海のアップデートと共に島も増えていた。
「……なんじゃあのでかい港は……」
ゼツヤは潜水艦のカメラから移る景色にドン引きした。
ミズハもきょとんとしている。
「すごいね。船が十個以上はあるよ」
「しかも大きいものばかりだな。マップからすると……かなり好条件の場所だ。確かに、位置的には発展してもおかしくはない」
「でも、それならデフォルメで最初からかなり多くの設備があるんじゃないの?」
「NWOはプレイヤーの創造性を高くするために、エリアの規模で運営が配置するシステムを制限しているからな。こういった場所にも、プレイヤーが運営するシステムは入って来るだろう」
「へぇ……」
「ただ、この場所、町はあるけど、ワープしてくるためには一度来る必要があるからな。移動手段を持つ奴がかかわらないと港ができないんだよな」
それに寄ってどうなるのかと言うと……。
「資金的にも人材的にも余裕がある大手ギルドが中心になるってこと?」
「価格設定は低くなるだろうから、イメージ的に悪いものにはならないだろうし、新しい島となれば、今までとは別のところから人材を引っ張って来る必要がある」
「ローテーションでシフトを組むから?」
「それもそうだが、VRMMOゆえに、リアルでほかの何かをしながらゲームをすることは不可能だからな。結果的に、このゲームでの行動に集中する必要がある。時間のある学生がこういうときは約得だ」
「そういうものかな……」
「高校卒業までとは言え、アイドル活動を続けてるミズハも、シフトには入れないだろ」
「それもそうだね」
結構人気だからな。ミズハ……。
「とりあえず上陸するか。最近海の中にばかりいるからな」
「暗くて魚があまり見えないから水族館って言う雰囲気でもないしね」
「それを言われるとは思わなんだ……」
ということで、上陸。
行ってみるとかなり発展していた。
「もう城下町クラスの規模になってるね」
「こういう場所は利権的な問題も多いからな……」
ゲームだからと言って馬鹿にはできません。
システムにうまく乗っかればいいのだが……。
「あ。すごい高額設定の店とかもあるね」
「だろ。他の店と同じくらいの性能のものなのに、金額だけが三倍だ。浪費癖があるやつでもあんなの買わんよ」
売るのは自由だが、買うかどうかは購入者側の自由だ。
「そう言えば、結構お手軽な価格で落ち着いているけど、これで大丈夫なの?」
「大手ギルドって言うのは独自の生産ルートを持ってるからし、元手が多いから初期投資も大きいんだ。量産品であっても大量生産は可能だし、そうなれば、価格は安定する。もともと、売れたらいいな。って言うレベルで販売してるし」
「え、完売することが目的じゃないの?」
それは生粋の商売ギルドしか考えてません。
「ここを利用するプレイヤーは限られているんだよ。船で来る必要があるし、そもそもここまで来ることが出来る船を作ることが出来るプレイヤーは限られてるし」
「……」
「さっきバカみたいな金額で何か販売してた奴がいたけど、多分、自分のコミュニティのプレイヤーの船が大破して、その損害分を稼ごうとしているんだろうな。『高くても買ってくれる商品』って言うのには条件があるけど」
「そうなの?」
当然のことなのだが。
「というか、ワープ機能を利用した場合、ストレージに入れたものしか一緒に転移出来ないからな。ストレージに収まり切らないものを船で何とかして持ってくるか。分解して運び込んできて、こっちで組み立てるとかしないと、はっきり言って売れないよ」
「あ。分解して持ってくるって言う手段もあるんだね」
「ただ、分解して持ってくるって言う手段が取れるアイテムは、人が多い方が一気に出せるからな。多分大手に負ける」
「……ゲームでも世知辛いんだね」
「そういうことだ」
かなり悲しい現実だけどな。
リアルマネーではない分。消費する方も消費しやすいのだが、買う場合は得な方がいいのである。
「結局、資金と人手が物を言うんだね」
「特別なアイテムがあれば話は別だけどな」
「え?」
「リアルじゃどうにもならないことでも、ゲームだからこそ解決できることもあるってことだ」
いずれにせよ。手に入れることが先決だけどな。
「オークションの方も考える必要があるな」
ゼツヤは品物を見ながら、ただし買うことは全くせずに、そのままふらふらしていた。




