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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
強者たちの交響曲
25/218

サーガの器用さとシャリオの奥の手

 ゼツヤは驚愕……とまではいかないが、やや驚いていた。


 まさか、NPCが来るとは。


「何かいっぱい来たな」

「うむ。ゼツヤ様。どうするのですか?」


 ゴディアスはNPCだが、まさか自分と同じような存在(のように見える)が来るとは思っていなかったのだろう。


 あと、ゼツヤ達は知らないことだが、何故かロスト・エンドの観察ではゴディアスはカウントされていなかった。ゴディアスも、ゼツヤほどではないが、アルベシオン・ジャイアントをかなり倒している。無論。理由は不明だが。


「基本は変わらない。まあ、アイツの眼を見る限り、こちらと交渉する気はなさそうだ」

「事実だな。味方と言うことはまずありえない。敵なら倒す。それだけだ」


 いつでもどこでもどんな時でも平常運転だな。サーガ。


 ……ちなみに、こんな思い出がある。

 実はエクストリームのメンバー+ゼツヤは全員が全員のリアルを知っている。

 まあそれはいいとして、何回かレジャーランドに行くのだが、お化け屋敷に入ることになったのだ。

 まあ、大学生の男が行くようなところではないので(セルファはリアルでは教師なのでなかなか時間とれなかったし、そもそも妻子持ちなので家族で行く)、残り(ゼツヤ。サーガ。ユフィ。クラリス)が行くことになったのだ。

 で、なんでかわからないが、ゼツヤとサーガ。ユフィとクラリスで入ることになったのだ。誰が悲しくて男子同士でお化け屋敷に行かなければならないのか。まあ今はそんなことはいい。

 クラリスはああ見えて意地悪な性格なので、まず2人が入った数秒後からユフィの絶叫がとどろいていた。まあ、怖がらせる従業員もそれなりに楽しかっただろう。おそらく。

 さて、ゼツヤのリアルのお化けに対する耐性だが、結構高い。だが、雰囲気に負けるときだってあるので、お化け屋敷と言う状況では、それなりにビビる。

 のだが、サーガは怖がるどころか、従業員をゴミを見るような軽蔑の目で見つめていた。

 空気が変わった感じがして確認に入ったレイフォスが言うには、

『完璧に自信を損失して、地面にのの字を書いていた』とのこと。


 要は、サーガはどんな時でも平常運転だ。でも、作り笑いは抜群にいいし、演劇部並みの雰囲気づくりだってできる。器用な奴だ。実際にDEXは高いのだが。


「で、基本的にどうするんだ?」

「さっきも言ったけど殲滅する方向で。前提として、もともとはこちらの武器が目的なんだから、あんまり和解しようとすると痛い目に会うだろうな」


 それは全員同意である。


 そのとき、NPCが手を上げ、まっすぐこちらに振りおろした。

 ……次の瞬間にはユフィが関節技を決めていた。


 ……え?


 そう、ユフィが関節技を決めていたのだ。


「いやー……速いな」

「しかもすでに麻痺毒打ち込んでるぞ」


 シャリオが呆然としている。

 補足するが、麻痺毒はゼツヤ特製である。


「あ、転移で帰って行った」

「あまりにも予想外の状況になったからな」

「殲滅においてはシャリオはトップクラスだけど、こういった暗殺的な作業はユフィの方が上だな」


 AGIさまさまである。


 ユフィが戻ってきた。


「何か反則な気がします」

「まあ、あのNPCに関しては、即時撤退の手段があるということは分かった。まあ、やることは変わらない。行くぞ」


 ちなみにだが、こういったイベント(今回は少々特殊だが)ではゼツヤは良くエクストリームに混ざるのだが、レイフォスが抜けている時はゼツヤがリーダーを務めている。


 未来を理解するセルファの方が適任だと最初は思っていたが、レイフォスにもレイフォスなりの考えがあるのだろうということにして納得している。


「おーい!大丈夫か!」


 レイフォスが戻ってきた。


「特に異常はないようだな……あれ?NPCは?」

「ユフィが間接決めて麻痺毒打ち込んだら転移で帰って行った」


 レイフォスがげんなりした。


「即時撤退の手段があるということか。まあそれはいい。だが、向こうの戦力は確実に急上昇している。気を抜くなよ。すくなくとも、出し惜しみして負けないようにな。特にシャリオ!」

