ!?
1か月も前、ミラルドに貸したオラシオンシリーズを回収し損なった時以来の驚愕とパニックで全身がピークになって、逆に顔に全く出ていないという何とも器用なことになった竜一だが、話はちゃんと聞こえている。
「皆さん。仲良くしてくださいね。席は……竜一君の隣ですね」
「………………………………………………………………」
ものすごく長い沈黙が俺の中で訪れていた。
デュリオが歩いて来る。
「宜しく。竜一君」
初めまして。とも、久しぶり。とも言われなかった。はぁ……。ばれてる。
「ああ、宜しく。デュリオ君」
歯車は、こうして大きくはめ込まれていく。
逃げられないことを、すでに悟った。
都合でちょっとしばらくの間投稿できなさそうです。すみません。