「え?」

「お前なんか隠してるだろ」

「何を根拠に」

「お前が攻略サイトにかかれていることしかできないわけがないだろう」

「はあ、そこまで言われちゃ仕方ねえか」


 シャリオが前に出た。そして、腕を左右に広げる。


「『アクセル・スパーク』」


 右手の前に魔方陣が出現した。だが、魔法が発動されていない。


「『ソニック・バレット』」


 今度は左腕に魔方陣が出現。今度も魔法が発動しない。


「『レールガン』!」


 魔方陣を合わせると、新たな魔方陣が構成され、音速を超える速度で弾丸が飛んでいった。


 アルベシオン・ジャイアントの身に付けていた鎧を簡単に貫通する。次々と貫いていった。


「あの弾、私より遅いね」


 それは言ってはだめだ。本当に。


「『魔法合成』だ。本当は年末のデュエルカップまで取っておきたかったんだがな……」


 かなり早いお披露目になったな。


「シャリオ。一発撃ったくらいで止めていていいのか?僕が全部倒すよ?」

「サーガ、お前ちょっとその性格なおんねえのか?」


 まあ、どんなにいいものを見せられたとしても、シャリオの扱いはひどいままなのである。理不尽だが。


「まあいいか。『カタストロフ・ボルケーノ』『オーバー・ブラスト』。さあ、行くぜ『プラズマカノン』!」


 炎を超えた温度の物体が玉となって巨人を貫く。


「単発相手にしかできないのか?」

「だからちょっと黙ってろ!」


 いいコンビである。


「範囲系か。『プラズマレーザー』『バーストミッション』 『チェックメイトサンライズ』!」


 プラズマレーザーを拡散させた光が、次々と巨人を焼き払った。


「終了していないな」

「魔法名は俺が決めたわけじゃねえよ……ていうか、サーガは今が限界だろうに……」


 次の瞬間。サーガは弓を構えた。


「『フォース・リリース』」


 放たれた矢はすぐに分散するが、大きさがもとのままだ。全く勢いが衰えない。

 第一陣の時とは威力が別ものだった。


「お前もお前だな……」

「……」


 まあ、これはこれでいいコンビなのだ。多分。


「ま、この2人にばっかりやられるのも胡散臭いし、俺達も行くぞ!」

「異論はない」


 レイフォス・ユフィ・ゼツヤ・ゴディアスは飛び出した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

「思った以上のものだな。あの魔法使い」


 ダマスカスはモニターで見ていた。エクストリームと、ゼツヤとゴディアスが戦っている場面が写っている。


「どうしますかな?このままでは……」

「まあ待て」


 ダマスカスは操作して、別の画面にする。

 その画面には、ブリュゲールが何とも悲しい構図になっていた。

 武器を奪われ、団員は残すことなく慌て、近くにいた海賊団や黒いスーツ集団にかなりの迷惑になっていた。

 しかも、むきになって投入したオラシオンシリーズは追加3本(幹部は誰かやられたようだ)で、モチベーションは最悪である。


「この世界の人間と言うのは戦闘能力に偏りがありますな」

「どうやらそのようだな。装備の充実していることと、本人の戦闘技術は比例していない。あくまで制作における能力値が高いのだろうな」

「この侵攻が終了したのちに、調べさせましょう」

「先ほどの高性能の武器。あれがもし誰かが生成したものであるならば、早急にとらえる必要があるな。あの武器の性能。いや、それ以上のものが生成できても不思議はあるまい。その技術さえあれば、我々の世界『イデア』を、ロスト・エンドが統括可能であることは間違いないのだからな」

「おっしゃる通りですな」


 ダマスカスは考え、口をひらく。


「いや、まだ現在は、あの武器は遺跡等で見つかったと考える方がいいだろう。と言うより、あの性能の武器を生成する方法があるということ自体、そもそも異常なのだ」

「それもそうですがな」


 モニターを見る。

 アルベシオン・ジャイアントの個人の戦闘力は大幅に上昇しているはずだ。だが、何かしら決定打がないように思える。

 実質、あまり攻撃が届いていないのだ(ブリュゲールは別)。


 いや、そもそも、なぜこちらの侵攻に備えることが出来たのか。誰にも予想は不可能だったはずだ。


「分からないことが多いな。まあ確実なことを言うならば……退屈しないな。この状況は」


 侵攻自体は初めてではないが、異世界に対して行うのは初めてである。しかも、その初めてがなかなか骨のあるもの達ばかりなのだ。面白いに決まっている。


 ちらりと小さくなって表示されている画面を見る。


 そこでは、8人のラシェスタが飛び立っているところだった。


 書き溜めがないので、全部その時その時かいています。

 ……なかなかつらいですね。

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